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大天使、悪魔のお見合いを阻止せよ!?〜地獄の王がお見合いを断ろうとしたら、大天使に婚約者が爆誕!〜  作者: 久茉莉himari


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12/15

【12】加工された俺様が世界に送られた件について。〜逃げ場はないけど、悪魔は天使と秘密会議します〜

それから一週間。


ルチアーノのダイエット計画は、

容赦なく――そして淡々と進んでいた。


ルシアンはロクシーの提示するメニューを黙々とこなし、

ルチアーノの補佐まで、当たり前のように引き受けている。


アンジュも、その光景を見ては瞳を輝かせ――


「素晴らしいぞ! 二人とも!

ロクシーの指示も、正確だ!」


と、甘いスイーツを幸せそうに頬張りながら、

時にマカロン片手にプールサイドまでやって来て応援していた。


しかし。


一週間が経っても、

ルチアーノの体重は――2〜3キロしか減らなかった。


数字は減っている。

だが、それは努力量に対して、あまりにも誤差だった。


それでもロクシーは怯まない。


感情を挟まず、

ただ黙々と実行させるのみ。


そんな午後。


午前の競歩ノルマを終え、

昼食を取るために帰って来たルチアーノは、

いつものようにヴィラの玄関で倒れていた。


その時――


ふわり、と風を感じた。


次の瞬間、

視界の端に、豪奢なドレスの裾が映る。


ルチアーノは、見ないふりをした。


だが――

そんな小細工が通用する相手ではない。


イレイナだった。


彼女は、凍りつくような声で言い放つ。


「立ちなさい。

それからシャワーを浴びて。

すぐに、リビングに来ること」


拒否権は存在しない。





シャワーを浴びてもなお、ヘロヘロのルチアーノがリビングへ入ると――


イレイナ。

ロクシー。

アンジュ。

ルシアン。


四人はそれぞれ、ソファに落ち着いていた。


ロクシーが、慣れた手つきでトレイを差し出す。


「はい。昼食」


そこに乗っていたのは、

もう見慣れ過ぎたメニューだった。


白い皿に盛られたサラダ。

湯がいただけの鶏のササミ。

整然と並べられた、ゆで卵が五個。

そして運動後の唯一のご褒美――スポーツ飲料。


ルチアーノは、黙ってスポーツ飲料をすすった。


ズズーッ。


その音だけが、リビングに響く。


やがて、ルチアーノは意を決したように顔を上げる。


「イレイナがいると、リラックスしてメシも食えない!

話があるなら、先に話してくれよ!」


イレイナは紅茶のカップをソーサーに戻し、

音もなくテーブルへ置く。


そして、すっとルチアーノの前に、

二つ折りのカードを置いた。


「あんたの父親から、

私の“とある会社”に届いた――舞踏会の予告状よ」


一拍。


「予告状そのものは、別にいいわ。

各国の王族や貴族を招待して舞踏会を開くなら、

予定調整は不可欠だもの。


本来なら、最低でも一年前には送るべきところだけど――」


イレイナの瞳が、ゆっくりと金色に燃え上がる。


「……内容が、ね」


ルチアーノが、震える声で呟く。


「……お父様が、無礼な予告状を送ってるのか……?」


「無礼……ではないわ」


イレイナの声は静かだった。

だからこそ、余計に怖い。


ルチアーノは、縋るように叫ぶ。


「……ルシアン!!

お前は見たのか!?

アンジュちゃんは!?」


ルシアンは淡々と答える。


「私は見た。

だが……アンジュさまには、見せられない」


ルチアーノの喉が、ごくり、と鳴った。


「……な、なんで!?

アンジュちゃんは、見ちゃいけないやつなのか……!?」


アンジュはキャラメルマキアートを一口飲み、

にっこりと笑う。


「大丈夫だ、ルチアーノ!

私にサプライズしてくれるのだろう?」


――嘘だ。

絶対に見せられない内容なんだ……!!


