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四十八瀬川の支流から



 では、ここで再び著者がしゃしゃり出て、最強・桂が谷軍団の紹介をしようではないか。泉福寺橋を四十八瀬川伝いに約七百メートル上った所に、桂が谷と言う、まるで八つ墓村みたいな村があり、その登り口にタケシの超リッチ掘っ立て小屋がある。屋根はスレート葺で、壁はトタン張とゾンビすら敬遠して通りそうな古びた化け物屋敷がタケシの家だ。ここでタケシ以上のアホの父ちゃんが『不二鉄工』と言う小さな鉄工所をやっている。アホの父ちゃんは、何を隠そう八方原から養子にやって来たアホなのである。やはりアホの母ちゃんに、母ちゃんの母ちゃん、つまりタケシの婆ちゃんも同じようなアホだが、これにも負けないアホが兄ちゃんである。つまり、この家の家系は全員アホであり、タケシは純良なアホ家系に生まれた血統書付きのアホなのである。

 この家で一番ハバを利かせているのが騙し犬の『アルフ』だろう。何故騙し犬なのかと言えば、散歩中にタケシと一緒に走っている時、突然クルリと向きを変えて体当たりを喰らわせて来たり、得意技はウソ寝と随分ふざけた犬だ。寝ているかと思って近付くと、グァバと跳ね起きて飛びついて来ると言う奇襲攻撃を、最も得意としているアホの飼い主によく似たアホ犬なのである。色は、犬としては珍しい三毛模様、四国犬の雑種で中型犬、毛は短めで尻尾は巻いておらず、かと言って真っ直でもなく斜めにダラリと下がっただらしのない真っ直ぐ尻尾をしている。とても勇敢で気も荒いが、人間には非常に従順的だ。


 猫のペーと、ミケと、タロウは、親子孫でタケシの家で飼われている鉄血・三代アホ猫である。親のペーは、何故ペーと言うかとタネ明かしをすれば、鉄工所と取引をしているペンキ屋から貰って来たそうで、ペーと言うそうな。顔は飼い主に似て不器量この上なく、おそらく世界一不器量だと言う事は誰の目から見ても明らかなほど立派なブス猫だ。臆病だが、子や孫を守るためになら敢然と敵の前に立つほどの勇敢な部分もある。

 子のミケは親にも飼い主にも全く似ず、特等の器量良しメス猫だ。尻尾は短くて丸まっている。結構短気で、プライドが高く性格も良くない。でも本当に綺麗な毛並で、みんなから可愛がられている。

 ミケの息子のタロウは、唯一のオス猫で体も大きい。色は茶色で、尻尾は婆ちゃんのペーと同じく真っ直ぐ尻尾だ。性格は、オスには似つかわしげないほど優しくて人懐っこい。得意技は、人の肩にピョーンと飛び上がると言うもので人間に従順だ。


 黒猫のクーは、鉄工所の近くに捨てられていた非常に可哀そうな猫だ。濡れ羽に映える漆黒の毛並みは、とても美しい。クーには、超然と際立った特徴が沢山ある。まず目がとても可愛い。大きくて、真ん丸で、あまりにも丸く過ぎて、三角形に目が頂上的に上がっているように見え、とても優しやかである。次が、首の下に白い模様があると言う事だろう。何だか月の輪熊みたいで、とてもユニークだ。次が尻尾。真っ直ぐ尻尾なのだが、普通のそれとは違って先端がクルリと丸まっており、何だか長い尻尾の先にダンゴでも付いているようでとてもユニークだ。次が、猫族が最も十八番にしている喉鳴らしだが、もちろん普通の喉鳴らしではない。普通の喉鳴らしなら、よほど耳を澄ませなければ聴こえないほどグーグーと小さな音で鳴らすが、クーの喉鳴らしは部屋外からでも聴こえるほど大きく、パチパチと焚き木が燃えているような派手な音で鳴らす。次が、とても人懐っこくて甘えん坊と言う事。タロウと同じように、ピョンと人の肩に乗る事を趣味としている。


 猫の大きな特徴が、何と言っても顔や腰の辺りを人にこすり付けて来ると言う事だろう。特にクーやタロウの場合は、激しく思いっ切り鼻や口、それに首や耳をこすり付けて来る。それに、これも猫の特徴だが、母猫のオッパイを飲む時には張った乳房に爪を突き立てて絞り出し、喉をグルグル鳴らせながら飲む。猫によっては、この必殺技を乳離れした成猫になってもやり、しかも人間に対してやる者も居る。

