表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大天使、悪魔のお見合いを阻止せよ!?〜地獄の王がお見合いを断ろうとしたら、大天使に婚約者が爆誕!〜  作者: 久茉莉himari


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/14

【10】舞踏会より先に、俺様が死にそうなんだが。〜悪魔より怖い脚本家、オレンジの囚人色まで制する〜

そうして、夕方四時。


夕陽に照らされるヴィラのリビングで、

ルシアンは一人、静かに聖書を暗唱していた。


その時――


玄関の方から、何かが崩れ落ちるような鈍い音が響く。


ルシアンが視線を向けると、

そこには、床に倒れ込むようにして入って来たルチアーノの姿があった。


その姿は――

イレイナのダンス練習場で見た、あの黒いスーツ姿とは似ても似つかない。


全身オレンジ色。

ぴちぴちのスポーツウェアに身を包み、

普段は綺麗に撫でつけられている黒髪も、輪ゴムで雑に一つにまとめられている。


そして何より――

頭のてっぺんから爪先まで、

まるで煤を被ったかのように、汚れていた。


「……ルチアーノ。大丈夫か?」


ルシアンの落ち着いた声に、

ルチアーノは、うつ伏せのまま、ぎろりと顔だけを上げる。


「……大丈夫に見えるか……?

水をくれ……」


掠れ切った声。


ルシアンは何も言わず、

さっと冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、手渡す。


ルチアーノは倒れたまま、

それを器用に受け取ると、ごくごくと喉を鳴らして飲み干した。


「……はぁ……」


深く息を吐き、

天井を仰いだまま、ぽつりと呟く。


「……俺様……

舞踏会の前に……天国に行くかもしれない……」


その言葉に、

ルシアンは一拍置いてから、淡々と答えた。


「君は悪魔だ。

天国には行けない」


「そーゆー意味じゃないのッ!!」


ルチアーノが、掠れた声で絶叫する。


「ロクシー先生……!

あの人、悪魔より悪魔だぜ……!」


震える指で、

自分のオレンジ色のスポーツウェアを指差す。


「この服だってな……ちゃんと理由があるんだよ……。

ロクシー先生、にっこり笑って、こう言ったんだ……。


『まず、その肉体を直視できるでしょ?

それに、あんたが競歩してる間中――

そのピチピチのボディラインを、ずーっと他人に見られる!

やる気、出るよね?』


……って……!」


一瞬、息を整え、

さらに声を落とす。


「それに……

セレニス州じゃ、囚人はオレンジ色の繋ぎを着るんだってさ……」


そして、震える手でスマホを取り出し、

ルシアンの方へ画面を向けた。


「しかも……昼食は、これっぽっち……!」


ルシアンは画面を一瞥し、

一秒だけ考えてから、静かに言った。


「……なるほど。

栄養バランスは取れている」


「……ルシアン……!!

それ、全然慰めになってない……!」


ルチアーノは、床に拳を落とす。


「しかーも!!

俺様がロクシー先生の設定した目標分数を、

一秒でもオーバーしてみろ……!」


声が、震える。


「ハーレーダビッドソンを、

ギリギリまで俺様に近づけて……

エンジンを、フルスロットルにするんだ……ッ!

歩いてても、止まってても……

行動すべてで、圧を掛けてくる……!!」


ルシアンは、冷静に告げた。


「だがロクシーは、

契約通り、君のお見合いを断るために、

全力で協力しているのではないか?」


その言葉に、

ルチアーノは即座に反論する。


「限度ってもんがあるだろ!?

怖すぎるんだよ!!

正真正銘、悪魔オブ悪魔だ……!!


お父様より怖い……!!」


一拍。


そして、声を落とす。


「……それに……

今夜から俺様は、

ロクシー先生とアンジュちゃんのヴィラに泊まるんだ……」


ルシアンの眉が、わずかに上がる。


「……なぜだ?」


「決まってるだろ!!

俺様を、24時間監視するんだよ!!」


半ば泣き声で続ける。


「競歩で足りなかった消費カロリーは、

プールで消費してもらうってさ……!


ルシアン……!

せめて寝る前くらい……

ズッ友とおしゃべりして、リラックスしたい……!


頼むよ……ロクシー先生に言ってくれよ……」


一瞬、声を潜め、

周囲を気にするように囁く。


「あ……お前……

セレニス州でも、ほんの少しだけ恩寵を使えるよな……?

