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KIDS! ~小学生達の道草異世界冒険譚~  作者: あぎょう
クエスト1 ナニワの冒険
22/196

其の二十一 VS管理人

 恐怖に悲鳴をあげる村人達を周囲に、彼らの戦いは始まった。

 否。赤髪の少年。管理人(ラカス)にとって、これはただの遊びに過ぎなかった。

 ジュウが管理人(ラカス)に向かい、ブンブンと空を裂いて拳を振る。しかし、彼は足から炎を噴出し、さながらロケットのように加速しながら、バックステップやサイドステップ。一瞬で距離をとり回避しながら、腕から炎の弾をはじき出し、ジュウはそれを拳圧でかき消した。

 このような攻防が、すでに五分近く経過していた。

 村中の家や草原など、いたる所に、管理人(ラカス)が移動時に残した火の粉が燃え移る。村人達は巻き込まれまいと距離をとり、また消火活動に精を出していた。


「カッカッカッカ! いいぜ! 最高だ! おら! もっと頑張れよ !!」


 避けては燃え、避けては燃えを繰り返しながら、鬼ごっこでもしてるかのような無邪気な笑みを見せる管理人(ラカス)。日はすでに暮れかけ、薄暗い空間の中を、赤い光が舞い踊っていた。


「ちくしょう! ちょこまか逃げやがって!」


 ジュウがひたすら管理人(ラカス)を追いかけ、拳を振るう。

 ジュウの動きも決して遅くはない。常人の動体視力なら目で追うのがやっとである。

 しかし、管理人(ラカス)は三次元の空間をフルに活用し、足の炎を噴出させ、空中を舞っていた。拳が届きそうで届かないギリギリの領域へ、楽しむかのように、あざ笑うかのように逃げる。

