13、はじまり
入学試験終了後、俺たちは試験結果を待つために寮の部屋で休むことになった。
驚きなことに、翌日には結果が出るそうだ。
そういう魔法でもあるのだろうか?
だとしたら魔法ってやつは本当に万能ですねぇ。
「はぁ~・・・やっとゆっくりできるです~・・・」
「ふふ・・・安堵できるのは明日の結果発表が終わってからですよ、エリス様」
「そ、そうですよねっ!すみませんです!」
「だからといってあまり緊張していても良いことはないですよ?」
「は、はいっ!」
俺とカグラは二人してエリスの無邪気で可愛らしい様子にやられていた。
やはりエリスには人を癒す何かがあるような気がしてならない。
「あぁ、そういえば。
カグラさん、剣術の試験凄かったですね!試験官の方を圧してたじゃないですか!」
「あぁ、ご覧になっていましたか。
いえ、私などまだまだです・・・兄上と比べれば・・・」
カグラは少し悔しそうな表情を浮かべながら言った。
「兄・・・周りの方々も言っていましたね。
『剣鬼』リョーマ・・・だとか」
「えぇ・・・悔しいですが、兄上は真正の天才です。
恐らく我々の家が始まってから一番の剣豪ですよ。既に父上も凌駕しています」
「・・・お兄様はこの学院に?」
「はい。一学年上です。
・・・申し訳ありません。少々自分語りが過ぎましたね・・・」
「い、いえ。訊いたのは私ですし・・・」
少し空気が重くなりそうだったので俺はほかの話題を探した。
そして俺の視界の隅に一人ボーっとしているアルクがいるのに気付いた。
「そういえば、アルクさんの魔法も凄かったですね!
中級魔法も難なく使えてたじゃないですか」
「あ、私も見たです!凄かったですよ!」
「・・・え?そ、そう・・・」
アルクは少し頬を染めながら言った。
やはりどこか可愛い所があるよなぁ、と思った。
「・・・」
・・・後ろでカグラが殺気を放っていたのは気にしないでおこう。
この子は普段は丁寧で清楚な感じなんだけど、何か怖いところがあるよなぁ・・・
「・・・両親から習ったのよ。
・・・そういう家系だしね」
後半少し目をそらしていたがどうしたのだろうか・・・
まあ、人間誰でも人に言いたくないことはあるよな。
あんまりそういうプライベートな部分に突っ込むのはダメだろう。
「・・・何よ?」
「ふふっ。いえ、初めてちゃんとお話しできたな、と」
「・・・物好きな子ね・・・」
そう言うと、また頬を赤らめてプイっと顔を背けてしまった。
・・・多分、人と関わるのが苦手なのだろう。
何だか友人の新しい面を見たようで少し嬉しくなった。
この日も主に俺・エリス・カグラで話したり、たまにアルクも加わったりなどして過ぎていった。
他に特筆する点は・・・アルク以外の三人で食事したことくらいだろうか。
アルクも誘いはしたが、アルク自身の拒否とカグラの殺気から断念した。
モルガナ学院には、施設内に飲食店や売店がいくつかあり、飲食店での食事は全て無償で食べられるようになっている。
俺たちは三人で店の一つに入り、席に着いた。
シャルロット達は知りえないが、店に入った瞬間店内の人々の視線を奪ってしまっていた。
まあ美少女三人組である。仕方ないっちゃ仕方ない。
転生してからそこそこ食事をとってきたが、正直言って物足りない。
・・・いや、マズい訳ではない。
だが前世の料理が美味しすぎた。
やっぱり発展してたんだな、食文化。
などと考えていたが、友人との食事でそんな不満は吹き飛んでいた。
ガールズトークという訳ではないが、この二人とは出会ってから早々に仲良くなれた俺にとっての大切な友人である。
前世では怖がられたりして昔からの友人しかいなかったしね。
大切にしなくては・・・
・・・という一日を過ごし、俺たちはあっという間に次の日を迎えた。
そして俺達は一緒に合格者の名前が貼り出されている掲示板の前に向かった。
「うぅ・・・緊張してきたです・・・大丈夫でしょうか・・・」
「大丈夫ですよエリスさん。自信を持ってください」
と、昨日もやったような会話をしながら、俺たちは掲示板にたどり着きそれぞれの名前を探した。