 クーなどは、その典型で座っている人の上に飛び上がって足に爪を突き立てて、いつの間にか気持ち良さそうに眠っている事もある。でも、これは全ての人間に対して行なうと言うものではなく、心から信頼している人間でないと絶対にやらないし、クーもタケシにしかやらない。幼い頃に母親から無理やり引き離され、おまけに人にも捨てられると言う辛酸を舐めて来た可哀そうな猫だ。いくら顔は悪くても、いくら頭が悪くても、いくらチンポがこまくても、仁徳家のクソぼけに懐くのは当然だろう。


 鳩の『アルノー』と『モ―リス』は、オスめすのつがいで飼われている。名前の由来だが、アルノーとは、シートン動物記に出て来る伝書鳩のお話で、アルノーと言う優れもの鳩の名前である。モーリスとは、やはりシートン動物記に出て来る『ウサギのモーリス母さん』の名前をパクッて、アホのタケシが命名した。なおシートン動物記のアルノーは、並び立たないほどの飛行能力を有していたにも拘らず、最後は疲れているところをハヤブサに襲われると言う悲劇の末路を辿ってしまう。モーリス母さんも、我が子をキツネの襲撃から守るために、自らが囮になって厳冬の湖に飛び込んで、最後には力尽きてしまうと言う悲しい最期を遂げてしまう…本当に哀しい話である。アルノーの色は、紅色に白が入っている。モーリスは、白くて綺麗な鳩だ。共にドバトだが、アルノーのような高速かつ、長距離航続飛行能力を有し、人間に非常に従順な伝書鳩要素を秘めている優れもの夫婦だ。


 それに何と言っても置いて語れないのが、カブト虫の大魔王『アレク』だろう。ある夏の夜に、クソぼけタケシの部屋の窓に『ガキャン』と言う物凄い音を立てて突進して来た大きな未確認飛行物体が現れた。これによってアホの父ちゃんが、最も得意としている手抜き工事で建てた不二鉄工のボロ屋は大きく傾いてしまったのだが、物体の正体が大魔王アレク様だったのである。カブト虫の寿命は約一年と大変に短い。カブト虫のメスは、夏の終わり頃に産卵し、秋には孵化して幼虫となって誕生する。勿論この頃には、まだ王者としての風格はなく普通のイモ虫だ。その後、幼虫は二度ほど脱皮をして三齢幼虫になるが、見る見るうちに大きくなり、特に頭部が大きくなる。腐葉土や堆肥の中で冬を越して、初夏の頃にはサナギになり、夏の声を聴いて土の中から成虫としての活動を始めるが、僅か一か月から二か月くらいで一生を閉じる。つまりカブト虫のはかなき一生は一年、しかも成虫としての寿命は一か月と、さらに短くてはかないのだ…


 だが、これはあくまでも生態の真実であって、当『石亀トータス』シリーズは、作り事のマンガであるからにして、このような常識など全く通用しないのだ、と言うより一切の常識は無視、と言うより著者には元々常識などないのである。噂によるとアレクは古代ジュラ紀から生きている超人、いや超虫なのである。名前は、例によってクソぼけが着けたのだが、あまりにも大きくて威風堂々とした体格を見て『アレキサンダー大王』から付けた名前なのだ。アホにしては上々の命名だが、たまたま知っていただけで、しかもこれしか知らなかったと言うだけの事である。アレクは、桂が谷に棲む昆虫界や、動物界に大変よく顔が効き、文字通り大魔王の名に恥じないほどの統率力を持っている。いざ桂が谷軍団に闘いが始まった時には、彼らの微弱戦力を補うために、色んなはらからに一声かけて兵隊を増やし、軍団の戦力アップに貢献している。だが非常にプライドが高く、家で飼育されている時にも、ふんぞり返って威張り散らしている。おまけに少しでも気に喰わない事があると、サッと顔色を変え『バカもーん』…とこうだ。


 さて、ここで、いよいよ桂が谷軍団に所属する腹心の人間同胞はらからを紹介しようではないか。みんな近所に住むタケシの幼なじみで同級生なのだが、それにしても彼らに対して一様に言える事は、クソぼけタケシと付き合っておきながら、タケシとは似ても似つかわないほどハンサムでカッチョ良く、タケシと全く違う切れ味するどい明晰な頭脳を持ち、クソぼけと違って成績も優秀、おまけにクソぼけと違って驕らず高ぶらず焦らずの三拍子を身に付けているほどの少年英雄団なのだ。


