表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界リストランテ『ピッコラ』  作者: 黒砂 無糖
腹が減っては戦はできぬ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
81/81

異世界リストランテ『ピッコラ』

最終回です。


「ユージン、今日のオススメは?」


 店に入ってくるなり、慣れた感じでカウンターに座ったのは、セルヴォだ。


「そうだな、今日は『魔豚の角煮』がオススメだ。白飯で食うならうまいぞ」


 マハトが魔王になったことで、魔族達は穏やかな毎日を過ごしているからか、セルヴォも毒が抜けて付き合いやすくなった。


「それ、それにする。後は、いつもので」


 セルヴォは白飯と味噌汁がかなり気に入っている。いつものとは、白飯と味噌汁と小鉢のセットだ。


「はいよ、ご飯は大盛りだ。あと、コレはいつも来てくれるからおまけ」


 俺は、セルヴォの角煮の横に温泉卵をオマケとしてつけてやった。


「マジか、ユージン!いいのか?!」


 セルヴォはキラキラした目で温泉卵を見つめている。


「白飯の上に、角煮とそれ、最高だぞ」


 俺は、ニヤッと笑い、次の客の料理をトレーにセットした。


「リコラ、そろそろ追加でシュクレルートのサラダを作ってくれ」


 リコラは注文を、ピコラにお願いして、キッチンの中に来た。


「シュクレルートのサラダだけでいい?」


 リコラはテキパキと材料を取り出した。


 最近になって、リコラの料理の腕がメキメキ上達している。


「あー、味噌汁も頼もうかな」


 さっき見たら少なくなっていたな……


 リコラが、魔法で手際よくシュクレルートを刻んでいたら


「もしかして、この味噌汁も、リコラが作ったのか?」


 セルヴォが、驚いた顔でリコラを見た。


「そうよ!美味しいでしょ?」


 リコラは、料理が楽しいらしく、俺の料理は全部作れるようになるんだと言っている。


「はぁ……『ピッコラ』は、凄いな」


 セルヴォは感心しながらため息をついた。


「なんだ?なんかあったのか?」


 うちの店を褒めてくれるのは嬉しいが。


「いや、ピコラの野菜や、エリソンの卵、人間の国で大好評だったんだ。ガバルも今じゃトンネル工事の隊長だし……」


 子供達は、それぞれの特性を活かしやりたいことをやっているだけだが、


 ——改めて評価をされると嬉しいな。


「セルヴォはどうなんだ?」


 今じゃ、マハトから食材や工芸品の輸出入を任されているはずだ。


「俺は、ぼちぼちだな。俺は特別な能力はないから、生み出せないな。『ピッコラ』の子供達は尊敬するよ」


 そうは言っても、セルヴォは元は魔王の右手だ。執務能力はずば抜けているはずだ。


「なら、セルヴォはその子供達の能力を、いい感じに守ってやってくれ」


 今なら、セルヴォに任せられるよ。


 セルヴォはフッと笑って


「任せてくれ。人間どもには、しっかり価値を突きつけて高値で取引してくるよ」


 と、笑顔を見せた。


 食事が終わる頃、フッと空が暗くなった。



「ユージン!マハトが来たよー」


 ピコラが空を見上げて、魔王が来た事を教えてくれた。


「……マハト様」


 セルヴォが顔を押さえている。


「セルヴォ、あれ、もしかして……」


 俺の声に、セルヴォはゆっくり頷き


「お忍び、でしょうね……」


 と、マハトがお忍びで逃げたのだろうと教えてくれた。


 マハトは俺の隣にセルヴォがいるのを見て


「セルヴォ!お前、このサボりめ!」


 マハトは自分が『ピッコラ』に来れないからと、部下に八つ当たりをしている。


「はぁ、お前にだけは言われたくない」


 セルヴォは、子供達の収穫物を買い取る仕事があるために、毎日ここにいるだけだ。


「なんだと?なんでお前は毎日ここに顔出せるのに、俺はダメなんだぁ!」


 マハトは、疲れているのだろう。頭を抱えてカウンターテーブルに突っ伏した。


 ダンダンと、カウンターを叩いている。


 気持ちはわかるが、魔王なんだから仕方がないだろ?