周囲にも多くの生徒が集まっており探すのに時間がかかったのだが、
「あっ!ありました!良かったぁ・・・!」
「あぁ、おめでとうございま・・・えっ!?」
俺は掲示板にエリスの名前を見つけ驚いた。
それぞれの分野でトップの成績を収めた生徒は一番上に特別に掲載されているのだが。
座学・・・エリス
魔法・・・アルク・フォン・ヴェルダンディ
剣術・・・カグラ・シノミヤ
(うわすっげ・・・俺のルームメイト全員各分野の天才じゃねーか・・・)
アルクとカグラはともかく、エリスには驚かされた。
ただ可愛らしい小動物ではなかったのか・・・
平民がここまで上り詰めるには壮絶な努力が必要だったであろう。
これはエリスに対する評価を改める必要があるだろう。
因みに、俺も問題なく合格していた。
後に知ったが、平均で言うと俺が全体ではトップだったらしい。
そんなだからいわゆる入学式で代表挨拶をするように言われるのだが、それは後の話である。
気を落として帰っていく連中を尻目に、俺たち合格組は教師陣の指示で校舎内に入っていった。
いくつかのグループに分かれた後行われたのは、
「おぉ~・・・すごいです・・・支給されるものが既に私物を遥かに上回ってるです・・・」
エリスが一足先に数着の学院の制服を両手に抱えて出てきた。
・・・そう、制服の支給である。
この学院、すごいのが学費以外の費用は何も掛からないのだ。
制服しかり、教材しかり。
勉強に必要なものは全て支給される。古くなったら交換も可だ。
まあその分、学費が相応に高額なのだが。
そして成績トップグループである俺を含めたルームメイトたちはその学費までカットである。
もはや運営が若干心配であるがまあ大丈夫だと信じよう。
その後、俺も採寸し、サイズの合った制服を支給された。
・・・今更だが、一応女でも中身は男なので、女子の制服を持っていくのは何となくきまりが悪かったりする。もうかなり慣れはしたのだが・・・
(・・・これ思いっきり高級素材だなー・・・触り心地が違う・・・)
シャルロット自身の衣服も同等以上に上等なものだったし、前世の一般家庭の洋服とは違うな。
そして、寮の部屋割りだが・・・今までと同じメンツだ。
内心ホッとした。
多分この組み合わせがベストだったと思うし。
カグラとアルクの関係は・・・まあ、うん。
時間が何とかしてくれることを祈ろう。
俺が寮の部屋に戻ると、他の三人は既に帰ってきていた。
「・・・こ、この様な装いが私などに似合うのでしょうか・・・
そ、それにこのスカート・・・丈が短すぎないですか・・・?」
「はわ・・・とっても素敵ですよカグラさん・・・!」
・・・カグラとエリスが早速制服にそでを通していた。
カグラはスカートを抑えながら頬を染めてモジモジしていた。
何か凄く・・・可愛いです。
お淑やかな和装も良かったがこちらもメチャクチャ可愛い。
エリスは言わずもがな。
小動物っぽさに磨きがかかった気がする。
地味ーに、アルクも着替えていた。
制服が気に入ったのか、少し頬を緩ませている。
なんだかんだ言って表情も豊かで分かりやすい。
「シャルロットさんにも着替えてみてほしいですよ!」
と言われたので、俺はベッドに備え付けられたカーテンの奥で着替えた。
流石に慣れたもので、着替えは滞りなく完了した。
俺がカーテンを開けて出ていくと、三人はほぅ、と声を漏らした。
「はわわ・・・お人形さんみたいです・・・」
「ふむ・・・やはりシャルロット様は美しいですね・・・
どのような装いでもお似合いになるのでしょう・・・羨ましい限りです」
「・・・アンタ男には気をつけなさいよ」
ベタ褒めされた。
嬉しいやら嬉しくないやら。
「い、言い過ぎですよ・・・皆さんの方がよくお似合いですよ」
「いえっ!私なんかよりずっっっと素敵ですよ!」
「そうです。そもそも私にはこの様な派手な物は・・・」
「さっきからお似合いですって言ってるじゃないですか!」
そうして俺たちは笑いあった。
・・・やはりこのメンバーに巡り合えたのは幸運であった。
翌日から始まる学生生活に、俺は思いを巡らせながら時を過ごした。