 まず『ノッポのミキオ』だが、名前が示しているように凄まじく背が高い、おまけにクソぼけと違ってハンサムで足が長くてカッチョいい。

 『メバルのツカサ』は、その名が示しているようにメバルのように目がクリクリしていて、おまけにクソぼけと違ってハンサムで、とても凛々しくカッチョいい。

 「ジミーテツオ』は、その名が示しているように往年のハリウッドスターの『ジェームズディーン』が大好き少年で、自らもジミーを気取るほどイケテル少年なのだ。おまけに野球少年であるテツオは、クソぼけと違って運動神経が良くってハンサムでカッチョいいのだ。


 彼らは、いつも鉄工所の近くにある『トコトン掘り』と言う所に集まって遊んでいるが、いざ小郡の、いや山口の、いやいや日本の、いやいやいや世界に危急存亡の時が来たらば、憤然と起ち上がって軍団に身を捧げ、世のため人のため母ちゃんのために命を捨てる事さえ厭わない勇気あるはらからなのだ。ちなみにトコトン掘りの名前由来だが、四十八瀬川に(一の井出)と言う小さな農業用水取水口があり、ここに固定式のコンクリート製堰堤があり、その少し下流域に深みがある。かなり深くなっている事から、とことん深い、よってトコトン掘りなのである。


 直接軍団には属していないが、鉄工所の近くに棲む生き物で、軍団に協力的な男蛇の『タカ』、それと女蛇の『エミ』が居る。もちろん図鑑を開いて見ても、六法全書を開いて探っても、そんな学名をした蛇なんか居るわけない。おそらくアホのタケシ辺りから出た名前だろう。実はここだけの話しなのだが、アオダイショウの事を男蛇と言い、シマヘビの事を女蛇と言うのだ。

 アオダイショウは、日本の本土に生息する蛇の中では最大とされる蛇で、大きいものになれば二メートルを超えるものもおり、インターネットで検索してみると四国で三メートルにも達するアオダイショウの脱け殻が発見されたそうな。性格は極めて獰猛で攻撃的、大きなドブネズミや鶏の卵なども丸呑みにする、よって男蛇と言う。

 シマヘビは体長が数十センチの中型蛇で、体の大きな特徴として挙げられるのが頭部から尻尾にかけて、四本の縦じまが通っている事だろう。性格は極めて臆病で、アオダイショウに較べると優しい。よほどの危害を加えない限り、人に向かって来る事はない…いや、そもそも非常に憶病な上に、すばしっこいと来ているから、人間が近付くのがこれほど困難な蛇も居ないだろう、よって女蛇と言う。


 勝手に付けた名前ではない、ちゃんと日本書紀にも載っている…嘘だがバハハ。これは、スペシャルシークレットで、読者の皆さんを世界一のアホだと信じて明かすが、実を言うと、『エミ』は、『経美子』であるからにして、我が必殺の著である、『女蛇』に出て来る、『元安経美子』さんと言うヒロインの名前なのである。二人は、いつも共に行動し、いいコンビである。コンビ名は『タカ&エミ』と言う。何だかエンタみたいな、バハハ。


 それとタケシが、絶対的に信頼を寄せて椹野川一帯から、瀬戸内海までの広範囲を偵察させているカモメの『ミナサン』と言う特殊諜報員も居る。急あらばアレクに説得され、またクソぼけの博愛精神に負けて、しぶしぶながら闘いに参陣して人助けの手伝いをさせられている者も居る。最強カラス軍団の総帥『クロウ』は、集団三百羽を束ねるボスカラスだ。人間から果てなき迫害を受けて恨んでいるが、しぶしぶながら人助けの手伝いをさせられている。最強スズメバチ帝国を仕切る女王が、『バッチ』だ。兵隊蜂に命令を下して色々な所に巣をかけるが、人間に見つけられては次々に潰されるので、クロウと同様に人間を強く恨んでいる。でも最後には、協力をさせられている。この他に山には、人間から迫害されているにも関わらず、人助けを惜しまないはらからがワンサカと居る。彼らが片思い的な誠実を尽くすのは、きっと人間に対して何らかの形で共生を望んでいるからではないのだろうか。




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