01 第2ラウンド
『駄犬⇒金狼』 第1巻、発売中です!
書籍化にあたり、大幅な加筆修正をさせていただきました!
プリムラやマザーのサービスシーンはもちろんのこと、プリムラがおじさまを好きになるキッカケとなった『初めての体験』が明らかに……!
また勇者ざまぁも新たに追加! あの勇者の最期が描かれています!
さらに全ての始まりとなった、ゴルドウルフの『初めての追放』がついに明らかに……!
若きゴルドウルフの姿は必見です!
そして、第1巻の最大の目玉となるのは、勇者の始祖である、ゴッドスマイルが『初めての登場』……!
世界最強勇者の姿を、ぜひその目でお確かめください!
まさに第1巻は『初めて』だらけ……!
目にしたあなたはきっと、『初めての衝撃』を感じていただけることでしょう!
そして読んでいただければWeb版がさらに楽しくなりますので、ぜひお手にとってみてください!
ドッグレッグ諸国における、『スラムドッグマート』と『ゴージャスマート』のシェア争い。
『聖少女プリムラ vs お嬢様聖女フォンティーヌ』ともいえるこの戦い。
それをボクシングに例えるとするならば、こんな調子であっただろうか。
第1試合である、『ガンクプフル小国』での商戦合戦。
それは、開始からフォンティーヌの優勢であった。
プリムラは、必殺の『お嬢様ラッシュ』の前に防戦一方。
このまま押し切られてしまうのではないかという局面が、幾度となくあった。
ゴージャスマート陣営は、選手であるフォンティーヌは完璧な仕上がりで、負ける要素は微塵もなかった。
しかし、いかんともしがたい大いなる穴があったのだ。
それは、セコンド……!
ボンクラーノのボンクラっぷりは言うに及ばないが、それ以上にステンテッドの存在が、同陣営に大いなる影を落としていた。
いちばんの問題児であるステンテッドは、優勢なのにラウンド中にタオルを投げ込もうとし、インターバルの水に毒を仕込むような愚行を、スキあらば繰り返す。
シュル・ボンコスという、唯一マトモなセコンドがいても、彼は幼稚園児のようなボンクラ勇者の面倒を見るので精一杯。
そのため、ステンテッドの暴走を未然に防ぐことができなかったのだ。
インターバルで、ロクに休むことのできないフォンティーヌ。
しかしプリムラは違った。
彼女のセコンドには、姉や妹、ビッグバン・ラヴ……。
そして眼帯のトレーナーの如くの荒くれ、ラン……!
ランはプリムラがダウンすると、そのたびに「立て! 立つんだプリムラ!」と鼓舞。
それは古くさい根性論ではあったが、その泥くささが、聖少女にはかえって新鮮であった。
その度にプリムラは、泥パックの後のように、スッキリとした様子で復活……!
それでもフォンティーヌはあきらめなかった。
何度でも立ち上がってくるのであれば、何度でも倒すとばかりに、追撃の手を緩めなかった。
しかしそんな彼女が、髪の毛が真っ白になってしまうような出来事が、試合終盤に訪れる。
それは例えるなら、彼女のセコンドのひとりが、後ろからこっそりと忍び寄り……。
彼女が振り向いた瞬間に、ゴングを叩く金槌で、頭をぶん殴ってくるような、ありえない事態……!
そう……!
『パッションポーション書き換え事件』っ……!
結果……。
フォンティーヌは、相手のパンチはほんとどもらっていないというのに……。
セコンドの一撃で、ノックダウン……!
あまりの試合の酷さに、怒り出す観客たち。
しかもその後のセコンドたちの対応も最悪であった。
彼らは観客たちの暴動を恐れ、リングに倒れた選手を置きざりにして、試合会場から逃げ出す始末……!
この一行が、二度とその会場で試合ができなくなったのは、言うまでもないだろう。
しかし、『聖少女プリムラ vs お嬢様聖女フォンティーヌ』のカードはこれで終わりではない。
通算成績、いわばドッグレッグ諸国の両者のシェアでいえば、半分半分。
スラムドッグマート陣営は、『ハールバリー小国』『ガンクプフル小国』。
ゴージャスマート陣営は、『キリーランド小国』『ロンドクロウ小国』。
それぞれ2国ずつで、100%のシェアを誇っていた。
とはいえ、流れはスラムドッグマート陣営にあるであろう。
なぜならば同店は、勝利を収めてノリノリの状況だったからだ。
この勢いを利用して、一気に次の国に攻め込むのが、普通の考え……。
となると、やはり今度こそは、聖女のメッカである、『キリーランド小国』……?
しかし、今回の総責任者である、プリムラが選んだのは……。
なんと、逆張りともいえる、『ロンドクロウ小国』……!
彼女はまたしても、直接対決を避けてしまったのだ……!
その石橋叩きの思いは、第1試合を終えてさらに強くなったようだった。
無理もない。
相手は有能な大聖女かと思っていたら、有能な大魔導女でもあったのだ。
『ガンクプフル小国』において、フォンティーヌがイメージキャラクターとして名乗り出た際……。
彼女の魔導女としての知名度はゼロベースで、ビッグバン・ラヴのふたりには及ぶべくもなかったのだが……。
しかしお嬢様は派手なパフォーマンスで、魔導女としても一躍カリスマになってしまった……!
この驚異的なポテンシャルを目の当たりにして、臆さない人間などいようはずもない。
プリムラの判断を、臆病者だと誹ることなど、できようはずもないだろう。
いずれにせよ、第2試合の会場は決定された。
戦士の国、『ロンドクロウ小国』……!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『スラムドッグマート』は、ロンドクロウ小国において、店舗展開を開始した。
しかし、『ガンクプフル小国』の時とは違い、開店当初もそれほど客は集まらず、営業を開始してからも客足は伸びなかった。
その理由としては、とにもかくにも客層の違いに尽きるだろう。
まずプリムラ自身が、戦士というものをよく知らない。
もちろん、彼女も接客を通じて多くの戦士と触れ合ってきてはいるのだが……。
彼らの好みの把握をするには至らなかった。
プリムラは冒険も二度ほどしか出たことがなかったし、親しい戦士カテゴリの人間といえば、クーララカとシャルルンロットのふたりだけである。
そしてここにももうひとつ、問題があった。
プリムラは『男』を知らなかったのだ……!
ロンドクロウの客層のほとんどは、『戦士』であり『男』……!
それも、汗臭い身体を気にもせず、返り血すらも勲章だと笑い、酒をかっくらような『荒くれ者』……!
聖少女と呼ばれるプリムラにとっては、なにもかもが、真逆の存在……!
ちなみにプリムラは、住居である屋敷にオッサンが居候するまでは、男に触れたことは一度もなかった。
馴れ馴れしい勇者からは、何度も触られかけたことはあったが……。
屋敷の使用人は全員女だったので、それこそオッサンが『初めての男』であった。
そして実をいうと、その時の『初めて』が、少女の人格形成に、多大なる影響を与えていたのだ。
今では、店で接客をすることもあるので、お釣りを渡すときなどに、手が触れてしまうことはあるが……。
それでもあくまで、仕事上のこと。
プライベートでは、若い男の気配など、微塵もなく……。
あるのは、おじさまっ気、100%……!
そんなしぼりたての果実のような少女が、男の戦士の需要を把握することなど……。
虹の端っこを追い求めて旅をするような、夢のまた夢の行為であったのだ……!





