95話 捕まったはず
パリィンというガラスの割れる音と共に俺は飛び起きた。
ちょうど『ドリーマー』を使って何かしようとしている時であった。
「な、何?」
その音で命も起きたようで、くらやみのなかで暗闇の中で声がした。
暗闇の中でもその位置がわかるようになっている照明のボタンを押し、部屋を明るくする。
「ん〜、どうしたの?」
急に明るくなったことにより、紫恵も目覚めたようだ。
あんだけ大きい音が鳴って起きないのもやばいと思うが、今はそんなこと気にしている暇は無い。
「おい、とりあえず逃げるぞ……!」
「え、え、ちょ、どうしたの!?」
「……また嫌がらせされてるみたい…………今回は、ちょっと酷い……ね」
俺はとりあえずこの家の中でもいちばん安全であろう洗面所へと向かった。
洗面所には窓も無いし、また何かが飛んでくることは無いだろう。
「……昨日対策しておいてよかったね」
「あぁ…………」
恐らく、これが『先見の明』の効果なのだろう。
最悪なケースでの検証になってしまったが、非常に強い超能力だ。
「だが、多分1枚割れてしまえばもうクッションとしての役割は果たせないだろう……多分もう剥がれてるだろうしな」
「あ、そっか、間に挟んでたから…………」
多分クッションとして間に挟んで居たものはもう重力に従って下に落ちてしまっているだろう。
そうなってしまえばもうそれは使えないということになる。
俺がここに逃げてきたのも、投石をされたとすればあのままあそこに留まっていれば第二の投石をされた時に危ないと思ったからだ。
「命、とりあえず警察に連絡をしてくれ!」
「う、うん……」
命は震える手でスマホを操作しようとするも、焦りからか中々電話をかけることが出来ていない。
「っ、貸して!」
その様子を見かねてか目覚めて少したち状況を理解した紫恵が命のスマホを取り、警察に電話をかけた。
「すいません、命ちゃんの友達です……また、また襲われてて…………!」
紫恵が何とかその事を伝えると電話の向こう側からは慌てた声が聞こえてくる。
流石に警察側も巡回を増やして守っているはずの人へまた襲撃をかけられたなんてあってはいけない、そうなると面子にも関わるし、不味いのだろう。
俺はそう思っていたのだが、どうやら思ったよりも事態は深刻なようだ。
「……え、巡回中の人と連絡がつかない……?」
「っ!?」
「お、おい、それは本当なのか!?」
「ちょ、ちょっと待って……はい、はい………分かりました」
紫恵は顔を真っ青にして不安そうに返答をしている。
「…………巡回中の警官と連絡がつかないから、今他の人たちを呼んでるみたい……」
「それってつまり……今俺たちを守る人は居ないって事か?」
「そうみたい…………」
不味い、不味すぎる。
………というか、前回俺たちを襲ってきたやつはもう捕まったんじゃなかったのか?
まさか……別人なのか?
「と、とりあえずここに篭っていた方が良いよね?」
「うん、鍵もかけられるし…………そっちの方が安全だと思う」
命と紫恵はそういうが、俺にはまだ不安が残っていた。
投石をして家の窓を破ってくるような奴らだ、もしかすると何らかの方法でこの洗面所の扉を破壊してここに入ってきてしまうかもしれない。
そうなってしまえば安全なはずのここは一気に袋小路になってしまう。
相手がどんなやつなのかは分からないが、ここまで入っていて俺達が無事でいられるとは少なくとも思えない。
「2人とも……俺がもう一度戻ってくるまで鍵を絶対に開けないでくれ」
「っ!? え、ちょ、外出る気!?」
「あぁ…………確か包丁があっただろ? 自衛のためにも持っておきたい、それに窓がどのくらい割れているのか、そこから誰かが侵入しようとしている様子なのか、それを確認したいんだ」
少しでも2人の安全を確保できるなら俺の安全なんていらない、ここで頑張るのは俺だけで十分なんだ。
そんな思考回路で俺は自衛のための道具を取りに行こうとする。
が、そんな俺の袖が引かれる。
「…………だめ、絶対だめ、ここからでたら許さない」
「はぁ!? そんなこと言ってる場合じゃないだろ、下手したら俺達全員死ぬんだぞ!?」
「いいよ、みんなで死ねるなら…………私、みんなと一緒に死ねるなら別に良いよ………!」
あぁ、まずい、命が恐怖やらなんやらでおかしくなっちまってる!
もうなんか言ってることがメンヘラのそれだぞ!?
「彩斗君が死んじゃったら私…………嫌だよぉ……」
「大丈夫だ、死なないために道具を揃えに行こうとしてるんだ、守るっていってもそれが無いと全滅してしまうかもしれないんだ、俺も含めてな、だから大丈夫、行かせてくれ」
「嫌っ! もうみんなで死にたい!」
「死にたくはないだろ!?」
錯乱し始めた命を何とかしようとするも、俺も混乱しているためどうすればいいのかが分からない。
そうやって2人で言い争っていると、間に紫恵が入ってきた。
「2人とも、やめて」
紫恵はいつもの紫恵とは違う、冷静な声でそう言った。




