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神社の学校  作者: 碧蜜柑


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11/11

稲妻

東北地方のある地域では、一週間ほど、毎日雨が降ったりやんだりを繰り返していた。


まだ、春が終わり初夏(しょか)に差し掛かったころ、梅雨(つゆ)前の時期。


田植えや、種蒔(たねま)きなど、忙しい時期である。


小雨ならば、かまわず作業する農家の人々も、さすがに毎日ではまいってしまう。


ほんのわずかな時間の晴れ間を喜び仕事していた。


特に、畑は、あまり土が湿っていると仕事にならない。


そろそろ、一日晴れの日が欲しいと思っていた頃だった。


空がにわかに雷鳴(らいめい)を帯び、雲を引き連れて、大雨をもたらした。


雷雨が一気に空を(おお)いつくした。


「雷様が行ったら晴れるべな。」


人々は家にこもり、静かに雷雨が治まるのを待っていた。



その日、神社にまた客神(きゃくじん)があった。


兎龍(うりゅう)様、お越しいただきありがとうございます。」


兎龍は、神社の前で待っていた雪子をじろりと(にら)むとため息をついた。


「別に、お前に呼ばれたから来たのではない。龍神(りゅうじん)に用があるから来たのだ。龍神がこれほど忙しくなければ、別に一月でも二月でも放っておくわ。」


兎龍の言葉に雪子は身じろぎもせず、淡々(たんたん)と答えた。


「存じております。機が重なり幸いでございました。」


「そう。」


(白々しい!龍神が邪魔だから早く連れて帰れと顔に書いてある!)


兎龍は、そう思いつつも顔には出さずに、奥の結界内に足を踏み入れた。


そこには、もう一つ深い結界があり、


「申し訳ありません、ここから先は神々の領域(りょういき)ですので、私はお(とも)できません。」


そう言って、雪子が兎龍を先へ(うなが)した。


兎龍はその結界の中へ静かに入っていった。


リンリンリン・・・・・・


鈴の音が来客を知らせた。


兎龍の目に飛び込んできたのは、龍の姿で酒をあおりとぐろを巻いて上機嫌の龍神にひたすら龍神の横で食事や酒を配膳(はいぜん)する蛇神の姿だった。


「兎龍様!ようこそお越しくださいました!」


蛇神は(やっと助けが来た!)というような目で兎龍を見つめてきた。


「これは、どういうことだ?主のお前が自ら配膳や(しゃく)などをしているのか?眷属(けんぞく)などはおらぬのか?」


兎龍の言葉に、蛇神は困ったように苦笑した。


「まだ、神と等しくなれる眷属がいないのですよ。」


ふと、兎龍は雪子を思い浮かべた。


力は申し分ない、兎龍に動じない胆力(たんりょく)もある、とすれば、御霊(みたま)か。


「雪女が眷属になるのはそれほど大変なのだな。」


「おっしゃる通りです。」


兎龍は雪女の性質についてあまり知らない。


もともと山の神の庇護下にあった精霊であろうとは思っていたが、精霊ならば、生き物よりよっぽど神に近い存在だろうにと思うだけだ。


「うりゅ?」


酔っぱらった龍神が兎龍をみつけた。


「何が兎龍だ!このでれすけが!さっさと家さかえっつぉ!」


兎龍は龍神の体の一部を何度も何度もひっぱたいた。


「いだだ・・・・・・、わかったわかったから・・・・・・。」


龍神は兎龍を背中に乗せ、そのまま勢いよく飛び出した。


馳走(ちそう)になった。」


「うちの神がご迷惑をおかけしました。」


龍神と兎龍はそう言うと空の彼方へ消えていった。




「やっとお帰りになられた・・・・・・。」


蛇神は、最奥の結界を解いて、雪子を招き入れた。


「すまなかったね、神格(しんかく)を考えると、最上の結界でおもてなしするしかなかったんだ。」


主の言葉に、雪子はにこりとほほ笑んで、


「私にとっては貴方が一番大事ですが、神格を考えれば仕方のないことです。」


と答えた。


「雪子、いい加減私に対する執着(しゅうちゃく)を捨てなさい。それではいつまでも神にはあがれないよ?」


「神に上がれなくとも、お役に立てれば充分です。」


ニコニコと笑顔を見せる雪子に困った顔で笑顔を返す蛇神の姿があった。



ゲリラ豪雨と雷の後、空はピンと晴れ、小鳥たちの歌声が聴こえていた。






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