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妖怪百物語  作者: keikato
1238/1314

1238 怪異に逢し事

 怪異に逢し事は松浦静山の『甲子夜話』に次のような話があります。

 上様の側に仕え、雑用の職務をしていた飯室兵庫の体験談である。

 その日。

 飯室は宿直の当番にあたっていた。

 江戸城の勤務部屋で寝ていた彼が夜中に目を覚ますと、なぜか天井板が目の前にあった。

 驚いて左右を見ると、布団の先は何もない宙で、その先に欄間が見えた。

――俺は布団ごと、天井まで浮き上がっているのだろうか。

 そう思って再び上を見ると、天井板は元の位置にあった。

 宿直になった者はその部屋で寝る決まりで、ここで寝ると、天井まで浮き上がる怪異に遭うのだという。

 これは狐狸こりの類の仕業であろう。

 この怪異に逢し事。

 宿直の当番はコリゴリしたのでした。


・コリゴリ=狐狸狐狸こりこり

・松浦静山(まつらせいざん・1760~1841・肥前平戸藩主)

・『甲子夜話』(かっしやわ・随筆)


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