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俺だけ使える1万円で超能力を買える怪しいサイトを見つけたら人生が変わった件  作者: 黒飛清兎
第一章 『1日1回1万円で超能力が買えるサイト』
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71話 催眠術の効果?


俺が叫び続けると……命の指が、ほんの僅かに止まった気がした。


スクロールしていた親指が、動きを止める。

そのわずかな違和感を俺は見逃さなかった。


「命……聞こえてるんだろ……?」


祈るように声を届ける。

暗闇の中、唯一の光に向かって、俺は一歩一歩踏み出す。

その光は俺の目をその光量で眩ませようとしているが、それでもなんだかそれは俺のを壊そうとしているようそんな暴力的なもののようには思えなかった。


命の肩が、微かに震えている。

けれど、それは恐怖の震えじゃないことくらい分かる。

迷い、ためらい、心のどこかで、まだ誰かを信じたいと願っているような……そんな震えだ。


「お前が今見てるものは、過去の幻だ、それのせいで苦しむ必要なんて無い!」


俺の声が届いているか分からない。

でも、言葉を止めたら終わりだと思った。


「お前がそれを見続けてる限り、苦しみはなくならない! もう良いだろ!」


命の手が、スマートフォンから少しだけ離れる。

その手の動きに、俺は希望を見た。


だけど、次の瞬間…………。


「私はもう、誰かに迷惑をかけるのも、かけられるのも………嫌なの、だけど…………あいつらはやめてくれないんだよ……もう、嫌だ」


小さく、震える声。

それはあまりにも弱々しく、そして痛々しかった。

絶望を見てきた人間だけが出せる、心の底からの呟き。


俺は走った。

気づけば俺は命のすぐ傍に立っていた。

そして、その手からスマートフォンをそっと取り上げる。


「あるさ、お前には……ちゃんと、俺がいる」


命の虚ろな瞳が、少しだけこちらに動く。

光が戻っていく、そのほんの一瞬。

俺は、見逃さなかった。


「俺は命のことを、何があっても見捨てない……俺は、命のことを、大切に思ってる! だから、安心してくれ……俺を、頼ってくれ」


沈黙が流れる。

スマートフォンの光も、徐々にその強さを失い始め、その光が暗闇に溶けだし、辺りがぼんやりと明るくなる。


命は、ぽつりと呟いた。


「……本当に、傍にいてくれるの?」


その言葉に、俺は力強く頷いた。


「…………あはは、ありがとね……うん、これってもしかして催眠術の効果なのかな?」

「催眠術?」

「今日かけてくれたじゃん」

「……あぁ」


そういえば『ドリーマー』の効果を試す為に催眠術をかけたんだった。

どういう夢を見せようとかそういうのは考えていなかったな……。


朝起きた時に『ドリーマー』が相手の夢に干渉してその記憶を保持させることが出来るのかどうか、これを検証しなくてはいけないため、ある程度はっきりとした内容の夢を見せた方がいいだろう。


…………うん、夢なんだしちょっとくらい好きな事させて貰っても良いよな?

俺は現実世界ではチビだしガリガリだし男らしさの欠けらも無い人間だ、だがここは夢の中、こんな俺でも理想のイケメンになれるのだ!


俺は頭の中で理想のイケメンをイメージする。

金髪高身長でキリッとした目に不敵な笑みを浮かべる口元、なんでナイスガイなのだろう。

俺はこんなイケメンになろうと思い、自分がそうなる姿を想像した。


するとなんということだろう、みるみるうちに視線が上がっていき、周りにいた命が段々と小さくなっていくのが見える。


「どう? 命、俺イケメンになったよ!」

「えー……なんか違うよ」

「えぇ!?」


何が違うんだ!?

どっからどう見てもかなりのナイスガイだろ!?


俺は自分の姿を写し出すことが出来る鏡を目の前に作り出した。

そこで自分の姿を見て見るが、やはり誰がなんと言おうとイケメンだ。


「んー……いいから、いつも通りの彩斗くんに戻ってよ!」

「え? やだよ、俺はこのイケメンの姿が……い、い……あれ?」


命がそう言った瞬間、俺の視点はみるみるうちに下がっていってしまう。

……っ!? ま、まさか!?


俺はもう一度鏡を見てみる。


そこに映っていたのは……女装をする前の俺であった。


「うっわぁ、ちょ、これなら女装をしてる時の方がいいじゃん…………」


鏡に映る俺は明らかに陰キャで、なんというか周りに陰のオーラを出しているような感じさえした。


「あ、女の子みたいな彩斗くんが嫌いな訳じゃないよ?」

「いや、なんのフォローだよそれ」

「え、いや、彩斗くんが今の女の子の姿の方いいと思ってたとしたら悪いなーって思って…………これは、私が好きな彩斗くんの姿だからさ」

「うぇっ!?」


あぁ、そうか、勘違いするな俺、これは夢だから俺の思想が反映されてしまってるんだ。

命が現実でこんなこと言うわけないし、きっと俺が無理やり言わせてしまっているのだろう、あぁ、申し訳ないな!


「と、とりあえずもう起きようか!」

「えー? まだ寝てたいよー」

「良いからいいから!」


俺は何とか起きようとする。

…………しかし、起きれない。


「あれ? てかこれどうやって起きるんだ?」

「んー? 夢なんて気付いたら覚めてるもんなんじゃないの?」

「いや、それはそうだけど……」


『ドリーマー』の効果で時間が引き伸ばされているとしたらもしかしたらこのまま夢から覚められないなんてこともあるかもしれない。


…………まずいぞこれ。

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