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大天使、悪魔のお見合いを阻止せよ!?〜地獄の王がお見合いを断ろうとしたら、大天使に婚約者が爆誕!〜  作者: 久茉莉himari


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3/7

【3】作戦会議はセレニス州で。〜悪魔はズッ友を紹介し、大天使は結婚前提に発展しました〜

そこはセレニス州でも最高級のヴィラだ。


一棟丸ごと貸し切られた邸宅は、インフィニティプールを望む造りになっており、

夕暮れの光がガラス越しに静かに差し込んでいる。


その豪奢なリビングのソファには、ロクシーとアンジュが並んで座り、

そして、そのアンジュの真横――半歩後ろに、ルシアンが立っていた。


そして――

大理石の床の上。


そこには、正座をしたルチアーノの姿があった。


あまりにも場違いな光景に、室内の空気は奇妙な静けさを帯びている。


やがて、ルシアンが静かに口を開いた。


「ロクシー、君の話は理解した。

君はルチアーノの恋人の代役をし、

ルチアーノの父親からの見合い話をかわす脚本を書く仕事の依頼を受けた。

だが――なぜ私を呼んだのだ?」


ロクシーの視線が、床に正座するルチアーノへと突き刺さる。

その目には、はっきりと殺気が宿っていた。


「それはね……!」


ロクシーは身を乗り出す。


「私の脚本では、まずルチアーノの父親を“動かす”ところから始めたの!

つまり!

鶴の一声で何でも思い通りになってきた父親を動かす!

主導権を、こっちで握るための第一歩よ!」


ルシアンが、低く頷いた。


「理にかなっているな」


「でしょ!?

だから、ここ――魔術無効のセレニス州に呼びつけた!

ここなら、ルチアーノの父親も悪魔の力を発揮できない!

人間の私と、完全に同じ立場になるわけ!」


アンジュは苺ラテを一口飲むと、ぱっと笑顔になる。


「さすが、ロクシー!

頭が良い!」


ロクシーはアンジュに向かって、パチンとウィンクした。


「ありがとう、アンジュちゃん!

それでね……このヴィラ一棟を貸し切って、“午後のお茶会”を開いたの。

父親のお付きも、十人に限定したわ。

まずは、ここで父親の本気度を見る!」


ロクシーは指を立てる。


「ルチアーノから招待状を送って、

父親がモナコからセレニス州まで来るかどうか……。

そこが最初の関門だったの」


一拍。


ロクシーの口元が、ゆっくりと吊り上がる。


「――すぐに承諾の返事が来たわ。

第一段階は成功。

父親は、本気でルチアーノと私を恋人だと信じてる。

そして……本気で結婚させたいと思ってる」


ルチアーノの肩が、わずかに震えた。


「私はね、

完璧なテーブルマナーに、

イギリス英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語……

それにラテン語まで、イレイナに頼んで頭に叩き込んだ!」


ロクシーは肩をすくめる。


「代金は当然、ルチアーノ持ち。

それなのに……」


ロクシーはスッとスマホを操作した。


次の瞬間――

ヴィラの大型テレビ脇に設置された高機能スピーカーから、

低く、重みのある声が響き渡る。


イギリス訛りの、威厳に満ちた声。


「ロクシー殿……。

ルチアーノとの出会いは?」


続いて、落ち着き払ったロクシーの声。


「友人を交えまして」


「ほう……その友人というのは?」


――その瞬間だった。


父親の声に被せるように、

場の空気を切り裂く大声が響いた。


「俺様のズッ友……!

親友のルシアンなのです!

本当にカッコいいし〜!

し・か・も! 純情!

絶賛、初恋中でございます❤️」


一拍。


空気が、凍りつく。


次に響いたのは、

さらに低く、鋭さを増した父親の声だった。


「ほう……。

私もその、お前の“親友”に、ぜひ会ってみたいものよのう……。

ルチアーノよ。

まさか――その親友も、独り身なのか?」


ガタガタ、と椅子の鳴る音。


「も、も、も、もちろん!

初恋成就中ではありますが!

ほぼ恋人であります!!」


プツリ、と音が切れた。


静寂。


広いヴィラに、耳鳴りがするほどの沈黙が落ちる。


その沈黙を破ったのは――アンジュだった。


「ルチアーノ。

それで、ルシアンを呼んだのだな!」


アンジュは勢いよく立ち上がり、ルシアンを見上げる。


「ルシアンよ!

ルチアーノの父親に、会ってやれ!」


「……はっ!?」


ルシアンは思わず息を呑み、アンジュを見つめた。


アンジュの青い瞳は、宝石のように輝いている。


「つまり!

ルチアーノの父親は、お前に会えば納得する。

お前は――大天使として振る舞えば良い!」


ルシアンの眉間に、必死に抑え込む皺が寄る。


「アンジュさま……。

私一人では、意味が無いのです」


「なぜだ?」


アンジュの瞳には、純粋な疑問しか浮かんでいない。


「……つまり……その……」


言葉に詰まった、その時。


ロクシーが、すっくと立ち上がった。


ツカツカと歩き、ルチアーノの元へ行くと、

その襟首を乱暴に掴み上げる。


「………ヒィッ……!」


ルチアーノが小さく悲鳴を上げる。


アンジュが目を丸くした。


「ロクシー?

何をしておる?」


「アンジュちゃん!

こいつのせいでね……!」


ロクシーはルチアーノを揺さぶる。


「ルシアンには、“伴侶候補”が必要になったの!!

こいつが、いらんことをペラペラ喋るから!

だから――お願い!」


「うむ!」


アンジュは、迷いなく頷いた。


ロクシーが叫ぶ。


「ルシアンの……

結婚を前提とした恋人役を、やってくれない!?」


「……結婚?

……恋人?」


アンジュは、ゆっくりと視線をルシアンへ戻す。


その瞬間。


ルシアンの顔は、信じられないほど真っ赤に染まり――

次の瞬間、何も言わずに走り出した。


三人が――

襟首を掴まれたままのルチアーノまで――

呆然と見守る中、


ルシアンはインフィニティプールへ、

完璧なフォームで飛び込んでいく。


静まり返ったヴィラに、

ただ、バタフライの水音だけが響き渡った。

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

明日も17時更新です☆

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