第12話 SSSのドラゴン狩り
「今日はSSSのコラボだーっ!」
蛇神ヤトのチャンネルを開くと、ヤト、いろは、シュヴァルツの3人が配信画面に映っているのが見えるだろう。
3人の背景には、悠々と空を飛ぶドラゴンのゲーム映像が流れている。
リスナーたちは『こんばんは~』『SSSすき』といったコメントを思い思いに打っていた。
「今回は『ドラゴンスレイヤー』というゲームでドラゴンを狩るぞ」
「ちなみに、シュヴァルツから武器借りるから、好きな武器選び放題だぞ!」
ゲームの世界でも最強を目指すシュヴァルツは、当然ながら『ドラゴンスレイヤー』もやり込んでいる。
彼(もしくは彼女)が貸し出す武器を見ると、ゲーム内のほぼ全ての武器が表示されていた。
『うお、すっげ……』『図鑑みたいになってるw』『なんかチートデータで強くてニューゲームみたいな気分だなw』
もちろん、シュヴァルツはチートなど使わなくても普通に強いわけだが。
彼(もしくは彼女)は「好きな武器を選ぶといい」とヤトといろはに促す。
「わぁ、なんかいっぱい武器があるのねぇ」
「アタシはこの大剣にするぜ! なんか強そうだから!」
「姐さんらしいチョイスだ。いろは殿を巻き込まないようにだけ気をつけてくれ」
「え、このゲーム、巻き込まれる可能性あるの……?」
『ドラゴンスレイヤー』は、プレイヤーの攻撃が他の仲間に当たる仕様になっている。
それが原因でリアルのケンカに発展することもたびたびあった。
シュヴァルツは「ヤト姐さんに必要以上に近寄らなければ大丈夫だ」とアドバイスする。
「そうねぇ……歌で敵の戦意喪失とかできたらいいのにね」
「笛で殴ることはできるが、歌となると難しいかもしれんな」
「え、笛で殴るの!? 笛、壊れたり音がおかしくなったりしない!?」
驚くいろはに『草』『まあ、最初に知ったらびっくりするよな』とリスナーのコメントが流れていった。
ひとまず、いろはは初心者ということで、比較的扱いやすい片手剣と盾をシュヴァルツに勧められる。
しかし、「いや、待て」とヤトに止められた。
「この双剣にしよう。カッコいいから」
「かっこよさ、必要?」
「配信の見栄えを重視するとカッコいいに越したことはねえだろ?」
ヤトの助言に従い、いろはの操作するキャラクターに双剣を装備させる。
「……たしかにカッコいい……」といろはも納得した。
シュヴァルツは既に武器を選択済みである。
「では、狩りに行くか」
「おー!」
いろはに合わせて、比較的難易度の低いフィールドに降り立った。
ヤト視点のゲーム画面のため、いろはが後ろで見切れている。
「よっしゃあ! ぶった切るぞぉ~!」
「私はヤトちゃんに巻き込まれないように、少し離れて爆弾でサポートするわね」
ヤトが雑魚敵の群れに突っ込み、大剣を振り回して全てを薙ぎ払っていった。
いろはは、ヤトの大剣が届かない後方から爆弾を投げつけ、ヤトの一撃に怯んだ敵を確実に仕留める。
「初めてにしては上手いな!」
「ありがとう。実は少しだけ予習と練習をしておいたの」
雑魚敵を薙ぎ倒しながら、どんどん奥地に向かっていく2人。
『……あれ? シュヴァルツどこ行った?』『ミニマップの端っこにいるw』『また別行動してるのか暗黒騎士』『暗黒騎士はたいてい別行動をするものだからな』
リスナーが少しざわつくが、ヤトといろはは気にすることなく奥に向かっていった。
最深部に辿り着くと、『Warning! ボスがいます』とゲーム画面に表示される。
