双葉、武器を見つけるッ!
「この化け物、本当に金山か?」
双葉は目の前にいる、金色の鉱石のような体をしたゴーレムを指して言った。
「はい、その人の欲望が強ければ強いほど、強力な魔物が誕生します。あの、金山という男の、欲望は、昨日闘った、西園寺勤よりも手強そうですね」
「面倒だな」
双葉は後ろ髪を掻きながら、ポケットからカッターナイフを取り出して、それを口に咥えたまま、その場で高くジャンプした。それも常人のレベルではない。結城家の特別な訓練を受けた人間だからこそ、できるシロモノだった。
「面倒だから寝てろ」
双葉は口に咥えていたカッターナイフを、空中で右手に持ち変えると、そのままゴーレムの襟足目掛けて。刃を突き立てた。しかし、案の定と言うべきか、カッターの刃が折れ、双葉はゴーレムに、振り払われてしまった。
空中で何度か回転し体勢を立て直すと、そのまま両足で床に着地した。
「双葉、これを・・・・」
ミリーは鞘に納められた、果物ナイフほどの大きさの短刀を双葉に投げた。慌てて、鞘を抜いてみると、日光に照らされて、透明な水のような刃が輝いていた。よく見ると、ナイフには文字が刻まれており、アルファベットにも見えるが、どうやらこの世界の言語で書かれている物ではないらしい。
「それは、オリハルコンのナイフです。あなたにあげます」
「へえ、綺麗だな」
双葉は刃を見てうっとりしていた。刃物を見てうっとりするなど、危ない人間にしか見えないが、双葉は昔から光り物が好きだったので、この反応はごく自然なものだった。
「じゃあ、試し切りさせてもらおうかな」
双葉は床を蹴って、先程同様にジャンプすると、ゴーレムの右腕を横から斬りつけた。その斬撃はまるでレーザー光線のように、光り輝く青い線をなぞっているようだった。
「ぐおおおおお」
ゴーレムは片腕を苦しんでもがいていた。そこにすかさず、双葉はしゃがみ込んで、両足を払うように斬りつけた。青い斬撃が横一列に、ゴーレムの両足を斬り、ゴーレムは、まるで積み木のように崩れてしまった。
砕けた岩が煙とともに消え、ゼニスもそのまま煙に交じって消えてしまった。屋上には金山が大の字で倒れている意外に、残った物はなかった。双葉は鞘にナイフを収めると、それをポケットに入れた。銃刀法違反という法律については、彼女はまだ知らないらしい。
「ああ、また逃がしたか」
「仕方ないです。それよりも強いですね。私、びっくりしちゃいました」
ミリーが感心したように言うと、双葉は頬をほんのり染めて、少し照れていた。
「実はね、幼い頃から刃物の扱いには慣れてて、家はもう堅気だけど、一世紀ほど前は、プロの殺し屋一家だったんだ」
その後、二人は仲良くお喋りして一日が終わった。良かった、良かった。




