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1.17 ランチタイム

 ボクは原っぱの真ん中にテーブルとイスを五脚出して、テーブルにお皿を並べて屋台で買った料理を乗せました。

「たくさんありますのでみんなで食べましょう」

 炙った豚のスペアリブ、アヒルのロースト、いろんな肉のケバブ、野鳥の焼き鳥、肉団子の餡かけ、野菜スープ、煮豆、羊の串焼き、アスパラの肉巻き、肉野菜炒めのそば粉のガレット巻き、モツ煮込み、謎のお茶、その他目についたものをいくらでも。さっき走って買い出してきたのです。

「これはありがたいな」

 言いながらチューターはイスに着きました。ラーナは「私これ好き!」と言いながら串焼きを立ち食いしてます。

 チューターはスペアリブをつつきながら満足そうな顔をしました。

「前言撤回しよう。適材適所で分業した方が効率がいいな。お前みたいな奴がたまにはいてもいい」


 ボクが選んだ肉団子には臭み消しにタイムとかローズマリーとかが入っていました。みんなでシェアして食べながらどこそこの屋台のあれがうまかったなんて情報交換します。

「門から上五軒目のジャガイモのチーズ焼きは結構イケるよ」

「へー今度買ってみましょう」

「腹にたまるしな」

「あ、そういうのはいいです。ボクは小食なので」

 なんてワイワイやってたら肉を飲み込んだ栗毛が不思議そうな顔で聞いてきました。

「あのー、リンスさんさっき湖を走ってませんでした?」

「走りましたけど、それが何か?」

 水上歩行の魔法を使えますからね。エルフなら誰でもできます。

「何で普通に走れることが前提なんですか……」

 するとチューターが横から口を挟みました。

「冒険者なら水の上を走れる奴は何人もいるぞ。俺は無理だがこいつはできる」

 指さした先にいるのはラーナです。ラーナは口の中にものを入れたまま「さすがにあの距離は無理だけど、川の幅くらいなら余裕よ。……あ、この肉巻きおいしい」と言いました。

「そんなに珍しい芸じゃないですよね」

「ねー」

「そうなんだ」

 金髪が呆然と呟きました。

「ブラントにはそんな人いなかったけどなあ」

 口の中で何やらモゴモゴ言ってます。他のメンバーは気づいてないみたいですけど聞こえてますよ、エルフは耳がいいのです。


 チューターが魔法で付けた火をラーナがもらっています。食後の一服です。

 この世界の男たちはみんなタバコを吸っています。安そうな紙巻で吸い終わるとその辺にポイ捨てです。昭和の頃から何一つ進化してませんね……。二十一世紀から来た進歩的知識エルフとしては吐き気を催すほど野蛮な仕草です。

 ……いえ、逆ですよね。昭和の男たちが中世レベルの土民だったのでしょう。あれで昔は良かったとかほざくのですから笑っちゃいます。どう考えても令和の人間の方が人として上等じゃないですか。

 まあこの世界は中世そのままですから文句をつけても仕方ありません。こんなものでしょう。



「さーておなかもいっぱいになったことだし、アンタたちちょっとこっちに来なさい」

 食後のことです。ラーナはボクと栗毛だけを連れて移動しました。ガサガサ茂みをかき分けて、チョロチョロ流れる小さな沢のほとりまでやってきました。

「えー、では大切なことを教えます」

「はい!」

 栗毛が勢いよく返事しました。

「何を教えてくれるんですか?」

「女の立小便のやり方よ」

「……え?」

「私は男が見ててももうなんとも思わないけど、アンタたちにはまだハードル高そうだからこっち来た。しゃがんでるときに襲われると危ないからね。パンツ下ろして──あ、小便中に襲われたら濡れても気にしないでパンツ上げてね。足ひっかけて転んだらバカみたいだからね! 何なら最初からはかなくてもいいよ!」

 言いながらラーナは戦闘服とパンツをブーツの上まで下ろして、ちょろちょろ流れる小さな沢をガニ股でまたいで、両手を添えてカパッと御開帳しました。

「谷の割れ目で立小便♪」

 シャーと流れ出た液体がキラキラ光りながら綺麗なアーチを描きました。服やパンツに引っかかりそうもありません。なるほど言うだけのことはあって上手ですね。しかしこんなにも性的魅力を感じない女は生まれ変わってからというもの初めてです。


「ほらあんたたちもやってやって」

「え……」

 ラーナにうながされて栗毛が躊躇しています。

「次は野グソのやり方教えるから」

「えぇ……」

 ドン引きしています。

「ウンコしてる時って隙だらけだからできるだけ出かける前にやっといて欲しいんだけど、もし急にウンコしたくなったら必ず見張りを置いて──」

「あ、ボクは魔法で生理的欲求を代替できるので大丈夫です」

「? ちょっと言ってることの意味がわからない。難しい言葉使わないでよ、私バカなんだから」

「100年くらいトイレに行かなくても平気な魔法があるのです」

「マジ?」

「あ、私もそっち教えてください」

「お前医者と言ってましたね。エーリーンの加護は持ってますか?」

「あります!」

「じゃあできますよ」


 と言うわけでボクは栗毛に【老廃物除去】の魔法を伝授しました。ラーナは「あれ、もしかして見せ損? お金取ればよかった」なんてブツクサ言ってました。

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