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妖怪百物語  作者: keikato
1259/1279

1259 老婆の怪

 老婆の怪は大田南畝の『半日閑話』に次のような話があります。

 江戸で大番衛士を務める武士の妻が部屋から外に目を向けると、垣根を乗り越えてくる老婆がいた。

 庭に立った老婆は「食い物が欲しい。それは抹香でなければ何でもいい」と言う。

 それから夫人の首を絞めようとした。

「誰か、抹香まっこうを持ってきておくれー」

 夫人の声に、下女が抹香を持ってきた。

「早く香を焚いて!」

 夫人の悲鳴に、下女はあわてて香を火にくべた。

 とたんに老婆が消えた。

「あの奥様、独りで何をされていたのですか」

「老婆が私の首を絞めていたでしょ」

 ところが下女は、「老婆などいなかった」と答えたという。

 この老婆。

 マッコウ勝負では勝てませんでした。


・マッコウ=抹香まっこう=真っまっこう

・大番衛士=将軍御所を警備

・抹香=粉末状の香

・大田南畝(おおたなんぽ・1749~1823・文人・狂歌師)

・『半日閑話』(はんにちかんわ・江戸時代後期の随筆)


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