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有名侯爵騎士一族に転生したので実力を隠して親のスネかじって生きていこうとしたら魔法学園へ追放されちゃった  作者: すずと
三章

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第78話 真実

【ヴァンパイア視点】


 リオンの魔力を受けているヴァンパイアは、身体から煙を発し、もがきながらも過去の記憶がまるで影絵のように次々と連続して鮮明に脳裏に浮かび上がっていた。


「ジャック様。世界最悪の剣、ウルティムを発見致しました」


 ジャックというのが、このヴァンパイアの名前であった。


 このヴァンパイアをジャックと呼ぶのは漆黒の鎧を纏いし男。


「よくやった。バンベルガ。してセレス──魔王をも斬った世界最悪の剣、ウルティムの封印は解けそうか?」


「申し訳ございません。魔力の高い人間に、ジャック様の血を分けて頂いたクッキーで魔人化させて試みましたが、失敗してしまいました」


「そうか。やはり奴の封印は転生の魔力でないと解けない、か。厄介なことをしてくれたものだ、マリン・アルバート……」


「お言葉ですがジャック様。世界最悪の剣、ウルティムの封印を解いたとして、我々の思い通りに動いていただけるのでしょうか」


「案ずるな。必ずや私の眷属としてみせよう。そして世界に今一度剣の価値を見出させてやる」


「御意」


 セレスは一度、私の血を飲ませてある。私が魔人化させた。もう一度魔人化させ、私の眷属にすることは容易。


 セレスを従えれば、世界など容易く手に入る。


 この考えが甘かった。


 まさか、まさかまさか──こんな結末になるなんて……ヴァンパイアの私が、人間如きに──。


 くそ……あの時……あいつが私を呼び起こさなければ、こんなことには──!!


 ♢


「──私を呼び起こしたのはお前か?」


「は、はいっ」


「名は?」


「エウロパと申します」


「エウロパ……なぜ、私を呼び起こした?」


「私は──」


 エウロパがヴァンパイアを呼び起こした理由はなんともしょうもない動機であった。


 職場への不満。幼子への嫉妬。随分と自己中心的で、良い大人が子供のように癇癪を起している醜いもの。


 しかし、ジャックにとってはそんなことどうでも良かった。


 エウロパから発せられたアルバートという名前。その名前に興味を持ったジャックは、エウロパに血を分け与えた。


「王族の血は実に良い。理性のある兵ができるからな。他の者と比較してみろ。その効果は絶大なものだぞ」


「ありがたき幸せ。ジャック様の血を研究させてもらいます」


 そこから数年、まだ覚醒して間もないジャックはそのほとんどを眠って過ごしていた。といっても、ヴァンパイアにとってはほとんど一瞬に過ぎない時の流れであった。


 そうだ、そう。私はエウロパに血を分け与えた。そして奴はアルバートの王族に血を飲ませたのだろう。その結果、私の魅了は暴走を果たし、転生の魔力を持つ者を襲う。


 待て──だったらなぜ、セレスは平常だったのだ?


 アルバートで出会った銀髪の女はおそらく私の血を飲まされたのだろう。魅了の暴走でリオン・ヘイブンを襲った。


 あのピンクの髪の女も、ブロンドヘアの女も同じくリオン・ヘイブンを襲った。


 なのになぜ、セレスだけはリオン・ヘイブンを襲わない?


 思い出せ。なにか理由があるはずだ。


 思い出せ、思い出せ、思い出せ──。


 ──ッ!?


 思い出のヒモを手繰るように寄せていくと、ヴァンパイアは気が付いてしまった。


 気が付きたくもない真実に──。


「──そうか……私は……我は……俺は……ぁぁ!?」


 俺はクローンだ。ヴァンパイアの血を、記憶を、引き継いだクローン。


 本体とほとんど同じ。記憶も存在する。だけど本体と致命的に違うものがある。


 強さ。


 そう……俺は劣化コピー。失敗作。だからずっと眠らされていた。


 本体がセレスを魔人化させた。本体とクローンはあくまでも別物。だから、俺の魅了は通じない。


 ふっ……ふはは……所詮、俺は劣化コピー、か……。


 その真実を知った時、ヴァンパイアは浄化した。


 ♢【リオン視点】


「これで本当に終わったみたいだな」


 ヴァンパイアが煙と化して完全消滅し、ダンジョン最深部はシンッと静まりかえった。


「そうだね。マスターの魔力でヴァンパイアは完全に消滅したと思う」


「しかし、なんだ。俺の魔力が転生の魔力? って知っているんだったら、太陽みたいな魔力ってことも知ってたろうに、なんで俺に突っ込んで来たのやら」


 もう勝ち目がなくて、自暴自棄になっちまったのかな。


「マスターの魔力が転生の魔力だと知っているからこそ、その深層まで知らなかったからなのかもね」


「ごめん。なにを言っているのかわからない」


「あはは。変な言い方しちゃったね。ぼくの記憶が正しければ、転生の魔力は太陽みたいな魔力とは少し違うんだよ」


「ぇ……」


 彼女からの衝撃的発言に言葉を失う。


 今までずっと太陽みたいな魔力だと思っていたものが、実は全然違うものと言われ動揺を隠すことができない。


「転生の魔力は真実を暴く魔力」


「真実を……暴く……?」


「魔人化の真実は人間。だからマスターの魔力は、魔人化を治すんじゃない。本来の姿を暴いているんだよ」

「そして真実に辿り着いた人間は圧倒的な強さを得る。実際、ぼくも魔人化させられ、マリンの魔力で真実を暴いてもらったあと、魔王を倒せるくらいの強さを得たんだ」


 そうか、だから、か。だから、ヴィエルジュも、フーラも、ルべリア王女も、みんなチート級に強くなったんだ。


「心当たりはあるみたいだね」


「ああ……。それはわかった、けど、日中、お日様が出てる時に俺にバフがかかるのはなんでだ? その、マリンって子も同じだったのか?」


 思ったことを質問すると、彼女は丁寧に答えてくれた。


「マリンも同じだったよ。夜は影が支配する時間だよね。影が世界を支配する時、真実は隠れちゃう。だけど太陽が昇ると、世界は本来の姿を取り戻す。マスターは太陽が照らす世界の真実と同期しているから、日中に強いんだと思うよ」


「影は嘘。日は真実。だから、俺はお日様を浴びると羽のように軽くなるんだな」


「今までのマスターの考えはほとんど正解だったけど、その本質が少し違っていただけだね」


「そっか……そっか、そっか。俺の魔力は、真実を暴く魔力、なのか」


 長年の疑問。やっと俺は俺のことが知れた気がした。


「真実を暴く魔力を持つマスターだからこそ──」


 ウルティムがひざまついた。


「ぼくを殺してくれないかな」


「──は?」

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