53話 紫恵パパ
「はーい、じゃあ尋問していくよー」
「うぅ、お手柔らかに…………」
紫恵がにこやかにそう言い始まった尋問タイム、これは紫恵パパ(?)のやらかしてしまったことを吐かせるためにやっているらしい。
「じゃあまず命ちゃんには何をしちゃったの」
「…………ちょっとだけ髪を染めたいと言っていたのにバチバチのピンクの髪にしてしまいました」
「…………うん、されたね」
「それで、次は彩斗くん」
「…………おまかせと言われたので一番似合いそうな女の子にしてしまいました」
「…………まぁ、されたな」
「よし、有罪!」
さて、有罪判決が出てしまいました。
ま、別に俺はそんな怒ったりしてないし、どちらかと言えば感謝してるんだ、そこまでなにかして欲しいとかはないんだが…………。
俺がそんなようなことを言おうとした時、その前に命が口を出した。
「根浜さん」
「「ん? 何?」」
「あ、紫恵さんの方」
「紫恵さん……なんか言われ慣れてないからむず痒いかも」
確かに下の名前にさんをつけて呼ばれているところは見た事がない。
さんを付けるタイプの人は大体苗字につけるからな。
「この髪、結構気に入ってるし、そんなに怒らなくてもいいよ」
「ほら、こう言ってるし、許してよ!」
「あ、やっぱやっちゃって」
「どうしてっ!?」
愉快な人だな…………。
「けど、彩斗くんだって…………」
「あ、俺も気に入ってるし、良いよ」
「う、うぅ、2人とも……ありがとう…………」
紫恵パパは涙を流しながら俺達に抱きつこうとする。
命はサッと素早い身のこなしで回避したが、俺は間に合わず、抱きしめられてしまう。
お、お、こ、これは……本当にこの人男なのか?
「…………へー、君もやっぱり男の子なんだね」
おい何言ってんだこいつ。
紫恵パパは俺の腹部辺りを触りながらそう言っていた。
いや、まさかこいつそういう気が…………。
「いやー、僕なんてもう歳だからお腹あたりがぷにぷにしてきちゃって…………」
あぁ、そういう事か、びっくりした。
俺は少し筋トレをしているのもあるが、何より腹にほとんど脂肪が付いていない、そのため俺の腹にはむき出しの筋肉があるため、少し割れているようにすら見える。
もっと前だったら割れる以前に筋肉すらないせいで一切何も無いように見えたが、今ではほんの少しとはいえ筋肉がある、そのため筋肉があるように感じるのだろう。
「……とりあえず離れてください、恥ずかしいです」
「いいじゃないか、同性なんだし!」
いやまぁ確かに本当の意味でも見た目という意味でも同性だけれども!
いくら本当は男だからと言って俺の理性が持たないんだよ!
はっきり言おう、この人は可愛い、だからそんな人に抱きつかれ続けるというのは俺の精神に莫大な負荷をかけてしまうのだ!
「ふふふ……彩斗くん、意外と恥ずかしがり屋さんなんだね?」
紫恵パパは俺を抱きしめたまま、からかうような笑みを浮かべている。
いや、やめてくれ、本当に無理だから!
「……だから離れてくださいってば!」
俺はなんとか紫恵パパの腕から逃れようとするが、意外にも力が強くて簡単には離れられない。
見た目こそ華奢な雰囲気だが、この人、実は結構力があるんじゃないか……?
「おっと、そんなに暴れないでよ。僕だってもう若くないんだから、転んだら危ないんだよ?」
いやいや、そんな大げさな。つーか、どこをどう見ても若々しいだろ、この人俺より肌綺麗だし。
俺がどうしようと困っていると、いきなり紫恵パパの体がビクンと震えて俺の元から跳ねるように飛び退いた。
「…………なんだい今の視線は、僕の後ろからものすごい殺気が…………」
「いいから、早くご飯にしようよ!」
紫恵がそう言うと紫恵パパは「はいっ!」と少し怯えたようにキッチンの方へと走っていった。
「ごめんね、うちのお父さんが……いっつもあんな感じなんだよね」
「そ、そうなのか、いやー、うん、大変だった大変だった」
「…………その割には彩斗くん、すごい楽しそうだったけど」
「…………なんのことかな?」
命が俺の事をジト目で見てくる。
いや、まぁたしかに楽しかった、だってあの人性格はいいとしてすごい綺麗なんだもん、それにお腹がぷにぷにとか言ってたけど、それもなんだか彼の華奢な体に魅力を追加しているような気がするし…………。
ただ、大変だったのは本当だ、あのままだったら色々と不味かった。
「はい、みんなご飯だよー」
紫恵パパの声に誘われて、俺たちは食卓へと向かった。
キッチンの方からは、いい香りが漂ってきている。
「おー、美味しそう!」
テーブルの上には、美味しそうな料理が並んでいた。
肉じゃがに、だし巻き卵、味噌汁、焼き魚……うん、見事な和食のラインナップだ。
「ふふん、僕の料理の腕前も侮れないでしょ?」
紫恵パパが得意げに胸を張る。
確かにこの品数、そして見た目の完成度を見るに、相当の腕前だ。
「すごい……料理上手なんですね」
「まぁね、昔から家のことは僕がやってたからさ!」
紫恵パパはにこやかに笑いながら、俺たちにお箸を渡してくれた。
「じゃあ、いただきます!」
「「「いただきます!」」」




