十一曲目 死に損ない
森を破壊しながらダンジョンを広げていく。
口ずさむのは童謡のような単調かつ軽快なリズムのわりには残酷な歌詞という少々狂った歌だ。
まぁ、環境破壊という行いには原住民に悪いかなとは思うけど、ゾンビしか見かけないし大丈夫でしょ。
途中で視界が真っ赤に染まってゾンビを潰しに行く以外はこうやって歌いながらダンジョンの領域を広げていく。
SPが切れたら黙って環境破壊を続けるけどね。
SPの回復手段が欲しいな。
敵が現れない限りは時間経過しかないからな。
続けて歌いたいのにな。
森の終わりは見えない。
広い森だ。
さぞや資源やらなんやらがあるんだろうがそんな事は知らん。
まぁ、これで生活が出来なくなったと困る人も出るだろうから、森を生み出す歌を歌えばいい。
あぁ、確か極楽浄土という仏教の天国に関係した歌と歌った時の影響を知ってるから言える事なんだけどな。
砂漠で歌った時は驚いたよ。
植物や池なんかが徐々にできたからね。
あの時は本当に驚いた。
私の歌が自然を反転させる影響力は途中で声が途切れ途切れになったほどだ。
この広場でも同じ現象を私は生み出せると思う。
確実ではないけれど。
………後でちょこっと歌おう。
確認のためだ。
これで何も出せなかった時は別の歌を歌おう。
手段は1つだけではないのだから。
ポケットを叩けばお菓子が出てくるという歌詞の歌もあるのだし。
しかし、この森はゾンビしか出てこないな。
あのソウルイーター以外は魔物を見かけていない。
原住民も見かけない。
『亡者の森』と呼ばれている森には原住民が居ないのか。
それならば好都合なんだがな。
まだ、森の先が見えない。
SPもまた切れた。
黙って森の開拓を続けるか。
広場の距離は目視では東京ドームを超えたかな。
それにしても、ダンジョンを広げる度に必要なDPが増えるな。
その分、変換できるDPも増えるけど。
森を壊す範囲が広くなるからそうなるのだろう。
私には都合が良い。
余剰DPが少しづつ貯まっていく。
私の新しい能力を得る時も近いな。
観客も森の外ならば居るだろう。
ふふ、早く会いたいものだ。
そのために、森の開拓を頑張るか。
鬱蒼とした森をただの広場に変えている事を開拓とは言えないかもしれないが。
あ、視界の色が変わった。
でも今までとは違い、青一色だ。
ダンジョンの領域を広げる事もできなくなってしまった。
これは私の時はできないと分かっている。
私の身体がまた勝手に動き出した。
私にしてはゆっくりとした歩調だ。
その先には破壊された木々が積み重なっていた。
そこに何かがいるのだろうか?
ダンジョンの領域を広げる事はできなくともダンジョンにある物をDPに変換する事はできる。
重なり合った木々をDPに変換するとほんとにボロボロの何かがいた。
うん?
ゾンビか?
ーーーーー
アルケット
Lv999
《ハイヒューマン》
人の限界を超え進化した者。
『勇者』
善神から聖なる力を授かった者。
HP:1/99999
SP:50472/99999
STR:99999
VIT:99999
AGL:99999
INT:99999
MEN:99999
DEX:99999
LUK:1
・TITLE
『超越者』
己の限界を超えた者の証。
レベルキャップが解放される。
『不死身の肉体』
死の淵から蘇った者の証。
体力が尽きても確率で生き返る。
・
・
・
ーーーーー
【真実の瞳】で分かった事なのだが、どうしよう。
瀕死の勇者が広場に来たのだが。




