表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺だけ使える1万円で超能力を買える怪しいサイトを見つけたら人生が変わった件  作者: 黒飛清兎
第一章 『1日1回1万円で超能力が買えるサイト』
PR
46/129

46話 命の部屋


「志賀さん…………居るんだね?」


俺はドアをノックし呟く。

中からはやはり音は聞こえてこない。


「志賀さん、入るよ?」


俺は中に入ろうとする、が、鍵がかかってしまっていて中に入れない。


「志賀さん、志賀さん! お願いだ、話をしてくれよ……!」


両目からは涙が溢れ出てくる。

俺はドアに縋るようにする。

もう、もしかしたらというだけでも俺は動いてしまうほど、追い詰められていた。


「お願いだ………」


俺はそう何度も何度も呟いた。


…………その時、ふと背後に視線を感じる。

振り返ると、アパートの廊下に誰かが立っていた。

小柄な中年女性だ。


「……あの、ちょっとあなた……何をしてるの?」


不審そうな目でこちらを見てくる。


「えっ、あ、いや……俺、知り合いの……」


俺が慌てて弁解しようとすると、女性の顔はますます険しくなる。


「知り合い? そんなに何度もドアを叩いて、泣きながら叫ぶ知り合いなんて、ちょっとおかしいんじゃない?」

「いや、そんなつもりじゃ……」

「とにかく、警察呼ぶわよ?」

「っ!?」


背筋が冷たくなる。

このままじゃ本当に通報される……!


「ちょ、ちょっと待ってください! 本当にただの知り合いなんです! 志賀さんが、急にいなくなって……それで……!」

「知らないわよ! そんなの家の中でやってちょうだい! 迷惑なの!」


怒鳴るような声がアパートの廊下に響く。

やばい、これ以上騒げばマジで警察沙汰になる……!

だが、この状態で命の部屋から離れるともうどうやっても会えなくなってしまうかもしれない、そうなったら俺は…………。


その時、俺とその女性以外の…………1人の少女の声が聞こえた


「…………ごめんなさい、その人私の知り合いです、ご迷惑をおかけしました」

「……………あぇ」

「本当なの?」

「はい、すいません」

「…………命」


俺は先程まで閉ざされていたドアから出て来た人物に目が釘付けになる。

……命だ。


「あなたね、この男にストーキングでもされてるんでしょ? それだったら本当に通報した方がいいわ」

「いえ、本当に大丈夫なんです、少し喧嘩してしまって…………」

「…………はぁ、痴話喧嘩は他所でやってちょうだい、ただでさえ夜勤明けで眠いってのに…………」

「はい、すいません」

「っ、す、すいませんでした」


中年の女性はブツブツ言いながら自分の部屋へと戻って行った。


命が静かにこちらを振り向く。


「……部屋に、入る?」


その言葉に俺は一瞬、息を呑む。

まさか、またこうして直接話せる機会が来るとは思わなかった。


「い、いいのか?」


命は軽く頷くと、扉を開けて中に入る。

俺は一瞬ためらったが、今ここで逃げたら何も変わらないと思い、意を決して命の後について部屋に入った。


部屋の中は薄暗かった。

カーテンは閉め切られ、空気はどこか重い。

かすかに感じるヘッドフォンから聞こえる音楽。

部屋の隅にはギターケースが無造作に置かれている。


「座って」


命がそう言って、机の前の椅子を指さす。

俺は静かに頷き、椅子に腰を下ろした。


しばしの沈黙。


命は冷たい視線を俺に向けながら、何かを考えているようだった。

俺は思い切って口を開く。


「……なんで、バイト辞めたんだよ」


命はわずかに目を伏せた。


「……別に。ちょっと疲れたから」

「嘘だ」

「嘘じゃないよ」

「嘘だ、志賀さん、君ががそんな簡単に投げ出すようなやつじゃないのは知ってる」


命の眉がぴくりと動く。


「知ったようなこと言わないで」

「だって、本当のことだろ!」


思わず声を荒げる。

命は一瞬、驚いたような顔をしたが、すぐに表情を曇らせた。


「……私のこと、何も知らないくせに」

「知らないけど、それでも分かることくらいある」


俺は拳を握りしめる。


「命、俺のこと避けてただろ。俺、何かお前にしたか? もし、もし何か悪いことしてたなら、教えてくれよ……!」


命はぎゅっと唇を噛みしめる。

そして、小さく息を吐くと、静かに口を開いた。


「……綾瀬くんは何も悪くない」

「……え?」

「全部、私が悪いの」

「……なんで?」


命は俺をじっと見つめた。

その目には、普段の雰囲気とは違う、どこか感情の揺らぎが見えた。


「だって…………綾瀬くんが私に優しくしてくれるから…………」

「…………え?」


意味がわからなかった。

優しくしてくれたらか嫌いになった? 普通逆じゃないのか?


「これ以上優しくされたら……離れなく……なっちゃうじゃん」

「離れなく…………」


命は下を向く。

長い前髪が顔全体を隠し、その表情は見えない。

しかし、時より漏れ出る嗚咽がその感情を鮮明に映し出していた。


「志賀さん……だいじょう……」

「だめ! それ以上優しくしないで!」


命が勢い良く顔を上げる。

命のその綺麗な瞳が俺の瞳と合う。

その瞳は俺と同様涙に濡れていて、カーテンの隙間から僅かに漏れ出る光を反射しきらりと光っていた。


「っ、ごめん、いきなり怒鳴ったりして」

「…………いや、大丈夫、俺こそさっき騒いじゃってごめん」


お互い少し気まずい時間が流れる。


「志賀さん……いや、命、お願いだ、何があったか話して欲しい」


俺は祈るように頼んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
こいつのちょいちょい下の名前で呼び捨てにするところ本当に気持ち悪い 自信ない陰キャベースなのはわかるが、ならこう言う肝心な時に名前で言い直すと言うことはできないと思う。やったとしても気持ち悪い葛藤を挟…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