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1259 老婆の怪
老婆の怪は大田南畝の『半日閑話』に次のような話があります。
江戸で大番衛士を務める武士の妻が部屋から外に目を向けると、垣根を乗り越えてくる老婆がいた。
庭に立った老婆は「食い物が欲しい。それは抹香でなければ何でもいい」と言う。
それから夫人の首を絞めようとした。
「誰か、抹香を持ってきておくれー」
夫人の声に、下女が抹香を持ってきた。
「早く香を焚いて!」
夫人の悲鳴に、下女はあわてて香を火にくべた。
とたんに老婆が消えた。
「あの奥様、独りで何をされていたのですか」
「老婆が私の首を絞めていたでしょ」
ところが下女は、「老婆などいなかった」と答えたという。
この老婆。
マッコウ勝負では勝てませんでした。
・マッコウ=抹香=真っ向
・大番衛士=将軍御所を警備
・抹香=粉末状の香
・大田南畝(おおたなんぽ・1749~1823・文人・狂歌師)
・『半日閑話』(はんにちかんわ・江戸時代後期の随筆)




