↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VTuber事務所『ミネルヴァ』の日常  作者: 永久保セツナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/12

第12話 SSSのドラゴン狩り

「今日はSSSのコラボだーっ!」


 蛇神ヤトのチャンネルを開くと、ヤト、いろは、シュヴァルツの3人が配信画面に映っているのが見えるだろう。

 3人の背景には、悠々と空を飛ぶドラゴンのゲーム映像が流れている。

 リスナーたちは『こんばんは~』『SSSすき』といったコメントを思い思いに打っていた。


「今回は『ドラゴンスレイヤー』というゲームでドラゴンを狩るぞ」


「ちなみに、シュヴァルツから武器借りるから、好きな武器選び放題だぞ!」


 ゲームの世界でも最強を目指すシュヴァルツは、当然ながら『ドラゴンスレイヤー』もやり込んでいる。

 彼(もしくは彼女)が貸し出す武器を見ると、ゲーム内のほぼ全ての武器が表示されていた。


『うお、すっげ……』『図鑑みたいになってるw』『なんかチートデータで強くてニューゲームみたいな気分だなw』


 もちろん、シュヴァルツはチートなど使わなくても普通に強いわけだが。

 彼(もしくは彼女)は「好きな武器を選ぶといい」とヤトといろはに促す。


「わぁ、なんかいっぱい武器があるのねぇ」


「アタシはこの大剣にするぜ! なんか強そうだから!」


「姐さんらしいチョイスだ。いろは殿を巻き込まないようにだけ気をつけてくれ」


「え、このゲーム、巻き込まれる可能性あるの……?」


『ドラゴンスレイヤー』は、プレイヤーの攻撃が他の仲間に当たる仕様になっている。

 それが原因でリアルのケンカに発展することもたびたびあった。

 シュヴァルツは「ヤト姐さんに必要以上に近寄らなければ大丈夫だ」とアドバイスする。


「そうねぇ……歌で敵の戦意喪失とかできたらいいのにね」


「笛で殴ることはできるが、歌となると難しいかもしれんな」


「え、笛で殴るの!? 笛、壊れたり音がおかしくなったりしない!?」


 驚くいろはに『草』『まあ、最初に知ったらびっくりするよな』とリスナーのコメントが流れていった。

 ひとまず、いろはは初心者ということで、比較的扱いやすい片手剣と盾をシュヴァルツに勧められる。

 しかし、「いや、待て」とヤトに止められた。


「この双剣にしよう。カッコいいから」


「かっこよさ、必要?」


「配信の見栄えを重視するとカッコいいに越したことはねえだろ?」


 ヤトの助言に従い、いろはの操作するキャラクターに双剣を装備させる。

「……たしかにカッコいい……」といろはも納得した。

 シュヴァルツは既に武器を選択済みである。


「では、狩りに行くか」


「おー!」


 いろはに合わせて、比較的難易度の低いフィールドに降り立った。

 ヤト視点のゲーム画面のため、いろはが後ろで見切れている。


「よっしゃあ! ぶった切るぞぉ~!」


「私はヤトちゃんに巻き込まれないように、少し離れて爆弾でサポートするわね」


 ヤトが雑魚敵の群れに突っ込み、大剣を振り回して全てを薙ぎ払っていった。

 いろはは、ヤトの大剣が届かない後方から爆弾を投げつけ、ヤトの一撃に怯んだ敵を確実に仕留める。


「初めてにしては上手いな!」


「ありがとう。実は少しだけ予習と練習をしておいたの」


 雑魚敵を薙ぎ倒しながら、どんどん奥地に向かっていく2人。


『……あれ? シュヴァルツどこ行った?』『ミニマップの端っこにいるw』『また別行動してるのか暗黒騎士』『暗黒騎士はたいてい別行動をするものだからな』


 リスナーが少しざわつくが、ヤトといろはは気にすることなく奥に向かっていった。

