12 新たなる布陣
新連載、開始しました!
『お菓子な魔女の領地開拓』
お菓子で領地を開拓し、世界を幸せにする、ほのぼの無双!
あとがきの下に、小説へのリンクがありますので、ぜひ読んでみてください!
それからプリムラとフォンティーヌは、いろいろな話をした。
といっても話すのはフォンティーヌばかりで、プリムラは聞き役。
でもプリムラは人の話を聞くのが好きだったので、特に苦にはならない。
ふたりの時間は、あっという間に過ぎていった。
窓から差し込む光がオレンジ色になる頃、プリムラはようやく気付く。
「あっ、もうこんな時間なのですね。すみません、長居をしてしまって。わたしはそろそろ失礼させていただいてもよろしいでしょうか?」
「なりませんわ」
「えっ」
「わたくしの旅の武勇伝は、まだ半分しかお話ししておりませんことよ。それが終わるまでは、プリムラさんはここにいなくてはなりませんの」
「そうなのですね。でも、本日の夕方はおじさまとお約束がありまして……。それに遅くなると、お姉……マザーが心配いたしますので」
「……おじさま? それは何者ですの?」
「あっ、すみません、まだお話しておりませんでしたね」
プリムラはゴルドウルフについて、フォンティーヌに話して聞かせる。
オッサンのことを話す少女はまさに恋する乙女のようであったが、お嬢様の顔は岩山のように険しくなった。
「だとするならば、なおさらお帰しするわけにはまいりませんわね」
「えっ」
「わたくしの武勇伝の続きと、そんな下男との約束など、比べるまでもないからですわ!」
「ええっ」
「実を言いますと、すでにグレイスカイ島には使者を遣わせておりましたの。プリムラさんが今日この屋敷にお泊まりになることは、すでにリインカーネーションさんもご承知ですわ」
「えええっ」
「さぁ、これで心おきなく、わたくしの武勇伝の続きができますわね。その前に、新しいお紅茶を淹れてさしあげますわ」
「あ、あの……」
プリムラは結局、押し切られる形でフォンティーヌの邸宅に一泊するハメになった。
翌日の朝、プリムラはぽやあんとしていた。
夜通し聞かされたフォンティーヌの武勇伝があまりにも凄すぎて、夢見心地になっていたのだ。
プリムラは馬車の荷台があふれるほどのお土産をもらい、フォンティーヌとバーンナップに見送られて、フォンティーヌ邸をあとにする。
馬車が、外門に続く一本道を進むなか、プリムラは窓の外を眺めていた。
フォンティーヌ邸の庭は、湖や森を有するほどに広大で、フォンティーヌが諸国漫遊で捕まえてきたという動物たちが群れ遊んでいる。
異国の珍しい動物たちを、瞳に映すプリムラ。
少女はまだ、夢の中にいるかのようだった。
――フォンティーヌさんは、本当にすごい人です。
わたしとひとつしか違わないのに、世界各地でご活躍をなされて……。
そのうえ、お姉ちゃんみたいに、立派に大聖女を務めておられて……。
とてもお強い、信念を……。
ご自分だけの『愛の形』を、お持ちになっています……。
名門の大聖女というのはみな、独自の『愛の形』というものを持っている。
ようは聖女一門における教義のようなもので、一門のトップである大聖女は、その信念のもとに活動する。
そのあたりは、マザーの生き様を見れば明らかであろう。
彼女は『みんなのママ』を自称。
ナイフみたいにとんがって、触るものみな我が子にしている。
そしてフォンティーヌは、『愛は低きに流れる』を標榜し、自分より下の者を愛す。
ちなみにではあるが、ストロードール家のモットーは、『愛は金では買えない』。
一見立派ではあるが、その言葉には続きがあって、
「愛は金では買えない……。でも金は愛で買えるんでチュ!」
……それらの正しさはともかくとして、『大聖女』となるほどの聖女は、みな自分なりに『愛とは何なのか』という答えを明確に持っているのだ。
しかしプリムラには、まだ、それがなかった。
――わたしの……。
わたしにとっての『愛』とは……。
いったい、何なのでしょうか……?