 すると突然。村人達が一際大きな悲鳴を上げた。


「? なんだ?」


 村人全員が目を剥き、上空を見上げている。ジュウも思わず、足を止めてその視線を追う。

 村の上空に浮かぶ巨大なスクリーン。それを見て、ジュウは目を疑う。

 ラマッカ族の少年。ボナが、巨大な蛇に丸呑みにされた映像だった。


「……………!!」


 一瞬の出来事ながらも、それは残酷なまでに、ありありと、明確に映し出された。これ以上ない、最適のアングルから映された衝撃映像だった。

 人々はしばらく言葉を失う。すると


「カッカッカッカッカッカ !!」


 管理人ラカスがこの上ない、邪悪で下劣な高笑いを上げた。


「すっげぇ !! 最高だ !! 最高のシチュエーションだぜ !! 絶望すぎて涙がでらぁ !!」


 叫びながらも、当然、彼の眼には一粒分の涙も溜まっていない。

 ジュウは怒りに皺を寄せて、睨みつける。

 管理人(ラカス)は笑いを収め、それに相対した。


「さぁ。救いのヒーロー気取りさんよぉ。どうするつもりだ? てめぇのせいで、幼い命が消えちまったぞ?」


 馬鹿にするような口調で、嬉しそうに責める。

 ジュウはしばらく沈黙して、


「……まだボナは死んじゃいねぇ」


 根拠のない一言。ジュウの眼は絶望に沈んではいなかった。

 管理人(ラカス)は意外そうな顔で眉をつりあげる。ジュウは右拳の甲を見せるようにして顔の前に構えると、


「腹殴って、吐き出させてやる!」


 瞳に固い意志を宿し、はっきりと言い放った。

 それを見て、管理人(ラカス)はキョトンとした顔。直後。


「カッカッカッカ! 単純すぎるぜテンパ野郎! でもな。それすら敵わねぇよ!」


 そう言うと、管理人(ラカス)は祠の正面に向かって歩きはじめる。

 そこには、撤去作業によって、木の柱や土の塊、葉の固形物などの小屋の残骸が散らばっておかれていた。

 彼はそれに対し、両手から幾多の炎の塊を浴びせて燃やす。直後、右手を掲げると、それに倣うように、燃える残骸が宙に浮かび始めた。

 そして、


「ここで、俺に殺されるからな !!」


 右腕を前に突き出す。それに応じて、無数の炎を纏った残骸が空中を舞い、ジュウめがけて猛接近した。


「資源のリサイクルだ。無駄にすんなよ !!」


 笑って言い放つ。

 目を見開かせるジュウ。さすがに立ち向かうのは無謀と判断。


「うわぁ!」


 叫び、横っ飛びに家の影へ飛び込んだ。


「なんだあれ !? つーか、なんで手から火なんか出せるんだ !?」


 いまさらながら当然の疑問を口にするジュウ。細かい事は気にしない性格であるが、その能力のあまりの異様さは、その範疇を超えていた。

 ジュウは家の陰から様子を覗く。彼は、炎の残骸が、先刻までいた空間を通り過ぎると思った。

 しかし、数秒後。

 それらは彼の横。空中で静止した。


「………… !!」


 そして次の瞬間。炎を纏った残骸は、彼に向かって乱雑に飛び掛ってききた。


「うおおおお !?」


 驚き混じりに緊急回避。炎の残骸は付近の家を貫通。あるいはかすめ、葉に火が燃え移る。

 ボウボウと音を立てて燃え始めた。どうやら、炎を纏わせたものを自在に動かせる能力らしいことを理解する。

 しかも、残骸の材質は鉄の硬度を持つカナリ木である。あらゆる障害物を容赦なく破壊できるほど丈夫である。もちろん、直撃すれば怪我はまぬがれない。


「あ、あいつ無茶苦茶するなぁ。村の人たち、いいかげん怒るぞ」


 すでに怒れるのなら怒るところではあるが、村にいるのは非力な女や子供達、重傷人ばかりである。抵抗などするわけもないし、できるはずもなかった。

 そこでふと、ジュウの視線にあるものが入った。

 村の端。牛の飼育部屋のような、木造小屋が見えた。

 中には、マルノコのような刃を前歯に携えた珍獣。カラバが仕切りを挟んで十体ほど並んでいる。

 いずれも機嫌が悪いのか。鼻息を荒く、前歯の歯をギュルギュルと回転させていた。その建物の外に、カラバの餌と思われる、黄金色の蜜を吸った大量の木の皮が積まれている。

 ジュウのひらめきランプがピカリと点灯した。



「おいおいどうしたぁ? ガキらしくかくれんぼでもしようってのかぁ?」


 ジュウの姿を見失った管理人(ラカス)は、炎の残骸を乱雑に飛び交わせ、テントを突き破り、木々をなぎ倒していた。

 次々と破壊される家々。村人は恐怖の叫びを上げて、不条理な攻撃から逃げるので精一杯だった。その様子を見てもなお、彼は激しく炎を動かし、手あたり次第に破壊を続ける。

 そこで


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド !!


 地鳴りが轟いた。

 それは村の端から彼へと近づき、そして、すぐにその姿を現した。

 珍獣カラバの集団。さらにその先頭を、ジュウが猛進していた。

 彼の両手には、黄金色の木の皮が握られている。

 それらは管理人(ラカス)の正面数十メートル先から近づいてきている。ジュウは十頭のカラバに追われながら、歯をむき出しに笑ってみせた。

 カラバ達の不機嫌の原因はただの空腹だった。

 いつもの餌やりの時間に、この騒動が原因で飼育係が来なかったのが原因だった。ジュウが小屋の扉を破壊し、餌をこれみよがしに見せ付けただけで、カラバ達の興奮は最高潮に跳ね上がったのだ。