ルチアーノがそう確信した、その瞬間。


ロクシーの鋭い声が飛んだ。


「いいから、見ろ!」





ルチアーノが、震える指でカードを開くと――


右側には、

イレイナの言う通り、


「我が息子ルチアーノと婚約者のお披露目の舞踏会を、

一ヶ月後に開くこととなった」


という、実に事務的で簡潔な文面が記されていた。


――そこまでは、まだ良かった。


問題は、左側だった。


そこには、

ルチアーノとロクシーが並んで写った写真が印刷されていた。


否。

ただの写真ではない。


ルチアーノが、写真を見た瞬間――


「……俺様が、

ジャパンのプリントシールになってる……!!」


悲鳴にも似た叫びが、リビングに響いた。


「そういうことよ」


イレイナの声は、凍るほど静かだった。


「お前の父親は、ルシアンに会って、

“見た目まで寄せる必要がある”と判断した。


だから、写真を加工したの。

ルシアンと、あんたを……」


イレイナは、淡々と続ける。


「よく見なさい。

二人が、混ざっているでしょう?」


ルチアーノは、再びカードに視線を落とす。


そこに写る自分は、

確かに自分でありながら――

輪郭、雰囲気、佇まいのすべてが、

どこかルシアンに“寄せられて”いた。


「……どうするもこうするも……」


ルチアーノは、力なく叫ぶ。


「俺様に、出来ることなんて無いだろ……!?」


その瞬間。


「――ある」


ロクシーの、鋭い声が空気を切った。


「まず、あんたのダイエット目標を、

5キロから10キロに引き上げる」


ルチアーノが、目を見開く。


「……じゅっ、10キロ……!?」


ロクシーは指を一本立てる。


「体重が落ちれば、顔はメイクでどうにでもなる。

10キロ落とせば、この加工との差異も誤魔化せる。


いい?

あんたのその顔とスタイルは、

もう世界中の王侯貴族やセレブに送られてる」


逃げ道を、静かに塞ぐ。


「私は、これからあんたのダイエットを、

根本から見直す」


一拍。


「まず、ジムに行って」


「……ジ、ジム……?」


呆然と呟くルチアーノに、

ロクシーの口元が、ゆっくりと吊り上がる。


「このヴィラには、スポーツジムが併設されてるの。

メニューは、もうルシアンに渡してある」


そして、容赦なく告げた。


「さあ。

行きなさい」


「……で、でも……!

俺様、まだ昼ごはんも……!」


その言葉を遮るように、

いつの間にかタッパーを手にしたルシアンが、

淡々と言った。


「ルチアーノ。

昼食は、ジムで取ろう。


ロクシーの筋力トレーニングメニューでは、

一気には食べられない」


完全に言葉を失うルチアーノ。


その横で、

アンジュが美しく、無垢な笑顔を浮かべる。


「ルチアーノ。

たとえ父親が暴走したとしても、

お前の努力は、決して無駄にはならない。


私も、応援に行くからな!」


そして、少し首を傾げて、続けた。


「それで――

その写真は、私は、いつ見せてもらえるのだ?」


ルチアーノは、

その場に、パタンと倒れた。





ルチアーノが目を覚ますと、

固いマットレスの感触が背中に伝わってきた。


ゆっくりと周囲を見渡す。


――スポーツジム。


天井の照明。

器具の金属音。

そして、空気に混じる、微かなゴムの匂い。


ルシアンが、黙々とトレーニング器具を調整していた。


「……ルシアン……?」


掠れた声に、

ルシアンが静かに視線を向ける。


「ルチアーノ、起きたか。

では、トレーニングを始めよう」


「お前なあ……!

せめて“大丈夫か?”くらい言えよ!」


即座に返ってきた答えは、あまりにも冷静だった。


「なぜ?

君は病気ではない。

精神が限界を迎え、心を守るために一時的に失神しただけだ」


淡々と告げるその姿。


午後の光を受けて立つルシアンは、

どこにでも売っていそうな安物のジャージを――

安物だと分かるはずなのに、

不思議なほど隙なく着こなしていた。


無駄がなく、

誇示もなく、

ただ“そこに在る”だけで成立している。


ルチアーノの脳裏に、

アンジュの澄んだ笑顔と、

今、目の前にいるルシアンの姿が重なる。


ピキーン……!


雷に打たれたような感覚に、

ルチアーノはガハッと身を起こした。


「……分かった!分かったぞ!

俺様のダイエットが上手くいかない理由が!!」


「何だ?」


ルシアンが静かに近づく。


ルチアーノは顔を真っ赤にしながら、

勢い良く叫んだ。


「リラックスだ……!!

ただ頑張るだけじゃ、

俺様みたいなリリカルな感性の持ち主は、

最大限の力を発揮できないんだ……!!


そう!つまり!」


「つまり?」


無表情のまま、律儀に続きを促す。


「……香水!

ダイエット用の香水が必要だ……!!

俺様としたことが……!


“天才は努力する者に勝てず、

努力する者は楽しむ者に勝てない”って……

孔子だって言ってるだろ!?


努力を楽しまなくちゃ、勝てないんだよ……!!」


ルシアンが、真剣に頷く。


「理にかなっているな」


「だろ!?

さすが俺様のズッ友❤️

協力してくれ!!」


そうして――


誰にも知られぬまま、

トレーニングルームの片隅で。


悪魔と天使の、秘密会議が始まった。

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