「で?マハト、今日は何を食べるんだ?」


 不安定な気持ちも、お腹いっぱいにしとけば大丈夫だろう。


「マハト様、今日は角煮が最高でしたよ」


 セルヴォは、マハトの耳元にオススメを呟くと、ピコラにお金を渡して、さっさと店から逃げ出した。


「くっ……角煮、あいつ、俺より先に……」


 マハトは、悔しそうに拳をブルブル振るわせている。


「マハト、角煮丼にしようか?」


 マハトなら、タレをたっぷりかけた角煮丼がいいだろう。


「……とりあえず、まずはそれ」


 よし、少しおとなしくなったな。


「ほら、出来上がるまでの待ち時間に、コレでも食っとけ」


 俺は、マハトの前に、ヴィアジと燻製肉のガーリック炒めと、ランバグラスと燻製肉のソテーを目の前に置いた。


「あ、これは……懐かしいな」


 マハトの空気感が一気にほぐれた。


「お前が、一番最初に食べた俺の料理だ」


 マハトの角煮丼に温玉を乗せていたら


「ユージン!ジェリたんが呼んでるよー」


 ピコラに呼ばれたので、


「ほら、マハト。ゆっくり食べろよ。リコラ、マハトに味噌汁と、小鉢と、あとサラダもつけてやって」


 リコラに後はまかせて、ウッドデッキの桟橋に向かう。


「ゆーちゃん。海鮮のお届けなんだけど、新入りを紹介するわねん♡ほらぁ、恥ずかしがらないの」


 ジェリコの後ろから、ひょこっと顔を出したのは……


「フォキア!来てくれたのか?!」


 フォキアは恥ずかしいのか、体をクネクネしながら


「あ、あの、今後とも、お役に立てるように頑張るので、よろしくお願いします」


 相変わらず控えめに挨拶をしてくれた。


「嬉しいよ、フォキア。そうだ、何か食べていくか?ジェリコは?」


 フォキアを撫でながらジェリコを見たら、


「やだぁん♡そのお誘いは、アタシ、スッゴく嬉しいわぁ〜さっすが私のユーちゃんねぇ」


 フォキア同様にクネクネしている……


 ——こっちは、可愛くないな。


 とりあえず、見なかった事にした。


 水辺に一番近いテーブルに二人を案内して、キッチンに戻ると、マハトはもう直ぐ食べ終わりそうだ。


「マハト、ジェリコとフォキアが来たけど、席移動するか?」


 念の為声を掛けてみたが


「……いや、やめておく」


 マハトは、ジェリコを見た後、スッと目を逸らした。


 ——まあ、そうだよな


 今のマハトは、肩書きをおろして、一人でいたいのだろう。


「マハト、これも食うか?」


 俺は今日は手打ちうどんで、焼きうどんを作ってあった。


「ほぅ、美味そうだ」


 マハトには大きな器で、たっぷり焼きうどんを出してやった。


「ジェリコと、フォキアには、海の幸たっぷりのペスカトーレはいかがでしょうか?」


 俺は、二人の前に貝や海老がゴロゴロのったパスタを出してやった。


「ご一緒に、海藻サラダもどうぞ」


 ピコラが、後から追加でサラダを持って来てくれた。


「まぁ♡美味しそう!フォキア、あなた何を泣いて……ほら、早く食べましょう」


 フォキアは料理を前に、感動の涙を流しているので、ジェリコに世話を焼かれている。


「ユージン!ただいま!お腹すいたぁ!」


 ガバルも丁度仕事が終わったのか、エリソンと一緒に帰ってきた。


 キッチンに戻り、二人にもご飯を食べさせようと思ったら、


「ただいま戻りました。そこで、フリーゲンとアルプに……マハト様?」


 エリソンは、報告しながらカウンターに座るマハトを見て目を丸くした。


「よお、エリソン。元気だったか?」


 マハトの有無を言わさぬ空気に、エリソンは高速で頷いている。


「はぁ……ユージン、もっとゆっくりしたかったが、そろそろタイムアウトだ」


 マハトが悲しそうな顔をして、席を立とうとした瞬間



「マハト様ぁ!やっぱりここにいたのですね?!報告です!魔王、見つけました!」


 アルプは、通信具を片手に、フリーゲンの背中から飛び降りた。



「まぁ!相変わらず、下品な羊だこと。マハトあなた魔王でしょう?そろそろその毛むくじゃらな無礼者の始末したらぁ?」


 ジェリコは、久しぶりにアルプに出会ったのだろう。攻撃力が絶好調だ。


「はっ、半魚人風情が。私は今、魔王の秘書ですよ?あなたのような、どっちつかずな人にとやかく言われたくはありませんね」


 アルプも、変わらずジェリコに対しては攻撃力が高いようだ。


 フォキアは怯えてプルプル震えている。


 目があったから、手招きした。オズオズとカウンターの内側に入って来た。


「も、申し訳ございません」


 フォキアは連れが失礼を……と恐縮中。


「フォキア、あれはいつもだ。お前のせいじゃない、気にするな」


 さて、二人をそろそろ止めないと……と振り返ると、


「だいたい、マハトは魔王なんだから、もっとちゃんと魔族を躾なさいよ!」

「そもそも、マハト様が脱走しなければこんな喧嘩はしなくて済むのです!!」


 なぜか、マハトが2人から責められていた。


 マハトは、いや、でも、と2人には弱腰だ。


 ——コラコラ、仮にも魔王だぞ?


