19 倉庫にて
『駄犬⇒金狼』第1巻情報 Vol.10
書籍版発売まで、あと3日……!
今回も、特典のSSペーパーのご紹介です!
今日、ご紹介するのは……、
ゴルドウルフと入浴『ミグレア編』です!
それでは、さっそくどうぞ!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「……ゴルドウルフさんの胸、おっきい……」
オッサンの胸板の感触を。
「あっ、ミグレアさん、そんなに顔を寄せたら……」
「寄せたら、なあに?」
「いつも私のことを、くさいくさいと言っていたではないですか」
「ゴメンって。昔はそうだったけど、今はゼンゼンそんなことないって。むしろ、好きになっちゃったかも」
「そうですか、ありがとうございます。でも、それよりも……み、ミグレアさんの、その……」
「なあに? ゴルドウルフさん? ウチがどうかした?」
言葉に詰まるオッサンに、顔をあげるミグレア。
オッサンの首に両腕を回し、つかまり立ちするように伸び上がると、頬どうしが触れ合った。
それどころか、
……つん……!
先端が接触し、電極どうしが繋がったように、身体に甘いしびれがおこる。
「あ……! ミグレアさんっ……!」
「んふふ、これ、『先っちょ合わせ』っていうの。見ずに一発でできたら、ラブラブな証拠なんだよ」
「ら……ラブラブ……!?」
JKに翻弄されっぱなしのオッサンは、ギャルの言葉を繰り返すだけで精一杯。
そんなオッサンがかわくて、ミグレアはコツン、とオデコをくっつける。
ずっと独り占めしたかった瞳には、自分だけが映っている。
いつもはやさしいそれも、今は拾われたばかりの犬のような、嬉しさと戸惑いが入り交じっており……さらに愛おしくなった。
そしてもっと、愛したくなる。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ミグレアはここから、さらに大胆になっていきます!
JKギャルに翻弄されるオッサンが拝みたい方は、
第1巻の発売日、2020年5月25日に『とらのあな』様を要チェックです!
特典配布には開催期間、および配布数には限りがありますのでご了承ください。
なお、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、営業状況や時間が変更になっている店舗様もございますので、ご確認のうえお求めください。
また、今回お見せした内容は、ここからさらに修正される可能性があります。
実際の特典とは異なる箇所もあるかもしれませんので、ご了承ください。
こちらの書籍化情報のバックナンバーがご覧になりたい場合は、『活動報告』をご覧ください。
ゴルドウルフはグレイスカイ島の港にいた。
グレイスカイ島には、『島民港』『観光客港』『物流港』の3つの港があるのだが、その中でもいちばん広大な『物流港』にいた。
ここでいう『物流』というのは、『スラムドッグマート』で取り扱う商品のことである。
ゴルドウルフはこの『物流港』を利用して、ドッグレッグ諸国の商品在庫を管理している。
そのため、港には大きな倉庫がいくつもあった。
そしてゴルドウルフは、この港に建造されたばかりの倉庫のなかにいた。
まだ積荷が運び込まれていないこの倉庫は、普段はがらんとしているのだが……。
今は、多くの人間でひしめきあっていた。
ゴルドウルフの周囲には、いかにもガラの悪そうな男が、なんと……。
3000人も……!
6000もの瞳が、尖ったナイフのようにゴルドウルフに突き刺さっていた。
彼らは『ジン・ギルド』の構成員たち。
キリーランドのスラムドッグマートでチンピラを返り討ちにされた『お礼参り』に来たというわけだ。
しかし3000人ともなると、軍隊でいえば大隊連隊にあたる。
もはや『お礼参り』の規模ではない。
全面戦争っ……!
