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足指じゃんけん

 スズメが白波を観察している――。

 そう感じたクロだが……。


(でもなんでだ?なんで白波が、イタズラ者のことを気にしているのかどうかなんて、スズメが気にするんだ?)


 姿を見せないで、時々お菓子を盗み食いしたり、白波に花や氷など、美しいものを見せようとするイタズラ者――。

 さっきの白波の様子からすると、白波はそのイタズラ者のことを嫌ってはいない。

 むしろ好意的に捉えているように感じる。

 おそらく相手も、白波のことを好いているのだろう。

 そうでなければ、朝顔や氷を運んだりしない。


 そしてスズメはそんなイタズラ者から、俺たちの気を逸らしたがっているような……。


(気のせいか……?)


 精霊のイタズラなんて、座敷童のクロたちが気にしたところで、どうするというものでもないのだけど……。

 元の出自が精霊という座敷童だっているのだから……。

 

(てか、盗み食いの犯人って、きっとこの前「内緒」ってささやいてきたヤツだよな……) 


 クロはそう心当たりをつけながら、紅たち他の座敷童にそのことを告げなかった。

 「内緒」と言われた内緒の範囲が、どの程度なのかわからなかったのと、きっとそうだろうと思いながらも、証拠はどこにもなかったからだ。

 

(力をつけた精霊か……。風かな?水かな?光とかもありかな?なんだっけなぁ…あの気配……。知ってる気がするんだよな……)


 クロは軽く目を閉じる。

 すぐそこに答えがありそうなのに、もやもやしてつかめない――そんな感じだ。


(なーんか、引っかかってるんだけど……)


 わかっているはずのに、はっきりとつかめない――。


(なんだろうなぁ…この違和感……)


 と、考え込んでいたクロの前に黄魚がいざり寄ってくる。


「なんだよ、黄魚?」


 黄魚はいざってきて、胡坐をかいて座るクロの前に崩した正座で陣取る。

 現在高校生体型となっているクロと、幼稚園児くらいの幼子体型の黄魚――。

 自然と黄魚がクロの顔を下から覗き込むようになる。


「黄魚、もう葛切り食べ終わったのか?」

「二杯食べた。最初のは…黄な粉なしで、二杯目は紅に黄な粉入れられた…。どっちも美味しかった」

「そっか、そりゃ良かったな。で、何?」


 うん、良かったと頷く黄魚。

 そんな黄魚に、何の用だと問うと――。

 

「クロんちの子、足指じゃんけん、パーが、出来ないの」

「はい?」


 唐突にそんなことを言われて、クロはぽかんとする。

 意味が分からず、目線を黄魚に合わせたまま動きが固まるクロ。

 そんなクロの顔を覗き込みながら、黄魚も困った表情で首を傾げる。


「グーとね、チョキはできるんだって。でも、パーが出来ないの。チョキが難しい人、たくさんいるけど、パーできないの、変わってるよね?」

「なんの話だよっ!」


 ぽかんとしたクロを無視して話を続ける黄魚にクロは叫ぶ。

 が、そこにクロを無視して話を進める連中がプラスオンで乱入してくる。


「ねぇ、足指じゃんけんって何なの?」

「えー、知らないのー緑花ー?」 

「そりゃ、引きこもってたんだから、知りようがないんじゃないか?あれって、考えられたの、割と最近なんじゃないか?」

「ワシも知らんなぁ……」


 黄魚の言葉に興味を持って緑花が話しかけてくる。

 そこに紅やアオ、緑花と同じく知らないという銀河が混じってくる。


「よし!じゃあ、実演だ!」

「よーし!受けてー立ーつっ!」


 アオと紅がぴょんと立ち上がる。


「何する気だよ?」


 いきなり横で二人に立ち上がられたクロが問う。


「「足指じゃんけん大会!」」

「は?」


 戸惑うクロを置き去りにして、向き合った紅とアオは、向き合ったまま両手をつないで、ピョンこらピョンこらと跳ねながら勝負を始める。


あーしゆび(足指)じゃんけん、じゃんけんポンっ!」

「あいこでしょ!」

「あいこでしょーっ!」


 機嫌よく飛び跳ねる二人。

 が、それを見た緑花が目を丸くした。


「え?どういうこと?」


 あまりにもいきなり始まったので、状況についていけなかったらしい。

 跳ねる二人をきょときょと見ている緑花を黄魚がツンツンと突つく。


「あ、れ…」

「あれ?」

「紅と、アオの足の、指…」


 紅とアオの足元を緑花に示す。

 ピョンこらしている紅とアオは、リズムを取りながら、互いの片足を相手に突き出すようにして、その指を見せ合っている。


 グーは指を五本ともきゅっと縮める。

 チョキは親指だけピンと上げ、他四本は下。

 パーは五本を広げる。

 見ていたらすぐにわかる。チョキ以外は手のじゃんけんと一緒だ。


「ああ、なんだ…。足指じゃんけんとは、読んでそのままということか……」


 銀河がそう言った。


「あ、そういうことね。まぁ…器用ね、二人とも……」


 ようやく事態を了解できた緑花が、少し呆れたようにつぶやく。


「だあああああっ!」

「もー!負けなさいよーっ!」


 しばらくして……紅とアオの勝負は、あいこが続きすぎて二人とも座り込んでしまった。


「しーんどーいーっ!」

「結構来るよなぁ!これ!」


 言い合う二人に。


「そんだけ跳ね回ってりゃ、くたびれて当たり前だ!」


 怒鳴るクロ。

 と――。


「クロんちの子は、車椅子座ったまま……だから、くたびれない…はず……。でも、しんどそうらしいよ?」

「……」


 黄魚の言葉にクロは息を飲んで黙り込む……。


 クロんちの子。

 車椅子――。


 そこから連想されるのはただ一人……。


「華子が、これやってる…って?」 


 クロの確認に黄魚はにっこり微笑む。


「リハビリ…だって……。チョキ…出来ない人のほうが、多いのに、チョキできる…くせに、みんなができる…パーが、出来ないんだって。変な子、よね?」

「変な子言うなっ!」


 そう言い返しながらクロの頬は緩む。

 それを隠すためにクロは自分の片膝に顔を伏せた。

 そして、顔を伏せたまま――。


「教えてくれて、ありがとう……」


 そう黄魚に言った。


「うん」

「へへ……」


 顔を伏せたまま、クロは少し笑った。


 意地っ張りで、どうしようもない娘が少しづつ前に進んでいる――。


 座敷童として、捨ててしまった守護家……。

 その主な原因となった、わがまま娘――。


 華子があんな性格でなければ、クロはきっとまだあの家で座敷童をしていただろう。

 力を失い、身を保てなくなって、ここ(座敷童療養)に来ることなんてなかっただろう……。


 それでもその(華子の)成長が嬉しいと思ってしまう――。

 やっぱり座敷童なクロだった。


お読みいただき大変ありがとうございますm(__)m

よろしければぜひまた続きを読みに来て下さい(o_ _)o))


足指じゃんけんは、リハビリやボケ防止とかにいいんじゃないか?と言われているそうです。

あと外反母趾の予防にもいいとか言われているようですが……。

あくまでも噂で、実態は不明です(o*。_。)o

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