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【連載版】「俺の告白を信じたお前の顔、最高だったよ」  作者: あいあメル
第三部 アレン

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第54話 最終話 チューリップの花

 拍手が終わった。


 レイシアはアレンの方をチラリと見た。

 アレンがこちらの方に体を向けた。


「レイシア。好きだ」


 心臓の鼓動がうるさいくらい脈打っている。


「僕の婚約者として、一曲踊ってくれませんか?」


 時間が止まった気がした。


 うまく息ができない。


 一歩、アレンがレイシアの方に近づく。


 ずっと夢見てた、愛する人と結ばれる瞬間。


 レイシアの胸が、幸せな何かで一杯になった。


 そんなレイシアに微笑みながら、アレンがレイシアの手をそっと取った。

 そしてレイシアに対して、恭しく頭を下げる。


 レイシアは握られた手を、握り返した。

 思わず息を呑む。

 しかし覚悟を決めて、レイシアは答える。


「私もあなたのことが好きです。婚約者として踊らせてください」


 涙が自然と溢れてくるのが分かった。

 アレンが真剣な表情をしている。決して嘘ではない。それが伝わってくる。


 アレンが口を開いた。

 ルシアンとの記憶が一瞬過ぎる。

 レイシアは思わず体が強張った。


「ありがとう。踊ろう」


 アレンの答えは、レイシアがずっと望んでいたものだった。


 色々なことがあった。ルシアンに騙された。

 告白をされたと思ったら、嘘だった。

 その顔を揶揄われ、そして笑い者にされた。


 ルシアンと決別したと思ったら、次はヴィオレッタ嬢に嵌められそうになった。


 そして、ヴィオレッタ嬢に陥れられようとした後は、ルシアンに創立祭をめちゃくちゃにされそうになった。


 それからアレンが告白してくれた。

 本当に嬉しかった。やっとアレンに向き合うことができた。


 しかしその後、宰相オズワルドに薬を盛られて別れることになった。

 彼を傷つけてしまった。

 けれど、彼は待っててくれた。


 思い返せば、色々なことを一緒に乗り越えてきた。


 どんな時も一緒にいてくれた。


 だから何でも乗り越えられた。


「アレン」

「なんだい?」

「本当にありがとうね」


 アレンが微笑んだのがわかった。


 ヴァイオリンの音が鳴り始めた。

 ダンスが始まった。


 レイシアはアレンと共に中央に行き、手を繋いでゆっくりと踊り始める。


 右に、左に音楽に合わせて体を揺らす。

 ゆっくりとターンする。


 マティルダ夫人に鍛えられたこともあるが、アレンがうまくリードしてくれている。

 すごく踊りやすい。


 そんなことを思っていると、アレンがにっこりと笑った。


「ねえ、覚えている? ルシアンにイタズラされた翌日のダンスパーティーのこと」

「ええ、もちろん」


 アレンが少し悲しそうな顔をした。


「あの時の僕は、ただの代わり、ルシアンの代役だった。あの日、僕はとても悲しかったんだ。君と踊れるのはとても嬉しかったけれど、でもそれはただの代わりだった。僕を見てくれていたわけじゃなかった」


 レイシアは息を呑んだ。


「ごめんなさい、そんな風に思っていたなんて……」


 アレンが首を軽く横にふる。


「ううん、大丈夫。あの時に決めたんだ。毅然とルシアンに対応する君を見て、僕も自分に素直になって嘘をつかないようにしようって。そして恋心についても段々とだけど自覚していった」


 レイシアが抱き寄せられる。

 顔が近い。


 踊りは続く。


「だから、今日は君のパートナーとしてちゃんと選ばれて踊れることがすごく嬉しい」


 レイシアは思わず俯いた。


「……あのね、最初はアレンのこと正直良い友達にしか思っていなかったの」


 くるり。ターンをするレイシア。


 体が離れる。


「けど、ルシアンへの想いが冷めて、だんだんと気がついたの。ずっと待っててくれて、そして答えを急かさないのはアレンだけだって。私のことを本当に思ってくれる、運命の人はあなただってことがやっと分かったの」


 再び抱き寄せられる。


 アレンの瞳が見える。涙で潤んでいる。


「……僕は本当に幸せだ」

「いえ、私の方が幸せよ」


 そして、お互いに笑い合った。


 ♦︎


 ダンスも終わった頃。


「クロエ、本当に色々とありがとうね」

「いえ、レイシア……様。全てはレイシア様のおかげですよ」

「これからも、レイシアと呼んで欲しいわ」

「では、私的な場ではそうします!」

「ありがとね」


 クロエと談笑するレイシアの元にアレンがやってきた。


「少し風に当たらない?」

「……はい、喜んで」


 黄色い声が起こるのを、レイシアは気にしないふりをするが、同じ側の手と足が出てしまっていた。


 それを見てアレンが苦笑する。


「大丈夫、すぐそこの小さなテラスに行くだけだよ。人目がなくなるわけじゃない」

「そっか、わかった」

「ほら、どうぞ」


 黙って腕を差し出される。

 別に今までだって、腕に触ったことくらいあったのに、妙に照れ臭かった。


 二人は腕をとって歩いていく。


 テラスは本当に近くだった。


「……これからが大変だね」


 アレンがポツリと空の星を見ながら呟く。


「本当に大丈夫?」


 アレンがレイシアに聞く。


「……ええ。覚悟はできているわ。それに……」

「それに?」


 レイシアは息を吸った。


「自分で選んだ道だもの。後悔はないわ」


 レイシアは弾けるように笑った。

 アレンも釣られて笑う。


「ねえ、アレン。手を握っても良いかしら?」


 アレンが驚きで目を丸くしたのがわかった。


「私も、自分に素直になることにしたの。怖いけど、自分の欲しいものをしっかりと追いかけようと思って」


 レイシアはおずおずと言った。

 手が少し震えている。

 答えが怖くて思わず俯く。


 その時。


 手がぎゅっと握られた。


 顔を上げる。


 アレンがにっこりと笑っていた。


「アレン、好きだわ」

「ああ、僕も好きだ」


 言葉は自然と出てきた。


 二人のことを、月と星が照らし出していた。


 刺繍として縫いつけられたチューリップの花がそっと輝いていた。


 完

たくさんの作品の中から、最後まで本作をお読みいただきありがとうございました。

少しでも心に残るものがあったり、何かを感じていただけたなら、

評価をいただけると、とても励みになります。


評価をくださった方、本当にありがとうございます!!


また新連載始めました! 是非これらも目を通していただけたら嬉しいです!

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