三曲目 変わる景色
脳裏に浮かび上がった大量の情報。
スキルやアビリティの名前と効果を確認しながら欲しい物を選んでいく。
とは言ってもまだ1つも選べてないけどね。
4つしか選べないから慎重になってる面もあるけど他にも理由がある。
【スラッシュ】
【連続斬り】
【ダブルカット】
【首狩り】
【剣の才能】
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………まぁ、なんと言うべきか。
斬撃に関するスキルやアビリティが圧倒的に多いんだよ。
私は首を切られて死んだ身ではあるけれど、切り裂き魔を目指す訳ではないんだけどね。
お、良いの見っけ。
【死者の呻き】っていうスキル。
効果は相手の能力を下げる声を出す。
そう、初めて声を出すスキルだ。
私の今の状態じゃ声を出さないからね。
だから取る。
声を出すきっかけになるかもしれないから。
またズラズラっと脳裏の情報を読み解いていく。
あと3つしか選べないから慎重に、慎重に。
あ、良さそうなの発見!
【絶叫】っていうスキル。
大きな声を出して相手を怯ませるスキル。
そう、大声を出せるスキルだ。
大声ってのは、広い場所で歌うなら大事な要素だからね。
次は何があるのかな?
空気に関する魔法とか欲しいんだけどな。
音波とか、温度とかさ。
音に関係するからね。
おぉ、これは、これは。
【怨言】ってアビリティ。
声に感情を乗せる効果があるんだって。
気持ちを込めた歌ってのは人の心を動かす物だからね。
これも取ろう。
ん?
【誘う嗤い】?
ほうほう、これは。
効果は嫌な嗤い声で相手の意識を注目させるスキルらしい。
さらにアビリティとして、嗤い声を聞いた相手は意識に嗤い声が刻まれる。
ふーむ、ミュージカルやマジックで役立ちそうな物だね。
よし、採用!
あれ?
これで4つ目なんじゃ………
そう思った瞬間、荒削りの洞窟が歪み始めた。
そうか。
5個スキルかアビリティを選んだらダンジョンが稼働し始めるんだったね。
私は15個も取れたけどね。
そう思うと脳裏に新しい情報が入ってきた。
んん。
なんという感触なんだろう。
脳味噌がジュルリと動くような、頭の中が熱くなるような感じ。
不快ではないけれど。
ちょっと気持ち良い気がする。
これは、危険な薬を使うとこんな感じなのだろうか?
うん、確かに病みつきにはなりそうだ。
新しく入ってきた情報はダンジョンの構造をどうするかというもの。
スキルやアビリティの一覧みたいにまたズラズラと出るな。
『穴』
『墓地』
『朽ちた街』
『古びた神殿』
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うーん?
なんだろうか?
心友と見た映画、それもホラーというジャンルだ。
あぁ、心友がやっていた化け物を撃ち殺すゲームのような状況にも似ている。
そんな所が舞台になるような名前がどんどん出てきた。
そういえばスキルやアビリティにもそんな雰囲気の物が多かったような気もする。
………過ぎ去った事は良い。
ホラーの舞台で歌うのも良いけど観客も居てほしいし。
怖い雰囲気の歌も歌えるから良いけど。
でも、それだけってのもいけない。
私は歌を気持ち良く歌いたい。
それは、全ての歌が対象だからだ。
ん?
んん!?
『広場』
ふーん、『広場』ねぇ?
歌う舞台としては良いと思う。
私だって初めて歌ったのは家の庭だった。
様々な植物が植えられていた。
庭師の人が綺麗に整えてくれていた庭。
奥には石で囲まれた底まで澄んで見える大きな池があった。
小鳥の鳴き声が聞こえるように巣箱も置いてあった。
木漏れ日の中、私は最初の歌を歌ったんだ。
これにしよう。
そう思った瞬間。
歪みきった空間が白く、白く、白く………
気が付いたら私は広場に立っていた。
遠くに鬱蒼とした森があるのが分かる。
空はどんよりとした雲しか見えない。
下は何も生えていない大地。
鳥どころか虫の声すらも聞こえない。
………私の思っていた広場と違う。




