襲い来る魔王軍(中編)
散らばった窓ガラスをメイド服姿で片付けるアーネット。
腰には忘れず冥月を携帯している。
セレトニーの事は心配ではあったがまずは掃除からである。
「掃除の基本はこの服から!」とアリス根性バリバリであることに本人は気がついていない。
ネコミミに二股に分かれた二本の尻尾をフリフリしながら鼻歌交じりで掃除をする。
昔の姫からは想像もできない姿ではある。
長く美しい黒髪を後ろで束ね、大きな胸を揺らしながら、スラリと背の高いアーネットのこのような姿を見れば、セレトニーでなくとも見る男たちのすべてが虜になるのかもしれない。
まあ、普段は軍服で腰に剣を携え、つり目で棘の女王のような雰囲気をちらつかせているので、残念ながら彼女に近づいて声を掛けようというような命知らずは少ない。
アーネットは空中に指を漂わせて時間を表示させる。
敷地内であればいつどこでもデータを空中に呼び出し、通信や情報を取得することができる。
便利な世の中である。
屋敷の生活圏エネルギー供給はまだ復活していないが、今朝早くに警備システムだけは自己修復したようだ。
見ると屋敷の見取図に赤い点が表示されている。
あいも変わらず不法侵入者がきたのだろう。
侵入者が入ってもいちいち警報が鳴るようには設定していない。
そんなことをすれば四六時中鳴ってうるさくてかなわないからである。
ただ防犯システムが破壊されるようなことがあれば別だ。
今回鳴らないと言うことは防犯システムにやられ動けなくなっていると言うことだろう。
まだ少し出勤までには時間があるので、アーネットは印のあるその場所に向かう。
赤い点の場所に着く。
見るとそこには一人の男が倒れていた。
黒い着物のようないでたち。見たことのある男だ。
「ヤマト?」
そこに倒れていたのは剣術指南のヤマト・オーラであった。
「大丈夫か!しっかりしろ!」
帝都襲撃の折に死んだとされていたものの一人である。
何かしらの情報を持っているに違いない。
アーネットは慌てて近づき、ヤマトの胸ぐらを掴んで引き起こす。
「ぐうううむむ」
息はあるようだ。
アーネットは意識を取り戻させるべく、彼の頬をはたき声を掛ける。
パパパパパパパパパパパパパン
小気味の良い音が辺りに鳴り響く。
「しっかりしろ!死ぬんじゃない!今、医療班を「何回はたくでござるか!死んでしまうわ!!」」
アーネットに数十発以上頬をはたかれ、真っ赤に腫れ上がった顔を押さえながらヤマトが起き上がる。
「医療班を呼ぶまでもござらん。何故かここに来た途端に身体が痺れ、動けなくなっただけでござる」
確かによく見ると彼の身体に傷のようなものはない。
おそらく復活した防犯システム麻痺させられただけであろう。
今はアーネットが側におり、彼を敵と認識していないことから防衛システムも攻撃を仕掛けようとはしない。
「一体何があった?あの襲撃の折に死んだと思っていたが……」
「確かに。拙者は一度死んだ身でござる。しかし拙者は体内に蠱を飼っておりまするゆえ、なんとか助かり申した」
【蠱術】
体内に回復や蘇生など色々な能力を持つ虫を飼うことで、様々な恩恵を受けることのできる術である。
ただ体得するのには元々の体質や資質、永年の修練を要し、下手をすれば虫に体を食われて死に至る危険な術である。
星によってはその力を持つだけで異端とされることもある。
「恐ろしい相手であった……」
ヤマトは襲撃時のことを語る。
燃え上がるように逆立つ白い髪をたなびかせた一本角の少女。
名を【白鬼】と名乗ったその少女は、帝都防衛の最大強化された精鋭部隊をこともなく引き裂き、殺す。
手に持つ黒い刃の刀で強化スーツごと斬り殺されていくもの。
またはその力で押しつぶされるもの。
戦車やヘリですらも彼女の力の前には全く刃が立たず、それは一方的な戦闘、いや虐殺であった。
恐るべきは単純にして強力無比なその力というよりも、こちらの攻撃が一切通じないと言うこと。
実弾、ビーム、魔法ですらも彼女の体をすり抜け、逆に向こうの攻撃は容赦なくこちらに対して牙を向き、破壊の限りを尽くす。
どうすればよいのか見当もつかない。
彼女のその技は魔法ではなかった。
