第85話 選考会(前編)
四章開始ですが、開始早々お祭り騒ぎ
アルバート魔法学園の全員が講堂に集められた。
ライオ兄さんが壊したところは既に修復済。流石は魔法学園。魔法でちょちょいのちょいで直したみたいだね。
ついでとは違うと思うけど、講堂の内装はパーティ仕様に変わっている。
なんか貴族の社交界みたくなってんぞ、おい。
テーブルや椅子が大量に並べられており、それぞれ、学園関係者席、三年生席、二年生席、一年生席に分かれている。
テーブルにはお菓子やジュースなんか置かれたりしている。
俺達は素直に一回生席に腰を下ろす。
「一体なにが始まるんだよ」
誰に言ったでもない言葉。
「はんっ。知らないのかい」
やたらめったら貴族のお坊ちゃんっぽい声が聞こえてきやがる。
「あ、噛ませ犬」
「カマーセル・イ・ヌゥーダだ」
なんかこいつとのやり取りも久しぶりな気がする。まぁこいつは肩を怪我してたし、最近大人しかったもんな。
「『学園合同ダンジョン攻略、夏の陣』はアルバート魔法学園。ステラシオン騎士学園。そしてアルブレヒト回復学園。この三校の代表達がパーティを組んで未開拓のダンジョンを攻略するんだよ。代表は各学園一〇名ずつ。今からは代表を決める選考会の始まりさ」
「説明ありがとう」
「ふっ。このカマーセル・イ・ヌゥーダ。説明だけにやって来た次第。ではアデュー」
そう言い残して噛ませ犬は去って行った。
なんだぁ? 本当に説明だけしてどっか行ったぞ。
まさか……この前、ダンジョンで助けてやった恩でも感じているのかな? ははっ、ねぇか。
「しっかしまぁ、たった一〇人を決めるだけでこんなパーティ仕様にする必要はあるのかね」
頬杖ついてお菓子を食べる。
「お祭りだよ、お祭り。前夜祭も後夜祭もあるし、代表選考会も盛り上がるからね」
「いや、フーラ。前夜祭や後夜祭が盛り上がるのはわかるけど、代表選考会が盛り上がるってなんだよ。ほとんどの生徒は選考に落ちるだろうに。それで盛り上がるのか?」
「代表者以外はダンジョン攻略を遠隔魔法で見守るんだ。応援の声とか出すと代表者に届くんだよね」
「なにそれ、めっちゃ面白そうじゃん」
「でしょ。だからみんな代表になりたくて盛り上がるんじゃなくて、そっちで盛り上がるんだよ」
ダンジョン配信をみんなで見るってノリかな。うわー、やばー、たのしそー。そりゃ盛り上がるわ。めっちゃ野次言っちゃろ。
「では、私達の学園は残り九人、ですね」
「だねぇ」
ヴィエルジュとウルティムの言葉にフーラが首を傾げる。
「代表は各学園一〇人ずつだよ?」
「おいおい、なに寝ぼけてんだよフーラ。王族のお前が代表に選ばれずしてどうする。ここは忖度大盛
り、特別扱い抜群でお前が選ばれるに決まっているだろ」
「フーラ様用の野次、ばっちり用意しておきますね」
「フーラは阿呆だから野次の種類は豊富になるね、きっと」
「やだああああああ!! 私だって野次りたいよおおおおおお!!」
駄々っ子みたいな声を出すフーラへ首を横に振る。
「リオンくんを道連れにしてやりゅううう!!」
「他の隠れ王族にしとけ」
そうやってフーラの標的を変えさせようとヴィエルジュを見ると、ニコっと微笑んだ。
「ご主人様用の野次なんて、んもぅ沢山ありますからね♡」
この子、最近怖いです、はい。
なもんだから、ウルティムにターゲットを変更。
「ウルティムいけ。お前、主人公で目立つの好きだろ」
「主人公で目立つのも好きだけど、たまには野次側に回りたいかも」
てへ☆ なんてウィンク一つ。
「んで、代表者ってのはどうやって選ぶんだ?」
「それはね──」
『今日は集まってくれて感謝する』
フーラが教えてくれようとした時、壇上に立つ女性。
アルバート魔法学園の学園長先生だ。
若々しい見た目で、バリバリ仕事ができそうだが、ただのメンヘラ病み女。ドロドロの恋愛劇を好むど変態だ。
一丁前にパリッとした雰囲気出しやがって。おかげで、わいわいしていた講堂に緊張が走りやがる。
『皆ももうわかっておると思うが、今から夏の陣の代表を決める。今年も例によって代表を決める方法は──』
まさかバトルロワイヤルとか言わないよな。そんなことするなら一目散に帰るわ。
『これだ!!』
バンっと出て来たのは、どーっかで見たことあるような杖。
『学術の杖に認められた者こそ代表となる』
うおおおおおお!
