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還元

 家族は常に一緒にいるべきだ。

 だからこそ家族なのだ。

 家族は多ければ多い程いい。

 時間も時代も関係ない。繋がりがあるものは皆、家族として一緒にいるべきなのだ。


 家族は辛い。

 近すぎるからこそ理解できない。近すぎるからこそ拒絶する。近すぎるからこそお互いを苦しめ合う。 

 家族だからこそ生み出される苦しさ。

 家族という関係性の中で蓄積され零れ吐き出され行き場をなくす感情達。


 それが還り火の元。家族から出た記憶と感情の残滓。

 生きている間は不要なもの。しかしそれが我々にとっては不可欠なもの。

 

 欲しい。欲しい。


 何故欲しがる。

 単純な話だ。これは食欲だ。


 残滓ほど美味いものはない。

 満たされるものはない。

 この上ない格別。

 だから欲しい。


 食べたい時に食べる。それも良い。

 だが記憶の残滓は丁寧に仕込み、時間をかけて煮込めば煮込むほど旨味を増す。

 だから育てる。仕込みは長ければ長いほどいい。


 ほら、そろそろだ。

 幼い日に見た我らを忘れさせはしない。

 十年、二十年、三十年。忘れかけた頃にまた思い出させる事で残滓は増す。

 

 そうだ。家族になるのだ。

 我らの腹と舌は満たされ、迎え入れられた魂は還り火として新たな存在として命を与えられ安息を得る。

 灯を失い、還る事でまた火を灯す。我々こそ還るべき場所なのだ。

 

 さあ、そろそろだ。長い時間をかけた。

 

 かぞく、かぞく、かぞく、かぞく。


 怯えと諦めが入り混じった視線が私を見る。

 

 ーー大丈夫だ。何も心配いらない。


 私は呼びかける。


「おかえり。ようすけ」

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