15、不安の前夜
令和スタートをきっかけにまた少しずつやっていきます。
気長に待っていただけると幸いです。
・・・俺達が学院に入学してから約一週間。
俺は少しづつ周りとも打ち解け、ルームメイト意外ともよく交流をするようになった。
元男の俺からすると友人の比率が女子に傾きがちなのはいかがなものか。
今は女なのだから向こうから話しかけてくる。
男子どもは俺を前にすると大体まごついて黙ってしまう。ヘタレか?
(・・・男友達も欲しいよなぁ・・・
今の俺じゃ難しいだろうけど・・・中身は男だし。
前世でも周りは男友達ばっかだったし・・・)
魔法の講義を軽く聞き流しながら俺は色々と考え事をしていた。
前世では怖がられて昔からの友人くらいしかいなかったのだ。
ぼっちでこそなかったがリア充とも言えなかった。
俺のこの世界での目的には友人をたくさん作るというところにもあるのだ。
カグラ、エリスとはもう気の置けない友人である。
アルクとの関係もまあ、悪くはないだろう。
・・・結局、この時間は脳内会議で終わってしまった。
講義の内容は何一つ頭に入っていないが、まあ魔法は嫌でも使えてしまうし大丈夫だろう。
「えー、ここで少し報告をします。
10日後、剣術・魔法講義受講者のうち、希望者で『ファルム大森林』で実習を行います。
希望者は五日後までに申請を・・・」
ファルム大森林。
この王国から少し離れた、広大な面積を持つ森林。
低級の魔物の巣が点在しており、新米ハンターや新米騎士、戦闘系の学生が自身の剣術・魔法を鍛えるために訪れることも多いいわゆるチュートリアルステージだ。
・・・というのは、俺が事前に校長から聞かされた話だ。
生徒の代表として、俺は強制参加らしい。
別に行くのは構わないが、できるだけ目立たないようにしなくては。
うっかり森を焼け野原に~なんてことも冗談じゃなくなる可能性もあるしな。
だがまあ弱い魔物しか出ないらしいし大丈夫だろう・・・
これに対し、俺以外の生徒の反応は色々だった。
参加に意欲を示す生徒もいたが、もちろん嫌がる生徒もいた。
そりゃあ、強制でもないしそうもなるだろう。
はぁ・・・とため息をつき、俺は立ち上がった。
このイベントに生徒を誘うことも俺の役割なのだ。
「・・・私は学年長として、生徒たちのレベルを文・武共に上げたいと思っています。
ですので、できる限り参加をお願いします」
俺がそう呼びかけると、今まで難色を示していた生徒たちの多くもやる気を示しだした。
どこの世界でも男という物は単純な生き物の様だ。
俺は半ば呆れて肩を落とすと、エリス・カグラと部屋に戻った。
「凄かったです・・・シャルロットさんが声をかけた途端皆やる気に・・・」
「ええ、大半は殿方でしたが。
それだけシャルロット様に魅力があるということでしょう」
「いや・・・それで参加者が集まっても正直嬉しくはないんですが・・・」
そりゃそうである。男が男に狙われるのは圧倒的にノーだ。
別に社会的少数派をどうこう言うつもりもないし、今の俺は紛れもなく女なのだが・・・
ほら、何か・・・嫌じゃん?
「あぁ、因みに、言うまでもなく私も参加いたしますよ。
より剣の腕を磨く良い機会です。
低級の魔物に後れを取るようでは兄様に顔向けもできませんし」
「私はちょっと・・・
勉強するためにここには来ましたし・・・
カグラさんはお兄さんを尊敬してるんですか?」
「ええまぁ、剣を扱う人間としては。
ですが兄様は技の研鑽にもはや取りつかれていて・・・
あまり兄妹間の交流もありませんし」
「何ですかそれ・・・
私の家では兄は・・・まぁ・・・うん。
・・・まともでは・・・ないか」
「シャルロット様も苦労があったようですね・・・」
俺たちは兄への複雑な思いを共有して、それを機に話が色々と脱線していった。
しばらく駄弁った後に、俺はあることを思い出した。
「・・・そういえば、明日ですね。私たちの初めての生徒会議」
「ああ、そうでしたね・・・兄も居るでしょうし乗り気にはなれませんが・・・」
「うぅ・・・改めて緊張してきたです・・・」
「まあ、そう難しいことは要求されないと思いますが・・・」
生徒会議とは、名前の通り生徒同士の会議である。
勿論、俺のような学年長とその補佐・・・生徒会の生徒で、だが。
ひと際優秀な生徒ばかり集められることから、一般の生徒からは魔境とかなんとかいわれているようだ。
二年の学年長がカグラの兄、リョーマとのことだ。
色々と彼のことについて知るいい機会かもしれない。
後は利己的な貴族とかいそうという勝手な思い込みがある。
この予感は当たらないでほしい。面倒そうだし。
「そういえば、私たち生徒代表のもう一人の募集で結構集まったみたいですよ。
その中で信頼に足る生徒を私たちで選んでいいと」
「また適当な・・・初対面でそんなの分かるわけないないです・・・」
「勝手に決められるよりはましだと思いますが・・・
確かにかなり手抜きではありますね」
「おそらく人数が想定を上回っていたのでしょう。
貴族の方々も多く無碍に出来なかったとか・・・」
「責任の押し付け・・・」
その後も雑談を続け、気づけば夜になっていた。
もはやこれが最近の日課となりつつある。
ガールズトークというほど華々しいものではないが、貴族同士の格式ばった会話でもない気兼ねない友人との会話である。なかなか楽しいものだと思う。
そして食事を取り、俺たちは床に就いた。
室内で繰り広げられる寝間着への三人の着替えにももはや慣れた俺は、自分も同じように着替え、ベッドに向かった。
(さて・・・何もなければいいんだがな・・・」
俺は一抹の不安を感じながら、その日を終えた。