 このまま接近を許せば、管理人(ラカス)は確実に、彼らの荒々しい波に巻き込まれる。


「面白ぇ………面白ぇぜテンパ野郎 !!」


 ジュウの笑みに応じて、邪悪な笑みを浮べる管理人(ラカス)。右手を高く掲げると、乱雑に飛び交っていた炎の残骸が、カラバやジュウに向かい、集中砲火を始めた。

 しかし、それはほぼ意味を成さなかった。


「………… !!」


 真正面からの攻撃が、ジュウにとって幸いだった。

 ジュウは木の皮を投げ捨てて上空高く飛び上がり、見事な回避を成功。カラバ達は自慢の前歯を回転させ、向かい来る残骸を破壊した。鉄の硬度であるカナリ木であろうと、彼らの牙(丸鋸)にかかればなんら問題なかった。

 さらに、ふりかかる火の粉を、その牙による回転の風圧で消し去った。多少の接触も、何体かのカラバをひるませるだけで、彼らの屈強な体に大したダメージを与えられない。壊され、また火を消された残骸はポトリとその場に落ち、踏み潰されていく。

 驚愕に目を剥ける管理人(ラカス)。すでにカラバは、目前数メートルまで接近していた。

 彼らの視界から餌は消えたが、『車は急には止まれない』。さながら闘牛にごとく、興奮しながら突撃を続けていた。

 ただし、彼はいき過ぎた動揺はしなかった。


「おらぁぁ!」


 荒々しい掛け声と共に、両腕から大量の火炎を珍獣達に向けて放射した。

 カラバ達は慌てて蹄を地面に叩きつけて急停止。グォォォ!と鳴き声を上げて火から逃れようと暴れまわった。

 管理人(ラカス)を中心に、珍獣達は火の海に飲みこまれる。

 しかし、その中に、ジュウの姿はなかった。


「 !?……あいつ。どこ行きやがった !?」


 管理人ラカスは周囲を見回す。上空を跳んで、辺りに着地しているはずとの見解だった。

 すると、彼の背後。

 暴れまわる一頭のカラバの影から、ジュウが勢いよく姿を現した。


「うおおおおああああ!!」

「…………!!」


 計算したわけではなかった。

 ただジュウは本能のまま行動し、結果、管理人(ラカス)の死角を突く形で、虚を突いた攻撃を仕掛けることに成功した。

 一瞬遅れて振り向くが、もう対処できるタイミングではなかった。

 拳を大きく振り上げるジュウ。その拳が、管理人(ラカス)の腹にぶち当たった。

 しかし、

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「!!……………!?!!」


 ジュウは絶句した。

 腹を殴ったその姿勢のまま、彼はあまりの衝撃現象を目の当たりにして、しばらく動けなかった。

 否。結果的に、腹は殴っていない。



 ジュウの拳は、管理人(ラカス)のメラメラと燃える腹を突き抜けていた。



「…………!! !?」


 管理人(ラカス)の邪悪で、純粋で、幼稚な笑みが周囲の炎によって照らし出される。

 口角が最大限まで伸びきった笑み。彼にダメージはない。何事もなかったかのように突っ立っていた。

 むしろ、その腹の炎によって、ジュウの腕が焼かれ始めていた。


「あぁぁあ。これ気持ちわりぃから、なるべく避けたかったんだけどなぁ」


 不満的なセリフを吐きながら、右手で長い後ろ髪を掻く。

 そして、その笑みは崩れない。


「あ熱っ!!」


 ジュウが軽い悲鳴を上げて、腕を素早く引き抜く。直後、腹の炎は縮小し始め、元の肉体と服がその後に続いて構築されていく。

 戸惑いを隠せないジュウを目の前に、管理人(ラカス)はカッカッカ!と高らかに笑う。

 そして、言い放った。


「ワリぃな。実はオレ、人間じゃねぇんだ」

「………… !?」


 愕然とするジュウ。

 直後、管理人(ラカス)は右腕を巨大な炎に変え、ジュウの胴をわし掴みにした。

 ジュウの皮膚がチリチリと音を立てて焦げる。


「ぐぅああああ!」