ふと空を見上げると、どんよりとした雲が立ちこめていた。
そして窓ガラスに、ぽつり、と雨粒が当たる。
雨はやがて本降りとなって、灰色のヴェールのように馬車を包みこんだ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「すみません! フォンティーヌさんとのお話が、盛り上がってしまいまして……」
1日にぶりにグレイスカイ島の自宅に戻ったプリムラは、客人を待たせていたと知るや否や、土下座せんばかりの勢いで、ぺこぺこ頭を下げる。
彼女を出迎えた、オッサンやマザーは気にしていなかった。
「かまいませんよ。久しぶりに友達に会ったのでしょう?」
「フォンティーヌちゃん、元気にしてた? あぁん、ママも会いたかったわぁ」
しかし、ランはふてくされていた。
「アンタ……いや、あなたがプリムラ様かい? あんまり待たせるもんだから、帰っちまおうかと思ったところだよ」
「はい、わたしがプリムラです。初めまして、ランさん。そして本当に申し訳ありませんでした」
「もういいって。お偉い聖女サマに謝られたって、時間は帰ってこねぇんだ。それよりもオヤジ、プリムラ様が帰ってきたんだから、話とやらを聞かせてくれよ」
「そうですね。では、座って話をしましょうか」
オッサンは居間にあるソファに、プリムラとランを座らせる。
まずはプリムラに向かって、こう切り出した。
「プリムラさん、実はプリムラさんに、『スラムドッグマート』の『ドッグレッグ諸国』への展開を任せたい思っています」
「……えっ? それは、どういうことなのでしょう?」
「私がいつもやっていた、新天地への攻略を、プリムラさんにやってもらいたいのです」
「ええっ? おじさまがなさっていたことを、わたしが……!?」
「はい。プリムラさんは私の秘書として、仕事中は誰よりも私のそばにいてくれました。私の商売やり方も、誰よりも知っているはずです」
すると、ランが舌打ちした。
「アタイだって、ガキの頃からオヤジのやり方を誰よりも見てきたよ。ここにいる聖女サマなんかより、ずーっと真剣にな」
「ええ。でも、真剣さではプリムラさんも負けていませんでした。だからこそ、こうしてお願いしているのです」
「あの……なぜおじさまが、なさらないのですか?」
「私は、『ドッグレッグ諸国』を攻略したあとに控えている、『セブンルクス王国』を攻略するための準備をしようと思っています」
オッサンは、グレイスカイ島の『ゴーコン』一件で、エヴァンタイユ諸国の王室体制を、『勇者派』から一気に『反勇者派』にひっくり返していた。
本来ならば、『セブンルクス王国』もその対象に入っていたのだが……。
セブンルクスの国王であるビッツラビッツは、このことを察知していたのか、グレイスカイ島に王族のトップではなく、雑魚を送り込んでいた。
そのためセブンルクス王国だけは、オッサンの魔の手を逃れていたのだ。
それはオッサンにとって、初めての『誤算』といえるのだが……。
そんなことはおくびにも出さずに、話を続ける。
「セブンルクス王国は『勇者の国』と呼ばれているだけあって、勇者はとても優遇されています。『ゴージャスマート』もかなりの恩恵を受けており、もはや国営といってもいいくらいです。国王であるビッツラビッツさんもかなりの切れ者なので、あの国を攻略するのは骨が折れることになりそうです。私はその準備に専念したいと思っています」
「でも、いまはセブンルクス王国とドッグレッグ諸国は、緊張状態にあります。セブンルクスの国境は封鎖されていて、国に入ることもできません。それでしたら緊張が解けるまでの間、ドッグレッグ諸国の攻略に注力されたほうが、よろしいのではないですか?」
「いえ、それでは遅いのです。それに、ドッグレッグ諸国攻略の下準備はすでに終わっています。各国は『スラムドッグマート』に好意的ですし、初期開店のために必要な、店舗や人材の確保もできています。あとは開店をして、各国のお客様に受け入れてもらうだけです」
しかし、プリムラはなおも不安そうであった。
オッサンは解きほぐすように、さらにやさしい言葉を紡ぐ。
「もちろんプリムラさんひとりだけに、すべてを押しつけるつもりはありません。各国の方面部長として、ウォントレアさんとミスミセスさんとクーララカさんがいます。それに……アシスタントも付けます」
「アシスタントさん、ですか……?」
「はい、いま隣にいるランさんです」
すると、オッサンの前にいたふたりの少女は、同時に目を剥いた。
「ええっ、ランさんをっ!?」「ええっ!? アタイがっ!?」
そろそろざまぁがあるといいと思いましたので、そろそろやらせていただきます!
明後日あたり……!? ご期待ください!
そして新連載、開始しました!
『お菓子な魔女の領地開拓』
お菓子で領地を開拓し、世界を幸せにする、ほのぼの無双!
このあとがきの下に、小説へのリンクがありますので、ぜひ読んでみてください!