 俺は、ゆっくり息を吸い込み、


「うるさい!迷惑だから騒ぐなら出てけ」


 俺は、心を鬼にしてマハト達を叱責した。


 ——あまり、情けない姿を披露するな


 俺は、マハトに目で訴えた。


 すると、ムッとしたマハトは、


「なんだと?そもそもユージンが魔王城で働いてくれていたら、わざわざ俺が抜け出してくることはないだろうが!」


 と、責任を俺になすりつけて来た。


「そんなこと、俺が知るか。俺は断ったぞ」


 俺が、あっさり切り捨てたら、


「……ぐぬぬ」


 マハトは、何も言い返せなくなった。


 ま、マハトは実際、今でも誰よりも頑張っているからな。


「まあ、そうだな、リコラが一人前になったら考えてやらないこともない……か?」


 少しくらいなら、希望を与えてもいいかもしれないな。


「何ぃ?リコラ!死ぬ気で働け!」


 マハトの急な命令にリコラは飛び跳ね


「ユージン、本当ですか?リコラ、全魔族のために頑張ってください!」


 アルプに至っては、リコラの手を握り、ピコラに協力要請までし始めた。


「……ユージン、本当か?」


 アルプの勢いに押されたマハトは、冷静になると、伺うように俺に直接確認した。


「ああ、少し先にはなるが、異世界リストランテ『ピッコラ』魔王城支店で良ければ考えておくよ」


 だから、お前も頑張れよ?


 そう言ってやると、マハトは苦笑いをした。


「……なあ、なら、せめて月に1、2回でいいから、アルプも、フリーゲンも喜ぶし、城でみんなで食事しないか?」


 ——なんだよ、会いたかっただけか


 マハトは、どうやら寂しかったらしい。


「魔王は、バカだなぁ。寂しいならそう言ってくれたら、みんなで遊びに行ったぞ?」


 そう言って、マハトの背中をポンと押して


「おーい!魔王が寂しがるから、週末、店が休みの日は、魔王城で飯食うぞ!」


 みんなに聞こえるように伝えたら、



「え!マハト、いいの?ヤッタァ!」


 真っ先にピコラが、マハトに飛びつき、


「私、焼き菓子いっぱい作っていくね!」


 リコラもウキウキしながらマハトを掴み


「魔王城から、抜け道作ってやろうか?」


 ガバルはとんでもない提案をし、


「なら僕は、目眩ましの結界を……」


 エリソンは、マハトの抜け道を作るガバルを手伝うつもりだ。



「あらヤダァ、マハトったら、子供にモテモテじゃないの……アタシも……」


 ジェリコが、手を広げ、ジリジリとマハトに迫っていく。


「ちょ、お前ら放せ!あれはヤバい!」


 距離が近くなるほど、ジェリコの目付きがヤバくなってきた。


 ——あの顔は、子供に見せちゃダメだ


 俺は、持っていた台拭きをジェリコに向かって投げた。


「アルプ!いまだ!」


 その瞬間、ドゴッと音がして、


 グルル、グルル


 イビキにしては物騒な音が聞こえた。


「ユージン、おかげ様で、魔の手から主人が助かりました」


 アルプは、ペコリと頭を下げた。


「ま、そういうことだ、予定の調整頼むな」


 アルプに笑いかけると、


「お任せください」


 と、執事らしく頭を下げた。


「マハト、アルプに料理渡しておくから、ジェリコが起きる前に、帰れ!」


 マハトに帰宅を促すと、ひらりとフリーゲンに飛び乗り


「ユージン、楽しみにしているからな」


 魔王マハトはご機嫌で城に帰って行った。


「よし、みんな、今日、店を閉めたら、マハトのために、週末の準備をするぞぉ!」


 俺が声をかけると、


「「出張『ピッコラ』だね!」」


 子供達は張り切って、キャーと奇声をあげて各々の持ち場に走っていった。







 異世界リストランテ『ピッコラ』【完】

異世界リストランテ『ピッコラ』を最後まで読んで頂きありがとうございました。


「争うけれど争わない」そんなふわふわしたお話でしたが、楽しんで頂けましたか?


もし良かったらコメント等、簡単で良いので感想聞かせてくださいね。


『ピッコラ』は、私の他作品『トングが聖剣』(勇者)『おかん転移』(聖女)『以心伝心』(賢者)同じ世界で召喚魔法に巻き込まれた、ユージンの魔族の国でのお話でした。


気付いてくれた人いるかな?


いつか、裏話でも書こうかしら。


ユージン達とはこれでお別れですが、もしかしたら今書いている『以心伝心』のお話に、いつかチラッと出てくる日があるかな?


長くなりましたが、作品を見つけて頂き最後まで読んでくださった皆様に心より感謝します。


あなたに幸せが届きますように!


ありがとうございました。


黒砂無糖。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