それを使って……」


――その瞬間。


カチ、と低い電子音。


テレビの両脇に設置された高機能スピーカーが、

静かに起動する。


「……それを使って、どうするって?」


低く、

凄みを孕んだ声。


ルチアーノは反射的に跳ね起き、

即座に正座になると、床に額がつきそうな勢いで叫んだ。


「な、何でもございませんッ……!!」





そうして――

ルチアーノは身支度を整え、ロクシーの合図と共に、ルシアンと一緒に、ロクシーとアンジュが泊まる隣のヴィラへ向かった。


ダイニングテーブルには、思わず目を奪われるほど豪華な料理が並んでいる。


ルチアーノが「わーい♪」と声を上げた、その刹那――

ロクシーの鋭い視線が、テーブルの一角へと走った。


そこにあったのは、

白い皿に盛られたサラダと、湯がいただけの鶏のササミ。

そして、彩りという概念を完全に置き去りにした、ゆで卵が五個、整然と並んでいる。


もちろん、ドレッシングなどの調味料は存在しない。


ルチアーノの顔から、すっと血の気が引いた。


すると、アンジュがにっこりと微笑む。


「ルチアーノ!

ロクシーから聞いたぞ。

順調に身体を鍛えているようだな! 素晴らしい!」


必死に笑顔を作り、ルチアーノは頷いた。


「あ、ありがとう……アンジュちゃん……!」


「うむ!」


その無垢で美しい笑顔を見つめていたのは――

ルチアーノだけではなかった。

しかも、それぞれまったく違う温度で。





そうして皆でディナーを終えると、

三十分の短い休憩を挟み、場所はインフィニティプールへ移る。


ルチアーノはクロールで黙々と水を切り、

ビーチソファに腰掛けたロクシーは、タイマーを片手に一瞬も目を逸らさない。


その傍らへ、ルシアンが静かに歩み寄った。


「ロクシー。少し話せるか?」


「いいわよ。でも、簡潔にね」


視線はプールから外れない。


一拍の間の後、ルシアンが口を開いた。


「その……ルチアーノが、こちらのヴィラに泊まる件だが……。

彼は悪魔とはいえ、女性に不埒な真似をする男ではないと理解している。

だが……どうしても、少し気になってしまって……」


「心配?」


言葉を遮られ、ルシアンは迷いなく頷いた。


「そうだ」


するとロクシーは、タイマーを止めることなく言った。


「じゃあさ。

ルシアンもルチアーノの肉体改造に付き合うってことで、

こっちのヴィラに泊まれば?」


一瞬、ルシアンの無表情が僅かに崩れる。


「部屋は余ってるし。

どうせ、あんたも暇でしょ?」


「ロクシー……感謝する!」


ルシアンはそう言って一礼すると、

静かにメインリビングへと戻って行った。


その精悍な後ろ姿を見送りながら、

ロクシーの口元が、ほんの少しだけ上がる。


「……こっちの脚本も、想定通りね」


24歳、ロクシー。

脚本家にして演出家。


その美しくキュートな容姿からは、誰も想像しない。

舞踏会という戦場と大天使の恋を掌で転がす、

21世紀の“ギャル軍師”は、すでに次の一手を描いていた

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

明日も17時更新です☆

Xはこちら→ https://x.com/himari61290

自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪


〈ルシアンとガブリエルをもっと知りたいあなたに…〉


【完結】大天使と“ズッ友”になりたい地獄の王。 〜柄物スーツに一目惚れしてから、すべてが始まった件〜


https://ncode.syosetu.com/n5195lb/


【完結】大天使ガブリエル、地上に爆誕!〜神の命がふんわりすぎて、祈ろうとしたら迷子になりました〜


https://ncode.syosetu.com/n2322lc/


【完結】大天使たち、日本昔話に異世界転生する。〜初恋成就作戦を決行するポンコツ地獄の王に振り回されています〜


https://ncode.syosetu.com/n7024ld/


【完結】大天使ルシアン、最強捜査官になる〜神の沈黙と愛の証明〜


https://ncode.syosetu.com/n5966lg/


【完結】大天使と最強捜査官のクリスマス戦線 〜セレニスに集う者たち、愛か使命か〜


https://ncode.syosetu.com/n9868lk/


【完結】大天使と最強捜査官のクリスマス戦線〜聖夜の余白の物語〜


https://ncode.syosetu.com/n9097lm/


【完結】地上でいちばん可愛い正月旅行〜天使と悪魔も福来たる、温泉・TOKYO・バタフライ〜


https://ncode.syosetu.com/n5279ln/


を読んで頂けるともっと楽しめます(^^)


こちら単体でも大丈夫です☆



\外伝の元ネタはこちら✨/


『最強捜査官』本編 → https://ncode.syosetu.com/n2892lb/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