はじまり
初めてだった
あんなにキラキラしてる人を見たのは
アイドルはこんなにもステージで輝くのかと
見ていて思わず『かわいい』という言葉が溢れてしまう
ずっと九州の田舎で生まれ育ち大学で上京した。
どこを見回してもキラキラしていてキョロキョロ周りを見ながら渋谷ハチ公前で唖然としているといきなり話しかけられた。
「あの…これよかったら」かぼそい声ででビラを渡された。その子と目があった瞬間に恋に落ちた。
話を聞くと彼女は地下アイドルをしていた。
彼女と話しているうちに気持ちが高まり思わず「明日から全通してTOになるので結婚してください」と叫ぶ
あんなに騒がしかったハチ公前が一瞬静まり返った気がした。
彼女は「今日から私がアイドル卒業するまで全通してくれたら考えるよ」と天使のような笑顔で言った。
それからライブに全通することを決意した。
そのアイドル、小崎春ちゃんに人生を賭けてることを決めた。
「名前なんていうの?」と入学式で隣の席の男にいになり話しかけられた。
「野口勇人」と無愛想に答えたのにも関わらず男の方は話続ける。
「野口くんよろしくね!俺は小林浩介よろしく」
「あぁ…よろしく」と答えたもののそもそも大学の人とよろしくするつもりはなかった。
東京でも地元でも志望した大学は不合格滑り止めで受けたFラン大学には仮面浪人で編入するつもりで友達を作る必要がないと考えていたからだ。
聞いていないの小林は話続けた。自分の生い立ち、将来の夢などこの男は芸人にでもなった方がいいのではと思うけど話がうまく聞いていたが用事を思い出した。
俺は話をほどほどに切り上げすぐさまバイトの面接に向かった。
上京して、春ちゃんと出会ってからは2週間が経っていた。
「金がねぇ、バイト見つけなきゃ」今これで頭がいっぱいだ。
地下アイドルをたいして知らなかった。簡単に口にした「全通する」ということの難しさを通うようになってから知った。
ライブは多くて週2ぐらいだろうと思っていたが実際は少なくても週3、多ければ毎日ある正解だ。
この2週間でライブは8回。使ったお金は6万円を超えていた。
高校の時にバイトで貯めた5万と上京した時に親からもらった10万合わせて15万を持っていた。
だが上京してはっちゃっけてアイドル以外にもお金を使い残りはもうすでに4万となっていた。
バイトしなければその強い焦りでバイトを探し始めた
ネットに時間の調節をしやすいバイトと書いてあったファストフード店に応募をし、合格した。
それからライブない日は朝から晩まで働き、ライブの日はライブの時間まで働き、ライブが終わってから働いた。幸いバイト先は人員不足で困っていたので思い通りにシフトを入れてくれた。
大学はサークルなどには入らず小林が仕入れた楽単情報を聞き卒業に必要な必修と最低限の単位を取るようにしていた。
春ちゃんは俺に会うたびに「大好き…いつもありがとう!」と天使の笑顔で言ってくれるそれが励みだった。
それから3年半が経ち大学4年生の後期になっていた。
知り合いが就活をする中俺は推し活がしやすいという理由だけでバイトで生活をすることを決めて就活をしていなかった。
「就活はした方がいいぜ」とお節介に小林はしつこく言ってくる
「いつまでその春ちゃん?がアイドルしてるかもわからないだし、自分のことを優先しろよ」とため息ながらに正論をぶつけてくる
「いや春ちゃんは50歳までアイドルするってこないだも言ってたから俺も50歳まで推すから!!」と強く言い返すと小林は苦笑いをした。
そんな会話をしている時ピコンとスマホの通知がなった。
スマホには推してるアイドルグループのポストが表示されていた。
『大切なお知らせ』この文字が見えた瞬間に一気に血の気が引いた。
「嘘だろ、嘘だろ…」と思わず呟いた小林は心配そうにこちらを見ている。