しかも相手は、たったひとりのオッサン。
『オヤジ狩り』にしては、オーバーキルが過ぎる。
常人ならばオシッコ漏らして命乞いをするレベルであったが、オッサンはこの窮地においても落ち着きはらっている。
前面にいた鉄砲玉じみたチンピラたちが、気に入らねぇとばかりに絡んできた。
「テメーが『スラムドッグマート』のボスかよ!」
「なんだ、ただのしょぼいオッサンじゃねぇか!」
「うちの若いのがずいぶん世話になったなぁ!」
「なんとか言えよっ、おらっ!」
「きっとこのオッサン、ビビってやがるんだ!」
「これから土下座して『許してくださぁ~い!』ってやるんだろ!? でなきゃこんな人気のない所に呼び出すわけがねぇもんなぁ!」
「従業員に情けない姿を見られたくなかったんだろぉ!? でも甘かったなぁ、土下座くらいじゃ俺たちは許さねぇぜ!」
「そーそー! それにこの島には、『スラムドッグマート』の遊園地があんだろ!? それを全部メチャクチャにしてやるぜ!」
「俺たち『ジン・ギルド』に歯向かったらどうなるのか、骨の髄まで教えてやんよぉ!」
「わかったら土下座しろよ、オッサン! 泣いて喚いて許しを請えっ! ションベン漏らせっ! おらっ!」
鉄砲玉のひとりがオッサンの胸倉を掴もうと、近づいてきた途端、
……ドグワッ……!
シャァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!
横薙ぎの一撃が飛んできて、吹っ飛ばされていた。
鉄砲玉の男はうちっぱなしの弾丸のように、うちっぱなしの床を滑っていく。
その突然の攻撃は、オッサンによるものではない。
鉄砲玉たちの背後にいた者……。
まるで金剛力士像が動き出したかのような、巨魁であった……!
「くっ、組長!?」
その鬼神のごとき形相に、鉄砲玉たちはあとずさった。
割れるように開いた道を通って、『ジン・ギルド』の組長は、オッサンの前に立ちはだかる。
周囲にいた組員たちは、すっかり震えあがっていた。
「や、やべぇ……!」
「あ、あんなに怒ってる組長、初めて見た……!」
「い、いや! む、昔、組長が若頭だったころ……別の若頭に罠にハメられたことがあったんだ! その時、組長はあんな顔をなさってた!」
「まじっすか、兄貴!? そ、そのハメた若頭は、どうなったんですかい!?」
「組長はひとりで相手のところに乗り込んでいって、傘下の組まるごと、皆殺しにしたんだ……!」
「ひっ、ひとりで皆殺しに!?」
「皆殺しどころじゃねぇ! 全員をミンチにして、肉の山を作ったんだ……! あの時の組長は、そりゃあ恐ろしかった……! 全身血まみれで、眼だけがヤッパみてぇに輝いてて……!」
「ひ、ひえぇぇぇ……! ってことは、あのオッサンは……!」
「ああ……! きっと、骨も残らねぇ……! グチャグチャにされて、サメのエサだ……!」
視線だけで人を捻り潰せそうなほどの眼光で、オッサンを睨み降ろす組長。
ふたりは30センチ以上の身長差があり、完全に大人と子供であった。
あまりにも絶望的な体格差に、さすがに組員たちも気の毒に思い始める。
「お……オッサン! 謝れよ! 謝ったらサメのエサだけは許してくれるかもしれねぇぞ!」
「そうそう! 『スラムドッグマート』全店のあがりを毎月5割……いや、8割おさめるんだ! そしたら、組長もきっと……!」
しかしオッサンは聞く耳を持たない。
これほどの威圧を受けてもなお、姿勢も態度も不変のまま。
まるでただの壁を相手にするかのような表情で、組長を見上げている。
「……って、なんで謝らねぇんだよっ!? 組長には勝てっこねぇんだから、謝っちまえよ!」
「でねぇとマジで、サメのエサだぞっ!」
「つまらねぇ意地はってねぇで、土下座しろっ!」
「土下座しろっ、おらぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!」
周囲からの怒声を受け、ついに……。
明王のように不動であった男が、ついに動く。
……ガクッ……!
と崩れ落ちるように、地面に膝を付いたかと思うと……。
……ガバァァァァァァァァーーーーーーーーッ!
風を巻き起こすほどの勢いで、上体を伏せ……。
……ガスゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーッ!!
我が身の愚かさを悔いるかのように、硬い床に額を叩きつけたっ……!!
そして、そしてっ……!
「すっ……すいませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!」
魂からの、謝罪っ……!!
しん、と静まり返る倉庫内。
あまりに見事な謝罪に、組員たちが心を打たれてしまったからではない。
目の前で繰り広げられたのが、夢でもありえないほどに、信じられない光景だったから。
なんと、オッサンなおも、仁王立ちのまま。
その足元には、四天王立像に踏み潰される餓鬼のように、ひれ伏す……。
「くっ……くみちょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」





