43話 ピンク
『おう……そりゃあれじゃないか? お前が悪い……のか?』
『うぅ、やっぱりそうですかね?』
俺はクロガネさんに最近の命との事を相談していた。
人の名前をぼかして個人情報がバレないように気をつけながらだったから少し分かりにくくなってしまったが、それでもクロガネさんは真摯に相談に乗ってくれた。
『大体な、女の子に避けられるなんて相当だぞ? お前、何やったんだよ』
『それが、全く心当たりなくて…………』
俺はそのままのことを伝えたが、本当にそうなんだったら避けられる事は無いとの事だった。
『ま、安心しろよ』
『というと?』
『お前がリアルで居場所が無くなっても俺がここで待ってるからよ!』
『全然安心出来ないですよ!』
チャットではこう言ったが、クロガネさんがこうやってゲーム内だけでも一緒に居てくれるというのは本当に俺の精神衛生上必要な事だ。
リアルでどれだけ孤独になったとしてもこの幻星というゲームの世界には仲間が居る、そう思うだけでもかなり救われるのだ。
『ま、相談はこれくらいにして遊ぼうぜ! ずっとうだうだしてるよりそっちの方がいいだろ?』
『…………はい!』
その日は嬉しくなってしまってぶっ続けで夜までゲームをしてしまった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
次の週の命とバイトが重なるはずだった2日間、その間命はバイトに来なかった。
あの真面目な命がここまでバイトを休むなんて考えられない。
店長に聞いてみると今度は病欠ではなく、個人的な用事で少し休むとの事だった。
まぁ、分かっていたことだ、これまで徹底的に避けられ続けているんだ、いきなりまた会えるなんて思っていない。
ただ、恐らく休み続けるの言うのもきついはずだ。
クリスマスの日、命は大量の廃棄を持ち帰っていたみたいだし、お金は無いはずだ。
それなのに何日も何日もバイトを休んでしまってはお金も無くなるだろうし、いつか絶対にバイトに来るはずだ、それを待ち構えていればきっといつか会うことが出来る。
…………そうだ、今年は新型コロナウイルスの影響で夏の期間中にかなりの期間学校が休みになってしまったため学校が始まるのがいつもより早いらしい。
その時、俺が一応少しだけなら話せる奴に相談してみよう。
クロガネさんには詳細な事は話せないから、そこまで深くまで相談に乗ることは出来ない。
だが…………多分、あいつだったらしっかりと相談に乗ってくれると思う、なんだかんだ真面目で良い奴だし、俺がこういう相談をしてもからかわずに聞いてくれると思う。
と、言うことで…………。
「…………って、訳なんだ、根浜さんはどう思う?」
「んー、どうだろー?」
俺はいつもよりも早く学校に来て紫恵にその話をした。
思った通り、紫恵はちゃんと真剣に相談に乗ってくれた。
「…………ごめん、やっぱり分からないかな、彩斗くんの言ってる感じだとやっぱり原因とかも無いと思うし…………」
「…………命ちゃんって、あの時、一緒に居た子なんだよね?」
「そうだけど……どうかしたのか?」
「あぁ、いや、ちょっとね、ほら、あの黒板の欠席のところ見てみてよ」
俺は紫恵に促されるまま黒板の欠席欄の所を見た。
そこには……志賀の文字があった。
「……あの子も志賀命っていう名前なんだよね、けど……見た目が全然違うからさ」
「そうなのか」
まぁ、同姓同名の人間なんでちょくちょく居るしそれは恐らく普通に偶然なのだろう。
だけど……こういう事があると少しもしかして、と考えてしまうな。
「ほら、クリスマスの時にカラオケ行った時にもいたじゃん、あのピンクの髪の子!」
「あぁ、そういえば…………」
あのクリスマスパーティに何人もの女の子が来ていて、その中でも異色の存在感を放っていたので何となく覚えている。
すごい美人さんで、もしかしたらこの目の前に居る紫恵にも勝るかもしれないほどの美貌を誇っていた。
だけど、なんかどこかで見た事が…………。
「っ!? そうだ、あの時…………!?」
「え、えっ、どうしたの!?」
「紫恵、その子の電話番号を俺を渡してくれるか?」
「えっ、ちょ、名前……てか、その子と彩斗くんが言ってる子は違うんじゃなかったの!?」
クリスマスパーティの時とバイトの時、見た目は全然違った。
だけど、俺には分かる。
あれは命だ!
「良いから、多分、その子と命は同一人物なんだ!」
「え!? 本当!?」
少し前、俺が『ビューティーコンサルタント』を手にした時、試しに命の数値を見てみようとそこにはピンクのインナーカラーがあると書いてあった。
…………もしかしたらそのピンクのインナーカラー、髪型次第では外に見えていたんじゃないか?
あのピンクの髪の子は結構髪を弄っていたし、黒の部分もあった…………。
「あぁ、すぐかける、早く渡してくれないか?」
俺は紫恵に掛け合う。
しかし、紫恵は少し渋っている様子だった。
「彩斗くん…………やっぱりね、女の子の連絡先を男の子にあげるのはちょっと抵抗がある……かな?」
「…………う、確かに」
「だからさ……私が掛けてあげるよ」