魔法であれば集中を阻害するための妨害装置、精霊の動きを制限するという【アンチマジックストーン】製の武器や防具と、あらゆる対策がとられていた。
それは魔法とは全く別のものであった。
「拙者があ奴に斬りかかるが、こちらの刃は素通りして当たらないのでござる。拙者の剣は魔剣。例え霊体であろうが切れるはずであるござる……」
ヤマトの腰に挿してある魔力を持つ刀を見つめ、アーネットはそこまで聞いて何やら思い当たることでもあるのか思案にふける。
ヤマトは顔を青くしながらも更に、語る。
「拙者は鬼娘に首をつかまれ、その腕を掴もうとした。こちらを掴んでいるのだから当然その時がチャンスだと思ったからでござるが……。驚くべきことに拙者の首をつかむその手すらつかめず、また剣もすり抜け、あやつは拙者の身体を二つに裂いたでござる……。そして拙者が死んだと思ったのであろう、あやつはそこで独り言をつぶやきおった「次元が違うのだ」と…」
そこで歯を食いしばり、ヤマトは土下座のような格好で地面を叩いて悔しがる。
「屈辱でござる!あのような技も何もあったものではない動きで戦うものに強さの次元が違うなどと!!せめてこちらの攻撃さえ当たればあのようなことは言わせぬでござる!!」
それを聞いてアーネットはヤマトの思い込みを訂正する。
「違うぞ、ヤマト。それはおそらく強さの次元と言うより、そのまま事実を述べただけだ…」
ヤマトは顔を上げ、アーネットを見上げる。
「どういう意味でござる?」
「次元……。白鬼と言うもの、おそらく三次元でなく、もっと高次元の生物だ。三次元に干渉しつつも逆に三次元のものは干渉できない次元。五次元以上の高位の位置にいる生物だな……」
「なんと!?しかしアーネット殿は何故その様なことがお分かりになるのでござるか?」
「それは……」
その時、アーネットの脳裏にアンブロシウスより念話による緊急の通信が入る。
それを聞いたアーネットはヤマトに出かけることを伝える。
「私はしばらく急用で出かける。いくらかの食料は屋敷にある。好きにしろ。しばらくここで隠れていてくれ!ああ、でも寝室には入るなよ!」
アーネットはアンブロシウスの居場所が分からないので、彼に念話で自分の体を使いゲートを開いてもらおうとする。
しかし「今巨大な力を使う魔法を帝都で使うのは不味い」と気が付き思いとどまる。
そこでテスタニアに緊急通信をいれる。
「この星から離れた位置ならば魔法を使うことができる」と、そう思ったからだった。
しかし通信がつながり、アーネットはテスタニアを見て絶句する。
「お前、何をしているんだ?」
電話のモニター越しに出たテスタニアは「牙」の艦橋、それも艦長席にいた。
艦橋には彼女の他には誰もいないようだ。
そこで彼女は艦長席によじ登り、今まさに輪になったロープに首を通そうとしていたのだ。
「何って見れば分かるでしょう?アンブロシウス様がお亡くなりになった今、私はあの世であの方にご奉仕すべく旅立とうとしているところです。では忙しいので緊急通信を切りますね」
「まてまてまてまてええええぇぇぇぇぇぇ!?そこは私の席じゃないか!何でそこで死のうとする!?死ぬなら別の席でしろっ!」
「あいやいやいや、待つでござる!?そういう問題ではないでござろう!?」
横にいたヤマトがたまらずアーネットのセリフに突っ込んでしまう。
「止めないでください。あの方がいない世界なんて、もう生きてる意味がないじゃないですか~~~!」
テスタニアは涙を流しながらロープに頭をくぐらせる。
「誰も止めてないぞ!そこで死ぬのはやめてくれって言っているんだ!首つりで死んだら私の席が汚物まみれになるじゃないかっ!」
「いや、だからそういう問題じゃないでござろうがっ!?ここは引き留めるとこでござるよアーネット殿!?」
収拾もつかないままに数分をそのやりとりで費やし、たまらず暗号回線に切り替えたアーネットはアンブロシウスが本当は生きている事をテスタニアに伝える。
伝えるべきではないのだろうが、背に腹は代えられなかった。
冗談は抜きにして、自分の夫の馬鹿な行動で「テスタニアが死ぬのを黙ってみていられ無かった」というのが本心ではある。
