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第十六話

ひとつ時代の区切りとなる大戦が近づいてきている。


さて、大友が日向に注力しているということは、島津もまた日向に注力している

ということだ。つまり、今まで少しずつばれない様にコッソリと、肥後方面へ兵や

兵糧を送り込んでいたことが報われる場面が来たと云う事だ。むろん大々的に

動くのはまだ先のことであり、これまで通りばれぬよう動くのみなのだが。


島原南部から天草を通って肥後中部へ進む手筈の納富能登と西郷。そして長崎

から水軍を使って天草を廻り、肥後南部へ進駐する予定の鍋島豊前と深堀。なお、

長崎で至らぬことがないよう、下総守を駐在させることになっている。また、中

肥前には鍋島丹波を置き、睨みを効かせるようるす手筈となっている。それぞれ

最終調整を滞りなく行うよう指示を出した。


筑前西部には西肥前から松浦水軍を安房二男に率いさせ、博多を直接狙わせる。

物資や兵站の準備を抜かりなく執らせ、北肥前からは神代を継いだ俺の二男を大

将に、実質の行軍は重臣の神代弾正にと改めて指示しておこう。こちらでは高祖

の原田を味方に付けて、陸路で博多を目指すよう計画している。これもまだ大き

な動きを察知されると困るので、秘密裏に根回しを進めている。


蒲池さんたち筑後衆が大友に招集されたようだ。筑後衆への大友の信頼は厚い。

逆に俺たちはほぼ信用がない。まあ当然だ。そして何も問題はない。しかし俺た

ちはともかく、信頼されている筑後衆の中でも若い世代では昨今の大友の所業に

対して疑問を持っていること者がいることは既知であり、蒲池の婿殿もその一人

だ。そこで、俺は率直に大友の無謀と悪徳行為を蒲池さん親子へ伝えに出向いた。


現在、主に俺のせいで肥前を中心とする西九州はかなり情勢が異なってきている。

しかし、豊後を中心とした東九州はそれほど変化はないと思って良い。どう転ぶ

かは実際なってみないと分からないが、恐らくは正史通り大友の大敗で終わるの

ではないかと予想している。


大友の凋落は龍造寺にとって福音である。これは正史でも今回でも変わらない。

しかし、恩人の蒲池さんがその大友側に立つとなれば話は違ってくる。蒲池さん

は大友に忠誠を誓っており、今までもそしてこれからも大友に尽くして行くこと

と思うし、実際多少危険と思っても、むしろ思えばこそ一族引き連れて参戦する

気だ。婿殿は浮かない顔をしているが、一族はやる気に満ちている。


蒲池さんには率直な物言いと真摯な態度で説得を試みたが、やはり聞いてくれる

ことはなく、気が乗らない風だった婿殿を残し、一族たちを引き連れて日向へ旅

立ってしまった。遣る瀬無い思いに駆られるが、このような一本気な武人だから

こそ大友から信頼され、筑後諸将の心を掴み俺もまたその一人となったのだろう。

よって、結果はどうあれ蒲池さんたちが戻ってきたら暖かく迎え入れようと婿殿

と話し合い、俺は佐嘉に戻った。


後日、日向の耳川にて大友の軍勢と島津の軍勢は激突。

大友は大敗し撤退、蒲池さんたちは戻って来なかった。


その時、歴史が動いた。

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