 痛々しい悲鳴をあげるジュウ。管理人(ラカス)が振りかぶり、乱暴に空中へ投げ上げた。

 投射軌道を描き、村の中央へと落ちる。

 ジュウはとっさに両手を地面に叩きつけて衝撃を和らげる。着地点に小さなクレーターができた。


「………っ!」


 ジュウは苦痛に顔をしかめた。

 腕や胴体には痛々しい火傷があり、ベストの袖も真っ黒に焼け焦げていた。

 そして、再び管理人(ラカス)と対峙した。彼はジュウを見て、ニヤリと笑った。


「オレは炎だ。物理攻撃は効かねぇのさ」


 そう言い放つ。

 その時、いまだ暴れ狂うカラバが彼めがけて突進してきた。

 ところが、直撃の瞬間。管理人(ラカス)の首から下が炎と化し、モトバロがその中を通り抜けた。カラバが困惑し、後ろを振り向く動作を見せる。

 管理人(ラカス)の表情にはなんの変化もなかった。通過直後、体と服が元通り再構築されるのみだった。

 彼は確かに人間ではなかった。

 先刻から、彼は炎の弾を撃ちだしたり、火炎放射のように炎を吹き出していたが、それは炎を生み出していた訳ではなかった。

 生み出していたのは自分自身。つまり、管理人(ラカス)自体が炎だったのである。


「カッカッカ! さぁて。今度は何して遊ぶ?」


 彼は悪意をもって、楽しんでいた。

 その気になれば殺せるところを、じわじわといたぶり尽くすつもりである。


ザッ、ザッ、ザッ。


 ゆっくりと、確実に歩を進める。周りを炎に囲まれていようが、関係なかった。

 彼自身が炎だ。焼かれるはずもなく、ただ漫然とジュウとの距離を縮めていく。

 ジュウは戦慄する。

 敵は炎。物理攻撃は効かない。生身の人間で勝てる相手ではなかった。

 それでも、彼の闘志は消えない。辺りをキョロキョロと見回し、身の回りの、打開できる道具を探した。

 そして見つけた。


「……… !!」


 一点を凝視するジュウ。その直後の、彼の行動は速かった。

 一目散に、そこに向かって駆けだした。途中、管理人(ラカス)が乱雑に飛ばした炎の残骸のひとつである、倉庫の支柱の一部と思われる竹のような材質の円筒を拾った。

 ちょうど松明のような形で、先端に火が灯っていた。


「? 何する気だぁ? アイツ……」


 あえてその後を管理人(ラカス)は追わない。不思議そうに首を傾げる。

 直後、理解した。

 ジュウが向かう先は、村の入り口の木の横。水晶体と機械が融合したような、水上オートバイにも似た珍妙なバイクが、そこに直立していた。

 フレイムビート

 管理人(ラカス)の乗り物である。

 ジュウが、そのバイクの座席に飛び乗る。といっても、およそまたがるという形ではなく、座席に両手両足で抱きつく形である。


「たしか、ここに火つけるんだよな!?」


 ジュウが腕を伸ばし、筒の先の火をペダルにつけた。

 すると、火があっというまに水晶体の中に吸い込まれ、赤く輝き始めた。

 中でメラメラと燃える光。キィィンと甲高い音が全体から鳴り響く。タイヤが赤い熱を帯びて、浮き始めた。


「!………あのガキィ !!」


 笑顔から一転。管理人(ラカス)は眉間にシワを寄せて激しく怒り、足を炎に変えて、ジェット噴射のごとく急接近した。

 それと同時に、ジュウが見様見真似でハンドルを握り、前に構える。直後、フレイムビートは初動もなく、急スピードで発進した。


「 !! うおおおおぉぉぉぉ !!」


 およそ時速50キロ。樹木が乱立する狭い道を、その珍妙なバイクは強引に突き進む。完全な自動制御によって、斜めに、もしくは真横に、物理法則を無視した動きでもって障害物を回避していた。

 ジュウはただ、バイクに振り回されていた。ハンドルにしがみついて、体を宙に浮かせている。


「待ちやがれ! テンパ野郎 !! よくもオレのフレイムビートを!」


 勝手に乗られたのがよほど頭にきているのか。血管を額に浮べて怒る管理人(ラカス)

