表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界リストランテ『ピッコラ』  作者: 黒砂 無糖
集まる。そして始まる。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/61

魔族になっちゃった


「アルプ……どう思いますか?」


 コルージャは、腕組みをしながらじっくりと俺を凝視している。


 ――ちょ、目が怖いって。


 透き通った猛禽類の目に見つめられると、狙われてるみたいだからやめてほしい。


 ――捕食される小動物の気持ちだ。



「……コルージャの見立ては?」


 アルプも俺を見ながら目を細め、眼光を鋭く光らせている。


 羊も……こうしてみると目が怖いな……


 ――なぁ、俺の何がダメなんだ?


「稀に……念のため、魔力の確認が必要かと」


 魔力? 魔力量が増えたこと?


 それとも、能力が増えたことか?


 二人の眼力が強過ぎて、俺は怖くて口を挟めず、大人しく黙っていた。


「ユージン、今から貴方の魔力を確認したいので、座ってここに触れてください」


 アルプに促されるまま、リビングのソファに移動した。


 既に準備された、以前マハトに魔力を測ってもらった時と同じ装置に触ったら、


「これ、前と光り方が違うか?……」


 見方はいまいちわからないが、以前と光の強さも、属性ごとの光り方も違った。


 ――かなり……違うか?


 この違いのせいで二人は難しい顔なのか?


 二人は、明らかに厳しい表情になり、装置を穴が開くほど見つめている。



「……コルージャ、やっぱり確定ですよね」


「はい、そのようですね……」


 ――何が確定したんだ?


 俺自身は、何も感じないぞ?


 困惑する俺とは違い、二人の顔は暗い。


「なぁ、一体どうしたんだよ?」


 我慢できずに、俺は二人に話しかけた。


「何かまずいことが起こったのか? 教えてくれなきゃ、俺にはわからんぞ?」


 俺の声掛けに、二人はハッとして顔を見合わせ、アルプが頷いた。


 ――俺、一体、何を言われるんだ?


 二人の緊張が伝わり、つられて思わず俺の背筋が伸びた時に


「ユーちゃぁん♡ お邪魔するわよぉ〜♡」


 微妙なタイミングでジェリコが現れた。


 ジェリコの間の悪さに、緊張感が抜けてしまったが……


「……え? 何よこの空気? ユーちゃん、この二人、何かあったの?」


 押し黙っている二人の空気感に、ジェリコですら違和感を感じたようだ。


 コルージャとアルプがため息をついて、さっきまでの緊迫した空気は霧散した。


「あー……俺にはよくわからん」


 ――俺が今、一番知りたい。


 ジェリコの普段なら暑苦しい存在感に、今はちょっとだけ救われた気がする。


「ジェリコ、ちょうど良かったです」


 しかし、アルプは珍しいことにジェリコを名前で呼んだので、緊張感はさらに増した。


「ちょっと、どうしたのよ」


 ジェリコは、そんなアルプを不審がりながらソファに座った。


 普段半魚人呼びをしているジェリコを、わざわざ名前で呼ぶほど、重大なことなのか?


 ――まさか……俺、死ぬのか?


 魔族の国は、魔素が濃いから人間には合わないって言ってたよな……


「あなたにも知っていて欲しいので、とりあえず黙って聞いてください」


 真剣な目に、ジェリコは頷きソファに座ると、アルプはサッと防音結界を張った。


「驚かないで聞いてくださいと言うには、無理があるかもしれませんが……」


 アルプを見ると不安が押し寄せてきた。


 ――まさか、俺、かなりヤバいのか?


 やっぱり、人間は魔族の国だと長くは生きられないのか?


「分かった……アルプ、教えてくれ」


 聞く覚悟は……ないが、聞くしかない。


 ――俺は、いつまで生きられるんだ?


 聞くのは怖いけど、受け止めなければ……






「ユージン、あなたは今、魔族です」





 は?


 魔族?


 何言ってるんだ?



「俺が魔族? 俺は人間だ。何言って……」


 意味がわからないんだが……


「待ちなさい、どういうこと?!」


 俺以上に、隣に座っているジェリコが慌ててアルプに問いただしている。


 本来なら俺が取り乱すはずが、横で騒いでいるために、少しだけ冷静になれた。


「魔力の属性配分を見た限り、ユージンは魔族で確定だと思われます」


 アルプはキッパリと魔族だと言い切った。


「属性を見ましたが、圧倒的に闇属性が強くなっていました。人間は闇属性が一番強くなることはあり得ないのですよ」


 コルージャも補足説明をしてくれている。


 ――良かった。死ぬわけじゃなかった。


「でも、魔族ね……俺にはよくわからん」


 特に、何も変わってない。


 ……実際、何も違わないぞ?


「でも、なんでなのよ? 一体どうやってユーちゃんは魔族になったの?」


 ジェリコは、俺が魔族化した原因が気になるようだ。


 確かに、原因は知っておきたいな。


「特異体質としか……あと、膨大な魔素を摂取したからでしょう……」


 コルージャの言葉を聞いて、ジェリコは頭を抱えている。


 ――俺が魔族化するのは不都合なのか?


 なんだか悩ませて申し訳ない気分だ……


「ユーちゃん……ごめんなさい」


 ジェリコは俺の魔族化は、自分の配下の部隊が張り切って高魔素食材を持ってきたせいだと、責任を感じているようだ。


 確かに、シュヴェルトフィッシュ、クラーケン、シーサーペントと三大高魔素海獣揃い踏みだったからな……


「ジェリコ、あなたの責任ではありません。魔族に変異する人間はごくごく稀です。意識するのは難しい」


 コルージャがジェリコを宥めるように静かに語り始めた。


「少なからず前例はあるのか。どんな奴が魔族になったんだ?」


 俺は少し気になり、コルージャに尋ねてみることにした。


「歴史上何度かありましたよ。法則性はありません。有名な話だと、人間の勇者が魔王になったこともありましたね」


 ちょっと聞き捨てならないな……


「勇者のくせに、何してるんだ?!」


 どうしてそうなった?


