第4話〈女神様のお悩み〉
今日は7月1日。季節は夏だ。
そう衣替えの季節だ。
俺は今日から夏服で学校へ行こうと思う。
ピンポーン。
間抜けなチャイムがなり、可愛い綺麗な声が聞こえてきた。
「優、朝ごはんを持ってきたよー!」
「あっ、優桜ありがとう!」
優桜が朝ごはんの容器を出しながら聞いた。
「あっそう優、今日から夏服で行こうと思うんだけどストッキング履いたほうがいい?それとも生足で行ったほうがいい?」
「そんなこと俺に聞くなよ」
「だって聞けんの優しかいないんだもん」
「俺だって1人の男だぞ」
「うん。でも聞けんのマジで優しかいないんだもん」
「じゃあ幼馴染として言うわ。履いたほうがいい」
俺がそういうと優桜が不思議そうに瞬きをした。
「えー、なんで?夏だし、みんな生足だよ?」
「みんなはみんなだろ、お前はお前だ。それに……お前がやったらただでさえ男子の視線多いのに更に増えるぞ。……あと、俺の目の毒だ」
最後の方は、ほとんど消え入りそうな声で、そっぽを向きながら吐き捨てた。
「俺だって1人の男だぞ」と言ったことに嘘はない。
いくら見慣れている幼馴染だとしても夏服の短いスカートからスラリと伸びる綺麗な彼女の生足を毎日学校で見せつけられると俺の理性が持たない。
すると優桜は、俺の言葉の意味を理解するかのように数秒フリーズしたあと、
「……そっ、か優がそこまで言うのなら……じゃ、じゃあ今日はストッキング履いてくね」
さっきまでの堂々とした態度が嘘のように、優桜は真っ赤になった顔を隠すように走って出て行った。
バタン。とドアが勢いよく閉まる。
俺はため息をつきながら
「……あいつ何照れてんだよ。こっちが恥ずかしくなるだろ」
俺は急いでご飯を食べると夏服を着て学校へ向かった。
教室に入るとやはりクラスの男子たちが夏服になった女子、特に優桜の姿に色めき立っていた。
新が「おい優!見ろよ。あの女神様の夏服姿!」
と興奮気味に袖を引っ張ってくる。
俺は新に適当な相槌を打ちながら、窓辺に座っている優桜を盗み見た。
男子たちに囲まれながら、彼女はいつも通り、どこか遠い存在の「女神様」の顔で微笑んでいる。
だけどその足元は俺が今朝言った通りの黒いストッキングに包まれていた。
学校では関わらない。それがルールだ。
なのに、彼女が俺が言った通りの姿でいるという事実だけで胸の辺りが妙にむず痒くなる。
その日の放課後……
帰ろうとしたところで担任が
「佐藤、悪いがこのプリントまとめてくれないか」
と言ってきた。
「はい。やっておきます」
まあ特別な用事があるわけでもないので受けておくことにした。
ある程度経ってから教室の前に人影があった。
「誰?」
「ごめんごめんw」
「なんだ優桜か」
「ごめん家のインターホン押して反応なかったからいないのかなと思って、戻ってきたらいたってわけ。」
「で、何してるの?」
「担任にプリントまとめてって言われてまとめてるとこ」
「じゃあ私も手伝う!」
「いいって」
断ったのに優桜は隣に座って作業を始めた。
「そういえばさ、夏休み前のロングホームルームで委員会決めするらしいよ」
「優は何に入るの?」
「俺は目立たないやつ」
「じゃあ私もそうしようかな」
「は?」
「言葉の意味そのままだって」
「じゃあ早く終わらせて一緒に帰ろうか」




