68 ローンウルフ4-7
『駄犬⇒金狼』 第1巻、発売中です!
書籍化にあたり、大幅な加筆修正をさせていただきました!
プリムラやマザーのサービスシーンはもちろんのこと、プリムラがおじさまを好きになるキッカケとなった『初めての体験』が明らかに……!
また勇者ざまぁも新たに追加! あの勇者の最期が描かれています!
さらに全ての始まりとなった、ゴルドウルフの『初めての追放』がついに明らかに……!
若きゴルドウルフの姿は必見です!
そして、第1巻の最大の目玉となるのは、勇者の始祖である、ゴッドスマイルが『初めての登場』……!
世界最強勇者の姿を、ぜひその目でお確かめください!
まさに第1巻は『初めて』だらけ……!
目にしたあなたはきっと、『初めての衝撃』を感じていただけることでしょう!
そして読んでいただければWeb版がさらに楽しくなりますので、ぜひお手にとってみてください!
いつもなら目もくれず素通りする個人商店であったが、今日はなんだか様子が違っていた。
「うっひゃっひゃっひゃっひゃっ! ちょっと止めてくれるかなぁ?」
バンクラプシーは御者に向かって声をかけると、馬車は店の前で停車する。
馬車の窓から見えるショーウインドウは、多くの客で賑わっていた。
その様子をひととおり伺ったバンクラプシーは、ひとりで爆笑する。
「うっひゃっひゃっひゃっひゃっ! そういうことだったのか! おい、もういいよ! っていうか、引き返してくれ! 本部に戻ろう!」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ゴージャスマートの本部に取って返したバンクラプシーは、部下に指示して、売上が下がった地域にある、近隣の個人商店の動向を調べさせた。
この世界において、ライバル店の売り上げを調べるには、おもにふたつの方法がある。
ひとつめは、ライバル店に調査員を派遣する方法。
もうひとつは、問屋に問い合わせる方法である。
通常、冒険者の店というのは問屋から商品を仕入れている。
勇者の権限を使って、どの個人商店にどのくらいの商品を仕入れているかを聞き出すのだ。
仕入れがわかれば売上の検討も、おおよそつく。
バンクラプシーはこれらのデータに目を通し、確信した。
「うっひゃっひゃっひゃっひゃっ! ノータッチちゃん、売上減少の理由がわかったよ!」
副部長室で向かいあわせになって、バンクラプシーは切り出した。
「そうですか。ではそれを解決してはいかがですか?」
「まぁたそうやって無関係ぶる! 俺たちはブタフトッタ様に言われてるだろぉ? 一蓮托生だって! 俺が失敗したら、ノータッチちゃんもタダじゃすまないんだからさぁ!」
「そうですか。まぁ、いちおう伺いましょう」
バンクラプシーは書類を紙飛行機にすると、少し離れたところにあるノータッチに向かって飛ばした。
窓から吹き込む風に乗った紙飛行機は、ノータッチの机にふわりと着陸する。
ノータッチは紙飛行機をほどき、折り目のついた書類に目を通した。
「そうですか。個人商店に客を奪われていると」
「うっひゃっひゃっひゃっひゃっ! そうそう! この国の割合からすると、今まではゴージャスマートのシェアが99で、のこりの1が個人商店だったんだけどさぁ、それが今は98対2くらいになってるんだよねぇ!」
「そうですか。割合としては1増えただけですが、2倍になったということですね」
「そうそう! この国のゴージャスマートは安定してて、ずっと同じ売上を出してきたじゃない? だからたった1でも目減りすると、すごーく目立つんだよねぇ!」
「そうですね。でも原因が個人商店にあるのであれば、『開拓』担当の私はノータッチでいいということですね」
「そりゃまあそうなんだけどさぁ! 『運営』の俺が動くんだから、そっちも何かやったほうがいいんじゃない? 『やってる感』って大事だと思うよぉ?」
「そうですか。まぁ、考えておきましょう。で、バンクラプシーさんはどう動くつもりなんですか?」
「うっひゃっひゃっひゃっひゃっ! それ、俺に聞くぅ? そういえば長いことなーんにもしてこなかったから、俺がなんて呼ばれてたか、忘れちゃったのかなぁ?」
「いいえ、もちろん覚えていますよ」
「あ、覚えてくれてたぁ? 自分とこの売上を上げるには、そうするのが手っとり早いからねぇ! うっひゃっひゃっひゃっひゃっ!」
セブンルクス王国の『ゴージャスマート』における副部長が、2人体制というのは前述のとおりである。
彼らは担当によって別れていた。
新規店舗を出店する『開拓』担当、ノータッチの役割である。
そしてすでにある店舗の指導を行なう『運営』担当、バンクラプシーの役割である。
セブンルクス王国のゴージャスマートはずっと高い水準の売上を維持していたので、彼らは何もする必要がなかった。
というのも、何かあれば国王が『特定店舗』を優遇する政策をもたらしてくれていたからだ。
しかしここにきて、初めての売上減少を記録する。
それは僅かなものであったが、『初めて』だったからこそ、大いに目立ってしまった。
それでも、いつもの勇者であるなら、この減少を『たいしたことない』と言って放置していただろう。
そして手の付けられないところまで被害が拡大してようやく、自分の初動の遅さに気付くのだ。
しかし、しかしである。
彼は違った。
「うっひゃっひゃっひゃっひゃっ! 商売は何事も『スピード感』が大事なんだよねぇ!」
そう……!
彼もまた、『ゴルドウルフチルドレン』であったのだ……!
彼は、かつてゴルドウルフから学んだ『自分の店を繁盛させる』ノウハウを魔改造していた。
『ライバル店を潰す』ノウハウに……!
その技を駆使して、彼は成り上がっていく。
ゴルドウルフは当然のようにたしなめてきたが、追放してやった。
そして付いた名前が『潰し屋』……!
彼はゴージャスマートの経営に携わりながらも、調勇者ではなかった。
ノータッチは調勇者であるが、バンクラプシーは創勇者である。
なぜならば彼は、
『破産』を、創り出す者だから……!
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●御神級(会長)
ゴッドスマイル
●準神級(社長)
ディン・ディン・ディンギル
ブタフトッタ
ノーワンリヴズ・フォーエバー
マリーブラッドHQ
●熾天級(副社長)
キティーガイサー
●智天級(大国本部長)
ボンクラーノ
ライドボーイ・ロンギヌス
ライドボーイ・アメノサカホコ
ライドボーイ・トリシューラ
ライドボーイ・トリアイナ
●座天級(大国副部長)
New:ノータッチ
New:バンクラプシー
ゴルドウルフ
●主天級(小国部長)
●力天級(小国副部長)
●能天級(方面部長)
●権天級(支部長)
↑昇格:ヘイトリッド
ジャンジャンバリバリ
●大天級(店長)
ステンテッド
●小天級(役職なし)
○堕天
↓降格:ファイヤーヘッド、サンダーヘッド、ストームヘッド、アースクェイクヘッド
コスモス、ザンガン
デスディーラー・リヴォルヴ、サイ・クロップス、ゴルゴン、スキュラ、オルトロス
ジェノサイドダディ、ジェノサイドファング、ジェノサイドナックル
ミッドナイトシャッフラー、ダイヤモンドリッチネル、クリムゾンティーガー
ライドボーイ・ランス、ジャベリン、スピア、オクスタン、ゼピュロス、ギザルム、ハルバード、パルチザン
名もなき戦勇者 3820名
名もなき創勇者 340名
名もなき調勇者 530名
名もなき導勇者 310名





