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大天使、悪魔のお見合いを阻止せよ!?〜地獄の王がお見合いを断ろうとしたら、大天使に婚約者が爆誕!〜  作者: 久茉莉himari


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5/10

【5】千年前の常識では、結婚前提は婚約者らしい〜大天使、聖なる務め確定です〜

そして一週間後。


セレニス州の空は、穏やかな青に澄み渡っていた。

何事も起きていない――かのように。


その静けさを破るように、

ルチアーノの泊まるヴィラへ、地獄からお付きの一人が現れた。


無言で差し出されたのは、一通の封筒。


深紅のシルクの布に丁寧に包まれ、

その中央には――

血のように濃い色をした蝋印が、重々しく押されていた。


ルチアーノはそれを一目見るなり、

パパッと慌てて封筒を再び布で包み直す。


次の瞬間。


「いだだだだっ……!

痛いであります!ロクシー先生!!」


ロクシーが、容赦なくルチアーノの耳を引っ張っていた。


「だったら、さっさと開けろ!」


「で、でも〜……!

もし、この蝋印に魔術が施されていたら!?

俺様は強制的に結婚させられてしまいます……!

顔も知らない相手と……!」


「だーかーらー!」


ロクシーは、ペーパーナイフをテーブルに置いた。


カツン。


乾いた音に、ルチアーノは椅子からぴょんと跳ねる。


「あのね……。

私たちは、なぜセレニス州にいるんだっけ?」


ロクシーは指を一本立てる。


「ここは魔術無効。

あんたのお父さんがどんな細工をしていようが、発動しないの。

……理解した?」


そして、にっこり笑ったまま告げる。


「5秒以内に開けないなら、この計画はここで終了。

残金は返す。

はい、いくよ――」


「ちょ、ちょっと待っ……!」


「5」


「分かりました〜!!」


ルチアーノは情けない声を上げ、

慌ててペーパーナイフを取り、封を切った。


中に入っていたのは、

古式ゆかしい便箋が一枚――それだけだった。


そこには、簡潔な文字で、こう記されていた。


『我が最愛の息子、ルチアーノよ。

 そなたの親友と、その婚約者に会えるのならば、

 セレニス州に再び行くことも、やぶさかではない。』


沈黙。


「……婚約者?」


ルチアーノとロクシーの声が、同時に重なった。





「……婚約者!?

私が……!?アンジュさまの……!?」


思わず息を呑み、ルシアンは天を仰いだ。


「……なんと、恐れ多い……!!」


――その一時間後。


ルチアーノのヴィラのメインリビングには、

普段の冷静沈着さも、大天使としての威厳も、すでに影も形もなかった……

真っ赤な顔のまま頭を抱え、ソファに沈み込むルシアンがいる。


ルチアーノは脂汗を浮かべつつも、

いつもの調子を装った笑顔で声をかけた。


「ズッ友❤️

そんなに緊張すんなって!

ルシアンなら、完璧に演じられるって!なっ!」


その軽い声とは裏腹に、指先は落ち着きなく動いている。


「……いや、無理だ……」


地を這うような低い声。


ルシアンの言葉に、ルチアーノは慌てて背中を揺さぶった。


「ルシアン!頼むって〜!

もうロクシー先生は、その気なんだよ!

脚本作りに入っちゃってるんだって!」


一瞬、言葉を切り、

そして必死に続ける。


「ここでルシアンが降りたら……

ロクシー先生も降りるんだよ!

あの人はさ、一度降りたら絶対に引き返さない!

そうなったら……」


声が、ほんの少しだけ小さくなる。


「……俺様は、強制的に結婚確定……!」


そこまで一気に言ったあと、

ルチアーノは、ぽつりと付け足した。


「俺様はさ……

ルシアンみたいな初恋を、してみたいんだ……」


その言葉に、ルシアンがゆっくりと視線を向ける。


「……ルチアーノ……」


ルチアーノは目を伏せ、

手に持った特大クラッカーの紐を、もじもじと弄っていた。


ルシアンは小さく息を吐く。


「……アンジュさまは、何と?」


その問いに――


ルチアーノは、がばっと顔を上げた。


さっきまでの沈んだ表情は消え、

妙に輝いた目で叫ぶ。


「これを見ろーーー!!」


勢いよく声を張り上げながら、

テレビのリモコンを叩きつけるように押した。





そこに映し出されたのは、アンジュの顔のアップだった。


ルシアンは反射的に立ち上がり、テレビの前に跪く。


画面の中のアンジュは、チョコレートラテを一口飲むと、

少し考えるように首を傾げ、すぐに晴れやかな声で言い切った。


「婚約者? なるほど!

悪魔の王だっただけはあるな!

“結婚を前提とした恋人”であれば、婚約者で間違いは無い!

やろう!」


その清らかな笑顔は、まさに大天使ガブリエル。

どこか幼さを残した神々しい美しさに、

ルシアンは一瞬、言葉を失い――思わず見惚れていた。


そして、その背後。


ルチアーノが、音もなくルシアンの後ろに回り込み、

肩越しに、まるで確認するように低く囁く。


「……ルシアン。

やってくれるよな?」


ルシアンは、ゆっくりと胸に手を当てる。


祈るように目を伏せ、

次の瞬間、覚悟を宿した瞳で力強く頷いた。


「これは……聖なる務めだ。

私は――やり遂げよう」





セレニス・ベイのお洒落なカフェ。


ロクシーは地ビールに口を付けると、グラスを軽く傾け――

口元だけで、ニヤリと笑った。


その目は、24歳の女子のものではない。

盤面を確認し終えた軍師の眼だった。


「ルチアーノ……あんた、やれば出来るじゃん。

そのタイミングで、よくアンジュちゃんのビデオを流したわね」


まずは第一段階、成功。

――そんな声なき呟きが、確かにその表情に浮かんでいた。


ルチアーノは背筋を正し、弟子のように深く頭を下げる。

そして赤ワインのグラスを掲げ、誇らしげに言った。


「ありがたきお言葉……!

ロクシー先生の脚本と演出、毎回本当にお見事であります!」


「でもさ」


ロクシーはグラスを置き、肩をすくめる。


「あんたの本音が漏れたから、

ルシアンの心が開いたんだと思うよ?

やっぱり、そこはあんたのお手柄」


「いえいえ!」


ルチアーノは照れたように笑い、即座に明言した。


「ルシアンが迷ったら、

“心を開いた瞬間に、あのビデオを流せ”と

教えて下さったのはロクシー先生です!

ラブ❤️」


二人は顔を見合わせ、ぐふふ、と笑い合う。


だが――


二人は知らない。


そのやり取りの一部始終を、

イレイナが、水晶玉越しに静かに見つめていることを。

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

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