「本当に本当に本当ですの?」
「本当に本当に本当だ。だから頼むから大気圏脱出可能な高速艇で迎えに来てくれないか。アンブロシウスが待っている。急ぐんだ」
「五分で行きます!」
そう言ってテスタニアとの通信が切れる。
テスタニアは五分と言ったが、高速艇の貸出し手続、搭乗者の登録手続、発進理由の起案、認可申請と許可の通達に最低でも二時間は掛かる。
どんなに早くとも一時間は掛かる、と思っていたが、本当に五分で高速艇が屋敷の上空に来た。
一体何をどうしたらそんなに短縮してこれるのか分からなかったが、兎に角アーネットは船の中に移動する。
もちろん転移ではない。
それは魔力を使わないアリスの特殊能力。
【幻影の侵入者】(何処にでも入ることのできる能力)であった。
ヤマトが見送る中、高速艇は加速し大気圏を脱出。
あっという間に見えなくなったのだった。
―――――――――――――――――――
アンブロシウスは娘達を連れ、兵に案内させて城内に設置されたモニタールームに向かう。
娘達の着替えで思いのほか時間を取られた。
メイドたちが用意し、彼女たちが着るのは色鮮やかな宇宙服で、腰の部分に短いスカートのようなフリルが特徴的だ。
アンブロシウスは同じように宇宙服を勧められたが断り、亜空間から普段の自分の服を取り出し、着ていた。
胸元にブレンダからもらった宝石が光る。
戦艦の艦橋のような機械が設置された、それよりも遙かに大きな司令室。
至る所に空中モニターが飛び交い、暗号文や指示がそれを追いかけて発出され、慌ただしく流れていく。
前面上空に固定された半透明の巨大モニターには、警報の原因たる敵の姿が大きく映し出されている。
惑星より数万キロ離れた位置にあるこの宙域の防衛戦。
そこに終結した帝国艦隊を次々と撃破し、突破する巨大な黒い艦隊の影。
それは戦艦のようでいて、明らかに生物と思われる特徴を備えていた。
あるものは無数の毛むくじゃらの腕を生やし、あるものは巨大な目や顔のようなものを持ち、またあるものは長い髪を生やして巨大な口と牙を持つ。
それ以外の部分は黒い甲殻類のような外骨格に覆われている。
その外骨格もぬらぬらといやらしい光を放ち、まるでゴキブリのようにも思えた。
見る者に不快と恐怖を感じさせるそのフォルムは人の創り出したる人工のものではなく、「化物」や「悪魔」といったものを連想させる。
その大きさは様々で、魔導機兵クラスの人型をしたものから、果ては巨大戦艦クラスのものまでいる。
その数、約三千。
とてもではないが辺境の惑星に配備された軍程度で抑えられるようなしろものではなかった。
司令室にアンブロシウス達が到着したとき、既にノイエがそこにおり陣頭で指揮を取っていた。
指揮を取るとはいってもその化物艦隊相手に帝国艦隊は敵にすらなっていない様子。
一方的な虐殺。
被害を最小限に収め、戦線を後退させる指示をするくらいしかできていない。
「聞くまでもないかもしれないが、状況は?」
「見ての通りだよ。なんとか粘ってはいるが風前の灯火といったところだ」
ノイエは肩をすくめる。
仕草は軽いノリだが顔は笑っていない。
それほど深刻な状況なのだ。
「申し訳ないが敵の目標はここのようでな。悪いが高速艇を用意する。客人にはこの星から脱出してもらいたい」
アンブロシウスがいくら軍神と呼ばれるものであったとしてもどうしようもない状況というものがある。
相手が人の軍というのならば一旦戦線を後退し、陣形を整え、作戦を練って戦況を覆すということができなくはないかも知れない。
しかし襲い来るは化物、いや魔王艦隊。
応戦はしているものの、戦艦クラスの悪魔に至っては高出力のビームですら通じない様子であった。
それがわかっているのかノイエはアンブロシウスに指揮を委ねるのではなく、脱出を促してくる。
アンブロシウスも余計な時間を取らせることもせず、ただ頷いてその場を後にした。
アンブロシウスは娘達と部屋を出て、案内する兵に従って脱出艇に向かう。
「パパ、どうするの?」
「そうだよ。本当に脱出するの?」
娘達がアンブロシウスの後を追いながら小声で問いかけてくる。