『大切なお知らせ。いつも『あなたの天使』を応援していただきありがとうございます。この度メンバーの小崎春からの申し出により将来のことについて話し合った結果卒業することになりました。卒業ライブは12月4日渋谷〜で行います。短い間ですが引き続き小崎春の応援をよろしくお願いします。 あなたの天使運営』
それからことはあまり覚えていないその日はオタ友と泣き飲み明かした。
卒業ライブまでのライブでいつ以上にチェキを撮りまくった。
卒業ライブ最後の特典会あのことについて聞くと決めていた。
「春ちゃん俺全通したよ…あのさぁ…」実際聞こうとすると涙が溢れてきた。だが言葉に詰まりながらも結婚しようと伝えようとした。
「本当に支えになったよありがとう今までありがとう。またどこかで会おうね」と春ちゃんは笑顔で俺に伝えてきた。その時俺の中で何かが崩れた。
もう涙は出なかったオタク友達と朝まで飲み予定だったが1時間ほどで切り上げて帰路に着こうとしていた。
「俺の4年間なんだったんだ。結婚できると本気で思ってたとかバカだな」と呟きながら駅のホームに着いた。
その時目の前には春ちゃんがいた。俺は抑えられない衝動に駆られた。
頭の中で『裏切り者、裏切り者』と憎悪がどんどん強くなっていく。
電車がホームに入ってくる瞬間衝動を抑えることができなかった。
思わず彼女の背中を押してしまった。
彼女は咄嗟に俺の手を掴み目が合い手を繋ぎならホームへと落下していく。
すごくスローモーションに感じた。
電車のライトが眩しくどんどん近づいていく中彼女のかわいい顔がはっきりと見えていた。
彼女は「〜〜」と何かを呟いたそして一緒に電車に轢かれた。
痛みはなかった周りは音一つない静寂だった。死ぬってこんな感じなんだと思った。
その時「〜〜」「〜〜」誰かの声が静寂を切り裂いた。
「ゆみ起きて」とはっきり聞こえた瞬間光が入ってきた。
ハッと立ち上がるとそこはメイク道具などが散らかり何にもの人がメイクやらなんやらをしている部屋だった。
「ここはどこ」と呟くと目の前にいた女性に
聞いた。
「何言ってるのゆみここは楽屋でしょ。もうすぐ出番なんだから早く準備してよね」と半笑いで答える。
鏡を見るとそこに映っていたのスタイル抜群目は大きく顔は小さいロングの黒髪がよく似合うまさに小崎春のような女性だった。
『かわいい』と思わず呟くと周りでは笑いが起きた。
「自画自賛はいいから早く準備してくださいよ」隣でメイクをしていたアニメ声でロリな女の子が言ってきた。
一旦座って冷静になり、「ここにいてはいけない」と叫びながら楽屋をいき良いよく飛び出した。
周りがざわつく中マネージャーらしき女性の取り押さえられた。
「ゆみさんどうしたんですか?大丈夫ですか?」声を荒げながら押さえつける。
「離して俺はゆみしゃない」必死に抵抗するもだんだん気が遠くなり気を失った。
目覚めたら真っ白だった。
「あぁ死んだのか」と呟きながら「バカなこと言ってないでこっちを見てください。心配しましたよ」とマネージャーらしき人が横に座っていた。
ここは病院なこと、俺は一宮ゆみといい、bibiという地下アイドルのピンクいろ担当なこと、この女性は髙橋しょうこでbibiのマネージャーなことなどを教えてもらった。
「はぁ…とりあえずこれぐらいのこと覚えてたら大丈夫かな」と心配そうにしょうこは呟いた。
「先生が言うには記憶がないだけで健康は大丈夫らしいので今日は休んで明日からレッスンします」と淡々と言ってくるしょうこに思わず「いや、お…私何も覚えてないんだけど」と言い返す。
冷たい目で「そんなこと言ってもSeppでのワンマンライブも控えてますし、メンバーのことも歌詞も振り付けもレッスンすれば思い出しますよ」
心配そうな目でしょうこを見ていると「とりあえず明日からレッスンするのですのつもりでメンバーの紹介も一応しますから」と言って彼女は病室を去っていった。
この状況を理解できないまま翌日を迎えた。




