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俺だけ使える1万円で超能力を買える怪しいサイトを見つけたら人生が変わった件  作者: 黒飛清兎
第一章 『1日1回1万円で超能力が買えるサイト』
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68話 夢の中




…………ここはどこだ?

気が付くと俺は真っ白な空間にいた。

いや、違う、真っ白じゃない。

透明ななにか小さいつぶつぶのようなものが俺の周りに大量にあるのだ。


不思議と恐怖感は無い、あるのはどちらかと言えば安心感、昔から見てきた様なものを見ているかのような感覚…………。


俺はあることを思い出し手の甲を見る。

…………何も書いていない、という事は、ここは夢か!


俺は寝る前、手の甲に夢という字をペンで書いていた。

これはよくある今見ているのが夢なのか現実なのかを判別する方法で、手の甲に夢と書いてあればそれは現実で、何も書かれていなかったり他のことが書いてあったりすればそれは現実ではなく夢という事なのだ。


それにしても、こんな夢は見たことが無いし、ここまで意識がはっきりしているのも初めてだ。

これが『ドリーマー』の効果なのだろう。


俺は今1度周りを見渡す。

…………もしかして、これは俺が何か行動を起こすまで何も起こらないということなのか?

夢を自在に操ることができるという事は夢は初め何も無い状態から始まり、そこから俺が自由に夢を作っていけるという事なのかもしれない。


そういう事なら、まずは何かやってみなければ何も始まらない。


俺はとりあえず目の前にいちごを出してみることにした。

いちごが俺の目の前に出てくる事を想像すると、周りに浮かんでいる白いつぶつぶがその場所に集まってきてそこにいちごが出てきた。

非常に綺麗ないちごだ。


一口食べてみると、非常に美味しく感じる。

しかし、お腹に溜まったような感覚はあるものの、溜まっているようには感じないというよく分からない感覚になってしまう。

これが夢で食べ物を食べる感覚なのだろう。

不思議な感覚だ。


しかし、普通の夢はこういったものでは無い。

もっと現実に近くて、それでいて非現実的なものなのである。


「普通の夢……普通の夢って、どんなだったっけな」


俺は少し考える。

…………そうだ。

学校の帰り道、夕暮れの中を自転車で坂を下ってるシーン、そんな夢をこの前見たな。

普通に俺の帰り道は暗闇に包まれているんだが、普通の全日制の学校に通っていればこういった光景も見れたのかもしれない。


俺がそう想像した瞬間、白いつぶつぶが再び動き始めた。

空間が揺らぎ、視界の端から色がつきはじめる。

オレンジ色の空、赤く染まる雲、そして肌寒さを感じる秋の風。

アスファルトの道路に、自転車のタイヤがかすかに擦れる音まで再現されていた。


「……すげぇ」


思わず独り言が漏れる。俺は気づけば自転車の上に座っていて、手にはハンドルの感触。

風が髪を撫で、前方には見慣れない色に色付く町並みが続いている。


まさしく、“普通の夢”だった。

風景に特別なものは何もない、しかし、現実では見ない光景であった。


「これが……俺の夢か」


いつも見るような夢のように見える、が、今はその夢を“自分で作っている”という実感がある。

現実のように流れる風景の中で、俺は自転車をこぎながら、俺はそんなことを考えていた。

自転車を使えば自分の好きな所へ行ける、という感覚が漠然と俺の中に産まれていて、その感覚に身を任せると風景はまるでゲームやアニメのシーンが変わる瞬間のように移り変わった。


今向かっていたのは、学校である。

恐らく俺の深層心理で全日制の学校に通ってみたかったというものがあるのか、その学校は近くにある全日制の学校であった。


中に入る時も先程と同じように風景が移り変わり、気が付くと教室の中に居たりした。

教室の中にはいつも会う夜間学校の生徒達がいつものように話したりしていた。

その中に命の姿は無い。


「あ、彩斗くん、おはよぉー!」

「あぁ、おはよう?」


紫恵がいつものように挨拶をしてくる。

夢だからか若干紫恵の制服のデザインが違う。


「あ、この服? 良いでしょ、可愛くない?」

「あぁ、可愛い」


現実ならこんなことは絶対に言わないが、夢の中なら現実に影響は無い、だから本音で話すことができる。

俺がそう答えると紫恵はものすごくびっくりした反応をした。


「ええっ!? え、ちょ、彩斗くんどうしたの!? あ、そっか、これ夢か!」

「あー、うん、夢だぞ」


ふむ、この紫恵は今ここが夢だと気付いているのか。

まぁ、俺の夢の登場人物なんだし何を言っていてもおかしくないか。


「あー、うーん、夢か…………だったら……もっと褒めて?」

「ん? 良いぞ?」


夢の中でくらいちょっと褒めてもいいだろう。


「え、ほんとに? じゃあ……どこが可愛いと思う?」

「髪型とか、あと……その制服のリボンも似合ってるな」

「わぁ……なんか、夢でも嬉しいかも、それでそれで?」

「普通に顔が可愛い、めっちゃ可愛い、惚れそう」

「ひゃー、そんなに!?」

「うん、マジ」

「わーっ! うれしー!」


そう言って紫恵は頬を抑えながらにこにこと笑った。

うんうん、夢の中とはいえこんなに喜んでいる紫恵を見るのは嬉しいな…………。

あー、それでなんだっけ、俺は何をしようとしてるんだっけな…………あ、そうだ、他の人の夢を操作出来るかって話だったな。


…………あれ?

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