「ま・さ・か」
そういうが早いか先導する兵を手刀一発の元に眠らせ、静かに通路の壁にもたれかけさせる。
「あれだけの数。いや、数よりも相手が相手だ。俺が行かなければ本当にこの星は草木一本残らないだろう」
「お母様達に聞いてはいたんだけど、あれが魔王軍?」
娘達は少し怯えているようだ。
やっと年頃の娘らしい姿を見せる彼女たちに、アンブロシウスは何故か少し安心する。
悪魔を前にしてやっと少女らしい姿を見せるというのは普通の反応とはほど遠いのだが、そこはアンブロシウスの娘達である。
アンブロシウス自身は娘達の「怯え」が「恐怖」ではなく、気持ち悪いものを見たという「不快感」から来るものであることを察していた。
「見るのは初めてか?」
頷く娘達。
「その感覚は太古のDNAに刻まれた記憶だ。気にするなっても仕方がないよな。まあ兎に角急ごう。一旦城の外に出るぞ!」
アンブロシウスは娘達を伴って、通路の先に見える窓に向かい走り出す。
その時、警報の鳴り響く場内に場違いな鼻歌を耳にし、アンブロシウスは立ち止まる。
前を走っていたアンブロシウスが急に立ち止まるので、後ろを追いかけて走っていた娘達はその背に突っ込んでしまう。
ぶつかった衝撃で尻餅をつく二人。
「イタタ、突然止まらないでよ!パパ!」
「そうだよ!鼻ぶつけちゃったじゃないか!!」
アビンクスは赤くなった鼻をさすりながら拳をふりあげてアンブロシウスに抗議の声をあげる。
アンブロシウスは娘達の抗議など聞いてはいなかった。
驚きの表情である一点を見て固まってしまう。
彼が見やる方向は窓のある方とは違い、横に延びる別の通路であった。
そこには一人のメイドがおり、ほうき片手に掃除をしていた。
天の川のように光り輝く星を携えた美しくも長い銀髪を持つ少女。
その髪をツインテールにし、印象をぶち砕くような牛乳瓶眼鏡をかけ、彼女の耳はエルフ独特の特徴的な形をしていた。
「ミレニア?」
「「ミレおねーちゃん!?」」
思わず立ち止まってしまった訳、そこにはアンブロシウスの娘の一人にして長女ミレニア=マキシスがいたのだった。
「何故こんなところに!?」
アンブロシウスは驚くが、ノーラたちは「またか」と言ったふうに顔を見合わせ、何やら納得の様子。
「そういやここ二、三日お城に帰って来てなかったよね」
「また例の病気?」
「でしょうね」
こちらに気が付いたのか、ミレニアは掃除の手を止めて微笑む。
「あらあら、皆さんお久しぶりね~」
数日ぶりに会った家族を見、のんびりとした口調でのんきに挨拶をするミレニア。
「お久しぶりじゃない!?お前はこんな所で何してるんだ!?」
「え?いやですよ~お父様。子供達と一緒に教会のお掃除してるに決まってるじゃないですか~。あら?そういえば子供達はどこに?」
「出ました!究極の方向音痴!」
「別名、一人迷いの森!」
娘達の呟きを聞いてアンブロシウスは思い出す。
彼女が生まれ、ハイハイができるようになってすぐのこと、「ちょっと目を離すとすぐに何処かにいなくなる」とエルフの妻のティアが悩み、皆でよく城の中を探した記憶がある。
その時はそれ程探さずとも見つけられたのだが……。
アンブロシウスは今の今まで彼女がおてんばで、親の目を盗んですぐに隠れんぼをするのだとばかり思っていたのだった。
普段の性格はおてんばとは程遠く、切れない限りおとなしいのでおかしいとは感じていた。
『まさか方向音痴だったとは……』
「ってか方向音痴にも程があるぞ!惑星超えての方向音痴って何?宇宙規模なの!?方向音痴って年齢とともに範囲広がるものなの!?」
「だから言ってるじゃない。ミレおねーちゃんの方向音痴は迷いの森クラスなんだよ」
「次元や、もしかしたら時間を超えて彷徨っちゃうのよね~」
「まあ、いつも自力で帰ってくるから、もう今じゃ城の誰もが心配なんてしてないけどね」
「??」
「妹たちが何を言ってるのか分からない」といった風に首をかしげるミレニア。
自分自身にその自覚はないらしい。
「パパはそんなこと母さん達から聞いてないよ?」
「心配掛けたくなかったんじゃない?」
「うんうん」
娘達の返答に頭を抱える。
