土竜狩り
狩りの獲物は基本的に成体から順番に食べるので、小さい獲物だと幼体達にはほとんど食べられる部分が残らない場合も少なくない。しかし子供達は、体が小さいからこそ、虫や小動物を捕えられればそれで間に合ってしまったりもする。
なのでこの時も、成体達が狩りに出ている間、幼体達は幼体達で<土竜狩り>を行って餌を得ていた。これ自体、本格的な狩りに向けての鍛錬の意味もある。
土竜は、滅多に地上に出てこない獣ではあるものの、実は、巣穴を壊されるとすぐさま直そうとする習性があった。オオカミ竜の幼体達はそれを知ってか知らずか、土竜の巣穴を見付けると、まずはその周辺に土竜がいないかどうかを確かめるために穴を覗き込んだりもする。
以前、それで土竜の穴に潜んでいたラーテル竜に襲われて被害を被ったりもしたものの、実はそれはそんなにあることではなかった。土竜に比べるとラーテル竜は一回り以上大きく、土竜の巣穴には容易には入り込めない。どうやらその時は、標準よりかなり大柄な土竜の巣であったようだ。
だからラーテル竜が潜り込めたというのもある。まあ、ラーテル竜自身が穴を広げて潜り込むという例もあるにはあるが、そんなに多くはないようだ。
まあそれは余談として、今回はラーテル竜は潜んでいなかった。ラーテル竜の近似種で<イタチ竜>という小型の肉食獣もいて、こちらは大きさ的にも土竜の穴に入り込みやすく、イタチ竜が潜んでいることもあるものの、ラーテル竜ほどは強敵でもない。『土竜よりは強い』という程度だ。
そうして、土竜もイタチ竜も出入り口の近くにいないとなると今度は、出入り口をほじくり返し、壊してしまう。土竜と違って穴を掘るのが本職ではないこともあり、穴を広げようとするものの結果として壊してしまうのがほとんどだったのだ。
こうして壊した穴をしばらく眺めていると、穴が埋もれた辺りがもこもこと動きそこから土竜が顔を出した。その瞬間を逃さず、幼体の一頭が食らい付いた。そして見事に牙で捕える。
となればもう、土竜にはほぼ成す術もない。穴を掘るために爪は大きく鋭く進化しているものの、攻撃用には逆に大きすぎて力が分散してしまい、威力は知れている。あくまで『穴を掘る』ということに特化した爪だったのだ。
さりとて上手く当たれば幼体のオオカミ竜の体にはなかなか危険なものでもあり、だからこそ土竜も必死で抵抗する。インパラ竜と同じく簡単には諦めない。
自身の体に食らい付いたオオカミ竜の幼体の体に爪を立てようともがいたのだった。