 足どころか、全身を真っ赤に燃え上がらせて、飛んで追いかける。暗闇の中、自分の火の光をたよりに、木々をスルスルとすりぬけながらも、猛烈な速さで追いかけた。

 月の光も木々にさえぎられ、辺りは真っ暗な闇。しかも、いつ木や石に激突するかもわからない。後ろからみるみるとその距離を縮めて追いかける敵がいる極限状態。

 そしてついに、管理人(ラカス)がバイクの真後ろまで接近した。

 ニヤリと口角をひきつらせて微笑む。右腕をふりかぶると同時に炎化。腕が先刻の倍以上の大きさに膨れ上がった。

 目標はジュウ。その高熱の炎を叩きつけるつもりである。


「ブっ焦がしてやる……!」


 絶体絶命。しかしそこで、

 ジュウは白い歯を覘かせて微笑む。


「これを、待ってたぜ!」


 するとジュウは、ハンドルから左手を離し、バイク前面にあるボタンを押した。

 直後、バイクのある部品が作動する。

 黒いドーム型の箱。名称『楽園(プリズン)

 ジュウとボナを、ラマッカ族の村へ運ぶ際に使ったものである。ジュウはその動作する様子をしっかり記憶していた。


「 !!……しまっ-----」


 気づいた時にはもう遅かった。

 管理人(ラカス)の体は細長く歪み、頭からドームの頂点へ。掃除機のごとく、いとも簡単にその体は吸い込まれた。

 続いてジュウは、右手でハンドルをしっかり掴みつつ。強引に体を捻じ曲げて、走行するバイクに横立ちする。靴が地面に接触し、ガリガリと土ぼこりを巻き上げながらも、左手をバイクの底面にもぐりこませた。瞬時に右手をハンドルから座席へと切り替える。

 バイクを横から抱く形。小さい腕を精一杯伸ばして抱えた。

 そして


「ンぐぎがががががあああぁぁぁぁぁ !!」


 顔を真っ赤に、頭に血管を浮かび上がらせながら、腕と足に力を入れる。すでに砂埃ではなく、土や泥の固まりが足元から弾き跳ばされていた。

 その状態が十秒程続くと、徐々にフレイムビートのスピードが落ち始める。そして、地面との距離を一定に保ち続けていた鉄のタイヤが、さらに浮かび始めた。

 ジュウが横抱きに、バイクを持ち上げた。

 およそ重量100キロは越えるだろう大型のバイク。腰を反らせつつ、その機体を上半身に預ける。

 そして


「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ !!」


 その姿勢から腰を捻じ曲げて


「ああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ !!」



 腕に渾身の力を込めて、バイクを上空へと投げ飛ばした。



 回転しつつ、ぐんぐんと上昇するバイク。その姿がどんどん小さく映る。

 やがて下降。木々の向こうへと姿を消した。


「はぁ………はぁ……」


 息切れするジュウ。その場にしりもちをついてへたりこんだ。


「や、やった…………!」


 フゥ、と安堵の息をついた。

 少なくとも1キロメートル以上は投げ飛ばしたはず。管理人(ラカス)が脱出して、バイクに乗って戻ってきたとしても、その間に祠の中に侵入することは十分可能である。

 もっとも、ナニワ達が大蛇にやられる前に到達できるという保障はなかったが、とりあえず目の前の障害は取り除いた。

 そう、思えた。


「さて、急がなきゃな……」


 ナニワ達の身の危険を案じつつ、ジュウは立ち上がり、村へと戻ろうとした。

 だが、その時。

 背後に熱気を感じた。

 メラメラとなにかが、音をたてて燃えているのがわかった。

 最悪の予感。それが、次の一言で証明された。



「やってくれたなぁ。おい」



 全身を炎で纏った管理人(ラカス)が、ジュウの背後で佇んでいた。



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