298 ときめきの聖夜祭 24
エルネスト王太子と一緒に洞窟を出て、生徒たちのもとに戻ったところ、彼はすぐに女子生徒に取り囲まれた。
相変わらずすごい人気ねと感心していると、離れた場所にいたラカーシュが私に気付いて片手を上げる。
先ほどは眠っていた私にずっと付いていてくれたみたいだし、ラカーシュは本当に面倒見がいいわよねと感謝しながら私は手を振り返した。
それから、全部のエリアを回ることができたわと、大満足でセリアとユーリア様、ダリルとともに来た道を戻ったけれど、その途中で3人と別れる。
セリアとユーリア様はそれぞれの領地へ、ダリルはルイスのところへ行ってしまったからだ。
そのため、一人で北エリアに戻ると、なぜか同じように一人ぼっちの兄に出迎えられた。
兄は噴水の縁に腰かけていたのだけれど、噴き上がる水が月明かりを受けてきらきらと輝き、兄を幻想的に見せている。
「ルチアーナ、お帰り。楽しかったか?」
麗しい声に、どきりと心臓が跳ねた。
私は頬を赤らめながら頷くと、きょろきょろと周りを見回す。
「お兄様、大勢の生徒たちをどこにやったんですか?」
いつだって生徒たちに囲まれている兄なのに、周りには人っ子一人いなかったので、不思議に思ったのだ。
すると、兄はおかしそうに口元を緩める。
「私が皆をどこかにやれるはずもない。彼らが私に飽きて、どこかへ行ってしまっただけだ」
そんなはずはないと思ったため、私はじとりと兄を見つめた。
「そんなわけありません。では、質問を変えます。お兄様が言う『どこか』というのは、どこですか」
ルチアーナも成長したなという目で兄が見てきたので、やっぱりねと思う。
どうせ兄が画策して、生徒たちをどこかへ移動させたのだろう。
そう予想する私に向かって、兄はにこりと微笑んだ。
「どこかというよりも誰かだな。皆はルネ・ロードデンドロンに付いていったのだ」
ルネ・ロードデンドロンは王太子の側近である伯爵家令息で、私たちと同じ北チームに所属する生徒だ。
彼も好青年ではあるけれど、兄の魅力には敵わないだろうから、全員が兄を残してルネに付いていったというのは不自然だ。
「なぜ生徒たちはお兄様を置いてルネ様に付いていったのですか?」
疑問に思うまま尋ねると、兄はとぼけたような答えを口にした。
「彼の方が私より魅力的だからだろうな」
そんなわけないと思ったので、さらに質問する。
「なぜ生徒たちはそう思ったんですか?」
「うむ、ルチアーナ、近頃のお前は研究者になれるのではないかと思うほど、物事の詳細を突き詰めてくるな。素晴らしいことだ」
「お兄様!」
誤魔化されないわよと強い口調で呼びかけると、兄は諦めたように肩をすくめた。
「ルネ殿が魅力的に見えるよう、ジョシュア師団長が特殊魔術をかけたからだ。実のところ、師団長はちょっとばかりお前の誘惑に負けたのだ。だから、そのペナルティとして、『皆がルネ殿を魅力的に見えるよう魔術をかけてほしい』という私の願いを聞いてくれたというわけだ」
ジョシュア師団長が私のどんな誘惑に負けたというのかしら、と疑問に思ったけれど、思い当たることがなかったため、大したことではないはずよと結論付ける。
ここで兄の話に食いついたら、話を逸らされてしまうことは明らかだったため、その手には乗らないわと返事をしないでいると、兄は説明を続けた。
「しかし、ジョシュア師団長の魔術が効き過ぎて、生徒たちは一人残らずルネ殿に魅了されてしまった。おかげで、私は魔術戦の相手も、話し相手もいなくなり、一人寂しく他エリアとの境界線でお前を待っていたというわけだ」
兄は寂しさを強調したけれど、話の内容から判断するに、自ら希望して生徒たちを遠ざけたのは明らかだ。
「どうしてお兄様は一人になりたかったのですか?」
ずばり質問すると、兄はそんなことも分からないのかとばかりに、小さな子どもを相手にするような笑みを浮かべた。
「もちろん、一人でお前を出迎えたかったからだ」