まあ確かにミレニアなら大丈夫かも知れない。
それどころか逆に宇宙規模で厄災が歩き回ると考えると空恐ろしくあった。
アンブロシウスがそう思う訳。
彼女の幼少時代の失踪事件など些細なこと、とそう思えるほどの彼女の力。
ミレニア=マキシス。
彼女の魔眼はとても危険なものであった。
【破滅の魔眼】
普段は彼女が掛けている【封印の眼鏡】でその力を抑えてはいるが、ミレニアの魔眼は見るものを破滅に追いやる力を持つ。
子供のうちはまだ彼女に見られたとしても「転んで馬車に引かれたり」「湖に落ちたら主である魔物に襲われたり」「こけたメイドにお茶を頭から被浴びせかけられ、よろめいたら地上数十メートルの城の窓から落ちたり」と、軽い災いで済んだのだが、成長した今、もし彼女に魔眼で見つめられたのならばおそらく天災クラスの不幸がそのものに襲いかかるに違いない。
「まあ、丁度いい」
アンブロシウスは手首の小さな通信装置からモニターを出し、ノイエ皇子の姿を見せる。
そしてミレニアに一つ頼みごとをすると、ノーラたちを連れて城の外に向かった。
アンブロシウス達はブレンダと会合をしたテラスより、一回り小さなテラスから外に出る。
アンブロシウスは娘達を下がらせると巨大なゲートを開く。
「起きろ(wake up)アマテラス!」
アンブロシウスの声と共に雄叫びを上げ、異空間より現れる巨人。
月明かりの下、現われたるその白い機体。
それは、以前のアマテラスの姿を知るものならば、「別の機体か?」と思うほどの異なったフォルムをしていた。
以前のアマテラスは一見重武装の騎士と見れなくもなかった。
今のその姿は頭部からは前方に三本の角が伸び、一見するとコーカサス大カブトを思わる。
肩も異様に大きく、まるで巨大なシールドを二つ付けたようになっていた。
腕は二本だが、挟まれると人間サイズの物であれば粉々に粉砕するであろうギア(機械のネジ)がいくつも折り重なって回転しており、その先にマニュピレーターが付いている。
背中にマントは無く、代わりに白い日輪のようなものが付けられていた。
そして全身からは青白いオーラを放ち、偉業の形をしながら威風堂々としたその姿には荘厳すら感じさせる。
「これがパパのアマテラス?」
「なんかチョット変わった?」
「まあチョットだけな」
アンブロシウスは説明する間を惜しみ、目の前にアマテラスの中に入るゲートを開く。
「行くぞ!」
ノーラ達もアンブロシウスに続いてゲートに飛び込む。
ゲートを出るとそこはかなり大きな部屋で、全面がモニターのようになっており、人が座ると思われる白い操縦席が七つ並んでいた。
それが円を描き、真ん中にある大きな操縦席を背に取り囲んでいる。
アンブロシウス自身は真ん中の大きな席に座る。
「適当に座れ!」
前方の操縦席に並んで座りながら娘達は父に問う。
「パパ、アマテラスの大きさにこの操縦席の空間っておかしくない?」
「明らかに容量オーバーだよね?」
アンブロシウスはニヤリと笑う。
「宇宙空間での戦いでGのあまりの大きさに懲りたんでな。アマテラスの操縦席を亜空間と直結してそれらの影響を受けなくした」
【空間固定】
一つの物質に自らが作り出した亜空間を直結し、それを維持する。
単純に一言で言えばそういうことだが、それがどれほど高度な魔法技術の結晶か分からない娘達ではなかった。
「アビンクスはアマテラスの操縦!ノーラはそのサポート!俺は魔法に集中する!」
「「了解!」」
アマテラスの操作方法は操縦席に座るだけでその者に強制的にダウンロードされる。
あとはそれをどれ程うまく扱えるかだが、アンブロシウスは娘達のハイスペックさを知っているので、その点について心配はしていなかった。
どちらかといえば問題は、悪魔と相対した時に「怯え」から萎縮しないかということであった。
アマテラスの背中の日輪が光り輝く。
メテオドス攻略時に宇宙空間を飛翔したときのように、アマテラスは凄まじい速さで加速。
次の瞬間には惑星ヴァートリムの大気圏を突破していた。
目標、魔王軍。
アマテラスはアンブロシウス、ノーラロール、そしてアビンクスの三人を乗せ、宇宙空間を青い光となり翔るのであった。