 最深部に辿り着くと、『Warning! ボスがいます』とゲーム画面に表示される。

 その警告を無視して奥に行くと、巨大なドラゴンが2人を待ち構えていた。


「コイツかぁ~!? 今日の獲物は!」


「なんか強そう……」


「アタシに任せろぉ~!!」


 ヤトが大剣を担ぎながらボスに向かっていく。

 いろはも雑魚敵と同じように、爆弾を手に持って構えた。

 ボスドラゴンは「グオオオォォーーー!!!」と空気がビリビリと震えるような雄叫びを上げる。


「オラァッ!」


 ヤトの大剣による一閃。

 攻撃が当たると、火花のようなエフェクトが飛んだ。

 一瞬怯むドラゴンだが、見た目以上に素早い動きで長い尻尾を振り回す。


「ヤトちゃん、危ない!」


「うわーっ!」


 ドラゴンの尻尾がヤトにまともに命中した。

 薙ぎ払われたヤトがいろはに真っ直ぐに当たり、巻き添えで2人一緒に吹っ飛んでいく。

 地面に倒れ込んだ2人に、ドラゴンがドスドスと重い足音を立てて迫ってきた。


「クソ、しくった!」


「あ、あわわ……」


 今にも、ドラゴンが大きな口を開けて2人を牙で切り裂こうとする。

 ここでゲームオーバーか、とリスナーが手に汗を握った――。


「――我はスナイパーもできる暗黒騎士」


 ドラゴンのこめかみを、矢が貫く。

「ギアアアァァァーーーッ!!!」とドラゴンが叫び、動きを止めた。

 シュヴァルツが、崖の上から巨大なボウガンを構えて撃ち抜いたのだ。


『騎士様ーーー!!!』リスナーが一斉に沸く。


「ヒュー! ナイスだぜブリキ!!」


「た、助かった……!」


 ヤトがニヤリと笑い、いろはがホッと胸をなでおろした。

 シュヴァルツは淡々と次の矢を装填する。


「痺れ矢だ。しばらくは自由に動けまい。この隙に叩き込め」


「うおりゃああーーッ!!!」


 ヤトの大剣が、ドラゴンの巨大な尻尾を叩き切った。

 シュヴァルツが次の指示を出す。


「このドラゴンは飛んで逃げると厄介だ。ヤト姐さんといろは殿で翼を狙って切り落としてくれ」


「わかったわ!」


「任せろぉ!」


 ヤトの大剣、いろはの双剣で斬りかかり、翼をそれぞれ1枚ずつ切り落とした。

 ドラゴンの痺れ薬が切れるタイミングで、シュヴァルツがもう一度、痺れ矢を撃ち込む。


「行け、いろは!」ヤトが背中を押した。


「うん!」


 いろはが双剣を構えて宙を舞う。

 その二振りの剣が、ドラゴンの喉元を切り裂いた。

 とうとう、ドラゴンは力尽きたように倒れる。

 討伐を終え、合流したシュヴァルツと3人でハイタッチした。


「では、討伐したドラゴンの素材を剥がすか」


 3人でしゃがみ込み、ナイフでドラゴンの身体から素材を採取していく。

 ドラゴンの肉や角、牙など、素材を手に入れることで装備や資金を整えることができるのだ。


「あら、なんか綺麗な鱗ねぇ」


 いろはの手に入れた素材は、七色に輝く鱗。


「それ、レア素材だぞ。よかったな」


 ヤトが自分のことのように、嬉しそうに笑った。


「そうなの? これ私が持ってていいのかしら」


「いやいや、最後の一撃はいろはだろ!」


「今回のMVPはいろは殿だ。受け取っておくといい」


「そう……? じゃあ、ありがたくもらっておくわね」


 ヤトとシュヴァルツに「ありがとう、2人とも」と感謝しつつ、鱗を収納する。

 リスナーからも、今回の配信は『SSSはバランスがいい』『切り込み隊長ヤト、サポートいろは、ベテラン狙撃手ブリキ』と好評であった。


「ブリキ呼び、定着したな」


 シュヴァルツは怒るでもなく、事実を事実として受け止めるのみである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。