先程まで緊張の沈黙を保っていた講堂に歓声がわく。
なんか、めっちゃ盛り上がってるやん。一大イベントだし当然か。
「てか、あの杖──」
「お察しの通り、ダンジョン試験の時の杖だな」
「カンセル先生。いきなり出て来ないでくださいよ」
「なに? イケメン過ぎてどうにかなっちゃう? くぅぅ教え子をも狂わすイケメンっぷり。罪だねぇ、俺」
「グラサン外してください」
「だめだめ。グラサン外したら俺が俺じゃなくなるじゃん。それはただの人じゃん」
「グラサンが本体?」
「まぁね」
カチャカチャとチャラいサングラスをしているカンセル先生。
「リオンの察しの通り、あの杖はこの前のダンジョン試験の杖な。毎年、このイベント前に持って来るついでに、学生の試験にすれば良いんじゃね? ってことだったんだけど、今年はまぁ色々あったよねぇ」
「カンセル先生が一番被害を受けているんじゃ?」
「だぜぇ、まじでよぉ。調査、調査、調査だってのに、『カンセル学術の杖取って来て』だってよぉ。まじであのババァ許せねぇわ」
『カンセル。あとでちょっと来い』
壇上から聞こえてくる学園長先生の声。
「許されねぇのは俺ってか? 世の中きびちぃ」
テンション高いなぁ、この人。
「先生。学術の杖に認められるってのはどういうことですか?」
ヴィエルジュからの質問。
「杖が光れば代表。光らなければおしまい」
「それって魔力量に応じているんですか?」
フーラからの質問。
「んにゃ。魔力は関係なさそうだぞ。去年の代表なんて成績ビリの奴とか選ばれてたからな」
「カンセルが持ったらグラサンが光る?」
ウルティムからの質問。
「そうそう、これが七色に──ってなるかぼけっ」
あ、グラサン外した。
「外した先生はイケメンだろ?」
カンセル先生からの質問。
「「「「ふつう」」」」
「世の中きびちぃ!!」
そう嘆いてカンセル先生は自分をイケメンと呼んでくれる人を求めてどっか行った。
『では早速選別を行う。まずは一年生からヴィエルジュ!!』
いきなりヴィエルジュが呼ばれた。
「これ、いきなりヴィエルジュが選ばれたらどうなんの?」
「そう簡単に光らないでしょー。魔力量に応じて光るのならヴィエルジュが選ばれるだろうけど、そうじゃないって先生も言ってたしー」
「ねぇねぇ、阿呆のフーラ」
「誰が阿呆じゃい」
どっかの芸人みたい。
「あれって光ってない?」
ウルティムの疑問に俺とフーラが壇上を見る。
「「七色に光ってる」」
「だよねー」
うおおおおおお!!
会場はいきなり光を出したことにより大盛り上がり。
『ええっと……代表一人目はヴィエルジュに決定!!』
拍手喝采。指笛が鳴り響く中、ヴィエルジュが肩を落として戻って来る。
「ご主人様とフーラ様用の野次を既に一〇八個思いついていたのに」
「お前みたいな奴は代表になれ」
「応援してくれるってこと?」
「全力で応援してやるよ」
「でもやっぱりご主人様と一緒が良いから、今からヴィエルジュがご主人様に呪いをかけます」
コホンと咳払いをすると、手でハートマークを作る。
「一緒になりたい、一緒になりたい、萌え萌えキュン♡ はいっ、これでご主人様は専属メイドと一緒になる呪いにかかりましたぁ♡」
「かかっちゃいましたぁ♡」
「「えへへー♡」」
「なぁんか、この間の一件から違うベクトルで仲良くなったように見えるんだけど」
「マスターとヴィエルジュは付き合ってんの?」
「「付き合ってない」」
「双子の私より息ぴったりじゃん!!」
『次、フーラ!!』
「ほら、じゃない方。呼ばれてるよ」
「誰が、じゃない方だっ!! ちくしょう、見とけよー。絶対代表に選ばれずにヴィエルジュをめっちゃ応援してやるんだからっ」
ネガティブ願望なのかポジティブ願望なのかよくわからない言葉を残し、フーラが壇上に上がる。
「きゃー! フーラ様ぁ!」
「かわいー!!」
「フーラ様もいけええええええ!!」
会場はフーラコールに包まれる。
俺達と一緒だといじられキャラの芸人位置で忘れがちだけど、フーラはこの国のお姫様で、フレンドリーな王族だから人気だったね。手なんか振りやがって、すっかりアイドル気分でいやがるぞあいつ。戻って来たら芸人魂を復活させてやらんと調子のるぞ。
「ね、マスター、ヴィエルジュ。ぼくには杖が七色に光って見えるんだけど」
「「七色に光ってる」」
「だよねー」
うおおおおおお!!
会場はいきなり光を出したことにより大盛り上がり──って、これ、さっきも見たな・
『ええっと……代表二人目はフーラに決定!!』
拍手喝采。指笛が鳴り響く中、フーラが肩を落として帰って来る。
「リオンくんとラブラブしながらヴィエルジュへ野次を送りたかった」
「そんな思想の持主が応援側に回らなくて良かったと心底思います」
ヴィエルジュが言えた義理はないと思うがね。
「せっかくならリオンくんと出たかったのになぁ……」
「大丈夫だって、ちゃぁんと野次ってやるから」
「むぅ、またそうやって意地悪言う」
むくれながら俺の左腕に抱き着いてくる。
「なぁフーラ。公の場で抱き着いてくんなよ。他の奴の視線が鋭いんだよ」
「ちゃんと応援するって言うまで離れてあげなぁい」
「わかった。わかった。ちゃんと応援するから」
「よろしい」
機嫌良く頷くと約束通りに離れてくれる。
まぁそもそも、フーラを野次るなんて冗談だったんだけども。




