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ふりだし廻りの転生者  作者: チリ—ンウッド
第三章 王の首
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76マス目 命預ける罪滅ぼし


 馬車の準備には少し時間かかるらしい。

 まあ、馬車の改造やらダミー人形の用意があるので当然か。

 せっかくなので、俺も手伝おうとぶらぶら出歩いてみる。

 だが、どうやら冤罪でボコボコにされた事は皆知っているようで、

誰もかれもが罰の悪そうな顔で「休んでてください」と言ってくる。

 無理に手伝うのもどうかと思い、俺は城の中庭にある木に寄りかかり、自分のことに集中すことにした。


「……うーん、俺の馬車に敵が来たらどうするかねぇ。

銃を過信してもあれだし、何か考えとかないとまずいよなぁ」


 やっぱ俺は待ってて、テンダーとかにでも任せたほうが……。

 いやいやそれじゃ意味ないだろう。

 頭を使っていると、そういった雑念がどうしても頭をよぎる。


「あの!」


「ん?」


 声の方へ振り向くが、誰もいない。

 ……いや下だ。

 二人の男が俺に土下座しているのだ。


「え? ああ、さっきの」


 数時間前に地下でお世話になった二人。

 地面に頭をこすりつけ、土を強く握りしめている。


「本当に申し訳ありませんでした!!」


「謝って許してもらえるとは思っていない。

だが、せめて謝罪だけでもさせてほしい!」


 罪悪感に耐えきれず、地面に頭をぶつけて自分を責める二人。


「お、おいやめろって!」


 俺は見るに堪えずに二人を止める。

 細目の男性は頭を抱えて泣き始めてしまった。


「俺は無実のあんたにあれだけの事をしちまった。

いや、一歩間違えば俺が殺してたんだ!

おふくろの無念を晴らすとか言いながら、

やってることはおふくろを殺した奴と同じだった!

俺は、俺はどうやって償えばいいんだ……」


 すでに相当泣いてきたのだろう。

 二人とも目が赤い。

 そんな男たちに、俺は手を差し伸べた。

  

「なら、その命を貸してくれ」


 暴言以外の言葉が来ると想像していなかったのだろう。

 どちらもあっけにとられた顔で俺を見る。


「本当はもう許してるけどな。

でも償いが欲しいんだろ?

だったら、もう気にしてないって言うのは野暮ってもんだ。

だから、俺と一緒に来て戦ってくれ」


「……本当に、それだけでいいのか?」


 それだけ……ねぇ。

 俺は思わず苦笑する。


「何言ってんだ。

俺のレベルは知っての通り、虫けら同然のレベル1。

迎え撃つはルガニスさんでも勝てない可能性のある謎の勢力。

そんなとこについて来いって言ってんだ。

だが強制はしない。

逃げてもいいけど、……どうする?」


 答えのわかっている問いかけに、細目の男性は俺の手をがっしりと掴んで答える。

 堅物男もすぐに立ち上がり頭を下げた。


「絶対について行くぜ。

俺らが罪を償えるのはそこしかねぇ!」


「ああ、私も全力を尽くそう」


 二人は強く目を光らせる。

 この二人がいることで、絶対勝てるとは限らない。

 それでも一人より何倍も安心感がある。


「俺はホルトってんだ。

あんたに命を預ける。

そうでもしないと、死んだおふくろに顔向けできねぇからな」


「私はグランバムだ。

兵士として、人として、罪を償わせてもらう。

どうかよろしく頼む」


 細目でエルフの身軽そうなホルト。

 堅物そうで筋肉質な、いかにも力のある外見のグランバム。

 思いもよらずに、味方が増えた。

 何にもできない俺なんかに、命を懸けてくれる心強い味方が。

 

「こちらこそ、頼りにしてる」


 二人が差し出した手を、俺は固く握る。 

 その時、俺の背後から近づく人影に、

ホルトとグランバムは体を硬直させる。


「やっと見つけましたわ」


 突然の声に振り返ると、エリザベートがこちらに歩いてきていた。

 

「まったく、探しましたのよ」


「ああ、そりゃ悪かったな。

んで何の用だよ」


「それが、あなたの馬車の操縦を引き受ける人がいませんのよ。

まあ、あなたのレベルを考えれば当たりま……あら?」


 エリザベートの話を横で聞いていた、ホルトとグランバムが同時に手を挙げた。


「「俺(私)たちがやります!」」


 エリザベートは予想外の事態に目が点になる。

 だが二人の顔を見て、すぐに気が付いたようだ。


「なるほど、罪滅ぼしですわね。

無実の拷問を経て手下を増やすなんて、

転んでもただでは起きませんわね、あなたって男は。

オーッホッホッホッホッホッホ!」


 エリザベートの高笑いが響く中、俺は覚悟を決めていた。

 馬車に乗る人間を探していたという事は、準備が整ったと見ていい。

 とうとう始まるのだ。

 今までで一番危険で、最も過酷な戦いが。








 パロット王国、北門から700メートル地点。

 木の上から覗く不気味な視線が四つ。


「……情報によればもうすぐだ」


 赤髪の男は双眼鏡から目を放す。


「随分遅れたね。

あたし昼寝でもしてればよかった~」


 少女は耳をピコピコ動かし、あぐらをかいたまま体をゆする。


「寝ていて構いませんよ。

むしろあなたは足手まといになりかねません」


 背の低い老人は木に寄りかかりながら、シルクハットのずれを直す。


「ちょっとひど~い!

あたしそんなに弱くないでしょ!? ねぇ?」


「…………」


 話を振られた包帯の人物は、ポコポコと水音を立てるだけだ。

 そんな戯れを聞きながら、赤髪の男は再び双眼鏡を覗き込む。

  

「お? そろそろみたいだ」


 その言葉に全員が立ち上がる。


「さて、仕事といきますか」


 黒いスーツに身を包んだ四人組は、静かに散開した。


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