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遠吠えと感知の三十六話

大変お待たせ致しました。

よろしくお願いします。

 地竜の洞窟に、突如響き渡った魔獣の遠吠え。

 その出所が洞窟の入り口付近だと悟った彷徨う騎士は、出立前に当の魔獣を屠るべく、洞窟内を疾駆する。

 数々の魔獣や魔物を倒しながら、奥へ奥へと進んでいた際には数日の時間を要した地竜の洞窟も、巣食っていた魔獣の悉くを屠った今となっては予め付けておいた目印を辿って駆け抜けるのみである。

 遠吠えが聞こえた時には既に最深部から相当な距離を進んでいた事もあり、洞窟の入り口付近に至るまで、そう時間はかからないだろう。


 「何ダ……?」


 洞窟内を駆け、魔獣との距離が一定距離まで近づいた瞬間、彷徨う騎士は妙な違和感を覚えた。

 接近する過程で、魔獣が複数いる事は分かっていた。

 洞窟入り口付近のフロアに各一匹づつ、散開して遠吠えを上げている。

 それらの遠吠えから察するに、すべて同一種類の魔獣であろう事は疑いようが無く、恐らくは群れで行動する魔獣なのだろう。

 各フロアに一匹づつ散開して遠吠えを上げる理由は分からないが、この種の魔獣特有の本能的な行動と考えられない事も無い。

 彷徨う騎士が奇妙に感じたのは、これらの魔獣から感じられる魔力にあった。

 まるで細い糸で結ばれているかのように、魔獣のモノとは別の魔力が魔獣から伸び出ていたのだ。

 散開している全ての魔獣から。

 そして、その糸のような魔力が伸び出て行く先とは一体どこなのか。


 「入リ口……ッ!」


 一般に魔力を視認する事が可能な者であっても、容易には感知する事が出来ない程に希薄な魔力の糸。

 それを特に苦労するでもなく辿った彷徨う騎士は、全ての魔獣から伸び出る魔力の糸が、一カ所に行き着く事を確認した。

 自身が今正に向かおうとしていた場所、地竜の洞窟の入り口である。

 正確には入って最初のフロア、彷徨う騎士がブラッディ・ヘルハウンドを屠った場所であった。

 彷徨う騎士は、そのフロアにまで魔力の糸を辿り、思わず足を止めた。


 「コノ魔力……人間カ!?」


 魔力は個人差も個体差もあるが、何より種族によって大きく感じ方が異なる事を彷徨う騎士は既に学んでいる。

 この地竜の洞窟で、数多の種族の魔獣や魔物との遭遇によって。

 それ故に、洞窟の入り口付近に居る魔力の持ち主が人間であると早々に気付いた彷徨う騎士は、足を止めて様子を探る事にした。


 「コレハ……ドウイウ状況ナンダ?」


 感知できたのは、地竜の洞窟最初のフロアに人間が二人と、魔獣が周囲十フロアに各一匹で合計十匹。

 魔獣から伸びる糸のような魔力は、最初のフロアに居る二人の人間へと繋がっていた。

 まるで飼い犬に付ける散歩用のリードの様な魔力の糸と、移動する様子の無い二人の人間と十匹の魔獣。

 人間は一切動かず、魔獣は遠吠えを上げ続けるだけだった。


 「魔獣ヲ従エテイル……ノカ?」


 魔力の糸で繋がれているという事から察するに、二人の人間と十匹の魔獣が無関係とは思えない。

 しかし、そうであったとして、現状彼等の行っている行動が何を目的としての事なのか、彷徨う騎士には分からなかった。


 「コレハ……魔獣ヲ殺ス訳ニハイカナイヨナ、人ト敵対スル事ニナリカネナイ」


 考えた結果、彷徨う騎士は散開している魔獣を殺さず、道中のフロアを素早く通り抜け、二人の人間のもとに向かう事にする。

 正直な所、まだ人間と話が出来るか不安は有ったが、避けて通れない場所に人間が居座っている以上は仕方がない。

 道中、魔獣の方から襲いかかって来た時はどうしようかと考えながら、彷徨う騎士は再び歩み出した。


 「最悪……正当防衛ッテ事デ何トカナルカ?」


 口にする言葉とは裏腹に、右手に漆黒の剣を、左手に土塊の槍を握り締めて歩を進める彷徨う騎士の姿は、酷く好戦的な狩人の如き様相を呈していた。

ありがとうございました。

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