66 愛のおわり6(ざまぁ回)
厄災四天王が奴隷落ちしたおかげで、彼らは即日、堕天扱いとなる。
しかしこの降格は、本来ならば起こりえないはずであった。
その『起こりえない要因』としてはふたつ。
まず、厄災四天王が剣術大会で犯してしまった、醜態を収めた真写の存在。
剣術大会にはセブンルクスのマスコミも取材に行っていたのだが、セブンルクスから出国する許可を得られていたのは、王国からお墨付きをもらった、勇者とべったりの新聞社のみ。
彼らは剣術大会において、勇者の醜態を真写におさめなかったばかりか、喜んで提灯記事を書くような者たちばかり。
そのため、セブンルクスには剣術大会の失態が持ち込まれることは、ないはずだったのだが……。
しかし、持ち込まれてしまった。
そう……! 厄災四天王ジュニアたちの手によって……!
彼らは勇者の息子ということもあって、帰国の際の検閲もほぼフリーパスであった。
そしてジュニアたちは、勇者学校でその真写を見せびらかし、バラ撒いてしまった。
それが偶然、とある新聞社が入手し、記事にしてしまった……!
その新聞自体は検閲で引っかかったので、発行されるとはなかったのだが、草の根レベルで噂は広まってしまった。
そしてもうひとつは、ミセスの存在。
厄災四天王が大天級に降格した時点で、彼女たちは旦那に愛想を尽かしていた。
水面下で別の勇者への婚活を行ない、屋敷を売るための手筈を整えていたのだ。
勇者にとって、ハーレムにいる夫人たちから裏切られるのは、従者からの裏切りより恥とされている。
なぜならば、従者とは力関係での繋がりだが、夫人とは愛で繋がっているとされているから。
愛のない勇者など、香りのないマツタケ同然。
単なる『味なしキノコ』とみなされてしまうのだ……!
これらのことを総合すると、今回の堕天はまさに、『家族一丸となった』結果であるといえよう。
しかし落ちぶれる者ばかりでもなかった。
今回、唯一の昇格を果たした勇者がひとり。
それは、四匹もの奴隷と、四匹もの奴隷を手に入れ……。
一躍、奴隷富豪となった、勇者ヘイトリッド……!
--------------------
●御神級(会長)
ゴッドスマイル
●準神級(社長)
ディン・ディン・ディンギル
ブタフトッタ
ノーワンリヴズ・フォーエバー
マリーブラッドHQ
●熾天級(副社長)
キティーガイサー
●智天級(大国本部長)
ボンクラーノ
ライドボーイ・ロンギヌス
ライドボーイ・アメノサカホコ
ライドボーイ・トリシューラ
ライドボーイ・トリアイナ
●座天級(大国副部長)
ゴルドウルフ
●主天級(小国部長)
●力天級(小国副部長)
●能天級(方面部長)
●権天級(支部長)
↑昇格:ヘイトリッド
ジャンジャンバリバリ
●大天級(店長)
ステンテッド
●小天級(役職なし)
○堕天
↓降格:ファイヤーヘッド、サンダーヘッド、ストームヘッド、アースクェイクヘッド
コスモス、ザンガン
デスディーラー・リヴォルヴ、サイ・クロップス、ゴルゴン、スキュラ、オルトロス
ジェノサイドダディ、ジェノサイドファング、ジェノサイドナックル
ミッドナイトシャッフラー、ダイヤモンドリッチネル、クリムゾンティーガー
ライドボーイ・ランス、ジャベリン、スピア、オクスタン、ゼピュロス、ギザルム、ハルバード、パルチザン
名もなき戦勇者 3817名
名もなき創勇者 340名
名もなき調勇者 530名
名もなき導勇者 310名
--------------------
奴隷の他にもヘイトリッドは、四人もの夫人をも奪っていたので、それがさらなる後押しとなった。
そしてこれは、さらなる余談となるのだが……。
ミセスたちは当初、ヘイトリッドではなく、もっと高位の勇者に自身を売り込んでいた。
しかし誰からも相手にされず、最後の最後でヘイトリッドに拾ってもらったという経緯がある。
そもそもミセスたちは、選ばれてすらもいなかった。
ヘイトリッドが選んでいたのは、彼女たちではなく、その家族。
厄災四天王のかつての配偶者である、ミセスたちからの強力なプッシュがあれば、奴隷申請が通るであろうと考えたのだ。
そう……!
ヘイトリッドは、かつて自分をいじめていた厄災四天王を、そして息子をいじめているジュニアたちを奴隷にしたいがために、ミセスたちを召し抱えたのだ……!
その目的が達成された以上、彼女たちはもはや用済みといっていい。
ミセスたちはこのままポイ捨てされてもおかしくない状況だったのだが、あきらめなかった。
ミセスたちは四人で力を合わせ、過去に厄災四天王より捨てられた経験を活かし、ヘイトリッドの本妻になるべく策略を巡らせたのだ。
勝てば本妻、負ければホームレス。
この勝負の行方は、ここで語ると閑話となり過ぎてしまうので、とりあえずは伏せておこう。
そして彼女たちとは別に、奇しくもこの時期のセブンルクスには、多くのホームレスが誕生していた。
その原因は、たったひとつ。
『親殺しゲーム』であった。
そう……!
勇者学校の子供たちが、こぞって自分の親に、限度を超えたイタズラを仕掛けたせいで……!
絶縁される子供たちが、続出……!
基本的に勇者というのは、血を分けた子供には多少なりともの愛をもって接する。
その愛は『ズッ友』と同じくらいしか価値がないのだが、彼らにとってはピュアな気持ちのつもりでいる。
そしてそれはキッカケさえあれば、できちゃった感覚で生まれた子供たち同じくらい、あっさりと捨てられる。
彼らはこう思っているのだ。
「失敗しちゃったから、新しいのを作ろっと! せっかくだから、土台も新しくして!」
よってセブンルクスの街角には、多くの愛なき者たちであふれた。
またこの時、セブンルクスでは政策の一環として、国を挙げて『野良犬』弾圧を推奨していた。
その『野良犬』というキーワードから、人々がホームレス狩りに走るのは、何ら不思議ではないだろう。
路傍に捨てられ、溶け残った雪のように踏みにじられ……。
惨めに汚れた、いくつもの愛が……。
いまここに、完全なる終わりを告げようとしていた。
次回、今章のラストエピソードです!
そして現在、この『駄犬⇒金狼』の書籍版のキャンペーンとして、
Twitterスペシャルキャンペーン【あなたが好きなおっぱいの大きさ】
が開催されています!
こちらは抽選で、3名様に図書券を進呈というものです!
でも私としては、このキャンペーンで応募された内容で、このあと登場するヒロイン像の参考にできたらと思っております。
ですので現ヒロイン、もしくは新ヒロインに一言もの申したい方は、ぜひ参加していただけると嬉しいです!
このあとがきの下に、キャンペーンのリンクがあります!