「あれは、おとぎ話じゃないの?」


 俺が混乱していたら、ジェリコも知ってる話なのか、会話に割って入ってきた。


 ――昔から伝わる話なのだろうか?


「物語として、色々な時代の話が盛り込まれましたが、原初の魔王が人間だったのは本当のことですよ」


 コルージャの話にアルプも頷いている。歴史を正確に理解しているのだろう。


「人間が、原初の魔王?」


 それまでは魔王はいなかったのか?


「コルージャの話してくれた時期は、魔族は族長を主軸に、種族ごとに至る所で生活していたのです」


 今も種族ごとだよな?


 アルプの説明は理解できるが、さほど変わらないように思う。


「元々魔王は、魔人族の族長なのか?」


 なら、俺が知ってる魔王ってなんだ?


 アレも、本来なら族長?


「はい。魔族は魔素を求め、各自今の土地に集まって来ただけです。種族として力が強いため、建国の代表を魔人族が担いましたが」


 最初は、魔王じゃなかったのか……


 でもきっと、土地の奪い合いや、力関係の上下は存在したんだろうな。


「魔王城は、いつからあるんだ?」


 魔王城も、原初の魔王が建てたのか?


「国の中央にある魔王城は、当時、魔人族で最も魔力量が多かった族長が、人間を真似て建てた城です」


 マジか……そんな歴史があったのか。


「しかしある時、人間がふらっと現れて、自らを勇者と名乗り、魔人族の城を攻略し、力で魔族を従えたのが『原初の魔王』です」


 待て、勇者、身勝手すぎだろ。


「魔王はいないのに、勇者はいたのか……」


 勇者と魔王はセットじゃないんだな。


 俺がおかしい? さっきから、勇者がただの侵略者にしか思えない。


「なんでわざわざ……」


 話を聞いて混乱する俺の隣で、ジェリコも困惑した顔だ。


「どうにも城を建設した辺りから、人間の間に『魔王』がいると噂が流れ、国が混乱したらしく、勇者が立てられたのです」


 噂? たったそれだけなのか?


 ヤンキーの喧嘩じゃないんだから……


「勇者はあっさり城を制圧すると、自分は魔族の王『魔王』だと言い出し、あっという間に魔族をまとめ上げました」


 魔族には魔王の概念すらなかったのか。


「反発はなかったのか?」


 勝手に侵略してきた勇者だよな?


「強かったらしいですし、王がいた方が都合も良かったらしく、皆納得していましたよ」


 納得していたなら、いいのか?


 ――魔族、チョロ過ぎないか?


「建国の馴れ初めはさておき、原初の魔王も含め、珍しいことではありますが、人間でも後から器が成長する者もいるようです」


 コルージャが、ズレていってしまった話を元に戻した。


 ――そうだった、俺、魔族になったんだ。


「そうでした。ユージンは魔族になってしまったので、魔王に心を支配されないようにお気をつけください」


 アルプに忠告を受けるも……


「どう気をつけたらいいんだ?」


 みんなと一緒なら、大丈夫じゃないのか?


「とりあえず、マハト様が戻られるまでは、ここにいる我々以外、誰にも言わないほうがいいでしょう」


 子供達に秘密にするのは気が引けるが、コルージャの考えだ。黙って聞いておこう。


「そうね……まあ、ユーちゃんならパッと見にはわからないから、大丈夫ね」


 ジェリコも考えた末に、コルージャの意見に同意した。


「元々、人間と魔人族はよく似てますから。ユージンならば問題はないでしょう」


 ――近い存在なのに争うんだな。


 人間も同じか。見た目、性格、宗教、思想、なんだって争う。


「俺なら問題ないか……」


 アルプは俺を信頼してくれているが、俺にはまだみんなに伝えてないことがある。


「……アルプ、ありがとう。いつかみんなにも話すな」


 俺が転移者だって、ピコラとマハトしか知らないんだ。


 だからマハト……頼む、早く帰って来い!


 俺は後ろめたい気持ちを振り払うために、コルージャに質問をすることにした。


「魔族と人間は属性以外は何が違うんだ?」


 魔族になったなら、これから先、知らないでは済まされない。


「違いですか? 属性を除くと外見的に、耳の形が違うくらいですよ」


 返ってきた答えにハッとした。


「そうだ! 俺の耳!」


 アルプから教えて貰った魔法で、魔族仕様にしてあったはずだ。


 解除したら、戻るんじゃないか?


「ユーちゃんの耳は魔法だったわよね?」


 隣に座るジェリコは俺の耳を見ている。


「そうだ。ちょっと魔法を解いてみるよ」


 アルプ、コルージャ、ジェリコに見守られながら、俺の耳にかけてある魔法を解除した。


「「「あ……」」」


 三人とも声がハモり、俺の耳を見て残念そうな顔をしている。


「……あっ」


 触って確認してみたら、俺の耳は尖ったままだった……



 なあ、マハト、俺、魔族になったぞ?


 きっと驚くよな?


 アルプもみんなも、俺を信じてくれる。


 俺はもう嘘はつきたくない。


 だから、早く姿を見せてくれ。


 女神、頼むからマハトを返してくれ。









第3部 完


ここまで読んで頂きありがとうございました。


第3部、いかがでしたか?もし良ければ、評価やコメントもお待ちしてます。

第4部は、いよいよ魔族の国は戦火に巻き込まれていきます。

魔族になってしまった遊人はどのような決断を下していくのか、どうか見守ってください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