その警告を無視して奥に行くと、巨大なドラゴンが2人を待ち構えていた。
「コイツかぁ~!? 今日の獲物は!」
「なんか強そう……」
「アタシに任せろぉ~!!」
ヤトが大剣を担ぎながらボスに向かっていく。
いろはも雑魚敵と同じように、爆弾を手に持って構えた。
ボスドラゴンは「グオオオォォーーー!!!」と空気がビリビリと震えるような雄叫びを上げる。
「オラァッ!」
ヤトの大剣による一閃。
攻撃が当たると、火花のようなエフェクトが飛んだ。
一瞬怯むドラゴンだが、見た目以上に素早い動きで長い尻尾を振り回す。
「ヤトちゃん、危ない!」
「うわーっ!」
ドラゴンの尻尾がヤトにまともに命中した。
薙ぎ払われたヤトがいろはに真っ直ぐに当たり、巻き添えで2人一緒に吹っ飛んでいく。
地面に倒れ込んだ2人に、ドラゴンがドスドスと重い足音を立てて迫ってきた。
「クソ、しくった!」
「あ、あわわ……」
今にも、ドラゴンが大きな口を開けて2人を牙で切り裂こうとする。
ここでゲームオーバーか、とリスナーが手に汗を握った――。
「――我はスナイパーもできる暗黒騎士」
ドラゴンのこめかみを、矢が貫く。
「ギアアアァァァーーーッ!!!」とドラゴンが叫び、動きを止めた。
シュヴァルツが、崖の上から巨大なボウガンを構えて撃ち抜いたのだ。
『騎士様ーーー!!!』リスナーが一斉に沸く。
「ヒュー! ナイスだぜブリキ!!」
「た、助かった……!」
ヤトがニヤリと笑い、いろはがホッと胸をなでおろした。
シュヴァルツは淡々と次の矢を装填する。
「痺れ矢だ。しばらくは自由に動けまい。この隙に叩き込め」
「うおりゃああーーッ!!!」
ヤトの大剣が、ドラゴンの巨大な尻尾を叩き切った。
シュヴァルツが次の指示を出す。
「このドラゴンは飛んで逃げると厄介だ。ヤト姐さんといろは殿で翼を狙って切り落としてくれ」
「わかったわ!」
「任せろぉ!」
ヤトの大剣、いろはの双剣で斬りかかり、翼をそれぞれ1枚ずつ切り落とした。
ドラゴンの痺れ薬が切れるタイミングで、シュヴァルツがもう一度、痺れ矢を撃ち込む。
「行け、いろは!」ヤトが背中を押した。
「うん!」
いろはが双剣を構えて宙を舞う。
その二振りの剣が、ドラゴンの喉元を切り裂いた。
とうとう、ドラゴンは力尽きたように倒れる。
討伐を終え、合流したシュヴァルツと3人でハイタッチした。
「では、討伐したドラゴンの素材を剥がすか」
3人でしゃがみ込み、ナイフでドラゴンの身体から素材を採取していく。
ドラゴンの肉や角、牙など、素材を手に入れることで装備や資金を整えることができるのだ。
「あら、なんか綺麗な鱗ねぇ」
いろはの手に入れた素材は、七色に輝く鱗。
「それ、レア素材だぞ。よかったな」
ヤトが自分のことのように、嬉しそうに笑った。
「そうなの? これ私が持ってていいのかしら」
「いやいや、最後の一撃はいろはだろ!」
「今回のMVPはいろは殿だ。受け取っておくといい」
「そう……? じゃあ、ありがたくもらっておくわね」
ヤトとシュヴァルツに「ありがとう、2人とも」と感謝しつつ、鱗を収納する。
リスナーからも、今回の配信は『SSSはバランスがいい』『切り込み隊長ヤト、サポートいろは、ベテラン狙撃手ブリキ』と好評であった。
「ブリキ呼び、定着したな」
シュヴァルツは怒るでもなく、事実を事実として受け止めるのみである。




