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58 カイナデ2
カイナデという妖怪がおります。
これは節分の日、便壺から手を伸ばして人の尻をなでたといい、京都府に次のような話が伝わっています。
その昔。
節分の日になると、毎年カイナデに尻をなでられていた男の屋敷が火事となり、庭先にあった厠も土台からすべて焼け落ちました。
男は一時しのぎにと、以前の便壺の上に掘立の厠を作りました。
その晩。
男は大便をしようと厠でしゃがんだとき、「ひえっ!」と声をあげて飛びのきました。
カイナデの手が出てきて尻をなでられたのです。
「節分はずっと先じゃねえか」
尻にはクソがべっとりとついています。
「あー、クソまでつけやがって!」
便壺から声がしました。
「ヤケクソだー」
・ヤケクソ=やけくそ=焼け糞




