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俺だけ使える1万円で超能力を買える怪しいサイトを見つけたら人生が変わった件  作者: 黒飛清兎
第一章 『1日1回1万円で超能力が買えるサイト』
62/129

62話 消してない?



どうやら命は世界最大手の動画投稿サイトに歌ってみたの動画を投稿したらしい。

その歌は今話題の「キミイロ」という3人組のアイドルグループの曲らしい。


その内容なども教えてくれようとしていたが、話しているうちに何だか少し違和感を感じた。

俺はまさかと思いながらもその違和感について質問した。


「えっと…………もしかしてさ、まだ削除とかってしてないの?」

「え、うん、URL送る?」


俺の問いかけに、命はあっさりと頷いた。

あー、マジか。

話を聞いてみると、どうやら命は件の動画をまだその動画投稿サイトに投稿したままだそうだ。


「えっと……それは早めに消した方がいいんじゃないのか?」

「……ダメ」

「え?」


命は少し怯えたような様子でそう呟いた。


「なんで? もしかして消し方わからないとか?」 「違う……消したら、またあいつらが…………」


命はそこで言葉を詰まらせた。


「……嫌がらせしてくるやつらか」


命は頷く。

 

「なあ、それってどういうことなんだ? 詳しく話して欲しい」

「動画……消すなって言われてる。消したら……もっとひどいことするって」

「それは…………いつ、誰に言われたんだ?」


そんな脅しのようなことをされているだなんて……普通に考えて異常だ。

それが本当にただの脅しなのか、それとも本当にその行動を取ろうとしているのか俺には分からない、だからもう少し詳しく聞くことにした。


「……直接嫌がらせしてきた人が居たって言ったでしょ? その人が警察に連れてかれてちょっと経った時……その人からまた連絡が来たんだよね」

「それが……脅しの連絡だったって訳か」

「そう、だから私、怖くて…………」


冗談ではなく、本気で脅されてる、それは命の様子を見ればすぐに分かる。


「……命」


俺は命の手をそっと掴んだ。

震えている。

俺はうちから湧き出る怒りを飲み込みながら、冷静に話しかける。


「大丈夫、俺が守るから」


命が驚いたように俺を見上げる。


「だからさ、その動画、今すぐ消してくれ」


俺はまっすぐ命の目を見つめて言った。


「お前がこんなふうに怯える必要なんてないんだ、もし何かあったら、俺が全部どうにかするから」

「でも……」

「心配するなって。お前が安心して暮らせるように、俺が何とかする」


命の手を強く握りしめる。


「だから、頼む。消してくれ」


動画というのは言わば炎上の燃料にあたる部分だ、この部分が残っていればその炎上は永遠と燃え続けることになってしまう。

だから、動画を消して貰わないことには何も始まらないのだ。


命はしばらく迷い、首を横に振った。


「だめだよ、それってさ彩斗くんが危ない目にあっちゃうかもしれないんだよ?」

「そんなの100も承知だ、この前だって言っただろ? もっと俺を頼ってくれって」

「う、そうだけどさ…………わざわざまた危ない目にあうようなことはしなくていいんじゃない? 消さなかったら確かに怒る人は出てくるかもしれないけど…………消したら確実にまたあの人達が来る。それだったらまだ消さない方がいいと思う」


命は暗い表情でそう言った。

俺は命の言葉を聞いて、ぐっと奥歯を噛んだ。

確かに、命の言うことにも一理ある。

動画を消せば命が言っている嫌がらせをしてくるヤツらがまた来てしまうかもしれない。

そいつらは1度命に直接嫌がらせをしに来るような奴らなんだ、また来てもおかしくない。

だが…………放ってはおけない。


「……でもさ」


俺はゆっくりと、なるべく穏やかな声で言葉を続けた。


「このまま放っておいたら、いつまで経っても命は怯えたままだろ?」


命の肩がびくりと震えた。


「それにさ、こういうのは一度許すと、エスカレートすることが多いんだよ。今は“消すな”って言われてるだけでも、そのうち要求が増えていくかもしれない」

「それは…………」

「俺はそんなの、絶対に許せない。命がずっと苦しんで、好きなことも自由にできなくなって、それでいいわけがない」


俺はまっすぐ命の目を見つめた。


「だからさ、動画を消すことが危ないっていうなら、それ以上にちゃんと対策を考えればいい。俺一人じゃ心許ないかもしれないけど、警察だって、信頼できる人たちだっているはずだ。少なくとも、俺は絶対にお前を一人にしない」


命は迷っているようだった。何か言いたそうに口を開きかけては、また閉じる。

俺は、もう一度だけ、はっきりと伝えた。


「お前がこのまま脅しに屈して生きていくなんて、そんなの、俺は嫌だ」


命は少しの間黙っていたが、やがてそっと目を伏せ、小さく息を吐いた。


「……わかった」


その言葉が聞こえた瞬間、俺は少しだけほっとした。


「消す」


命は震える手でスマホを取り出し、画面を操作し始めた。

その指先はまだ不安げに揺れていたけれど、それでも確かに前に進もうとしていた。


「……よし」


そう言って、命はスマホの画面をこちらに見せた。そこには「動画の削除が完了しました」という表示が出ていた。


「……頑張ったな」


命は恐怖に打ち勝ってこの行動を取ってくれた、あとは…………俺が何とかするしかない。


「でも、これで終わりじゃないぞ。何かあったらすぐに言えよ?」

「……うん」


命は小さく頷いた。

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