第四章 4
虹色の霧が、ゆらゆらと揺れている。
視界は悪くない。だが――
どこか、感覚がズレる。
「チッ……やりにくいな」
ケイタは、ブレード状に変化した両腕を構えた。
目の前には――巨体。
鎧のような皮膚を持つ魔獣が、低く唸る。
「ライム!アイツの弱点は!?」
(うーん……ごめん、よくわからない……!)
「マジかよ……!」
次の瞬間――
〝グワァァッ!!〝
突進。
重い。
速い。
ケイタは横に跳ぶ。
ギリギリで回避。
風圧が頬を削る。
「くそっ……!」
その時――
「オタンコ!わらわがやっつけてもよいぞっ!」
ヒマリの声。
「ただし――褒美は忘れるでないゾッ!」
「ええ〜っ……」
ルカ、引く。
ケイタ、ちらっと見る。
苦笑い。
「いや!ヒマリ様は待機で頼む!」
「ミイア!何か手は!?」
斬撃をかわしながら叫ぶ。
ミイア、目を閉じる。
「うーん……」
一瞬。
「……うんっ、少し待って!」
体が――光る。
淡い、青い光。
空間が震える。
霧が反応する。
次の瞬間――
魔獣の体が、光に包まれた。
動きが――鈍る。
〝ウンギャァァッ!!!〝
苦鳴。
足が止まる。
「よしっ!」
ケイタ、踏み込む。
「一気にやるぞっ!」
(ケイタ!ブレードにマナを乗せるよ!)
「えっ?」
一瞬だけ目を見開く。
「お前、マナも使えんのか?」
(うんっ!なんか……出来る!)
「……そうか!」
迷い、消える。
「じゃあ――頼む!」
ブレードが、発光する。
白い光。
熱を帯びる。
「――どうりゃあああっ!!」
踏み込み。
全身のバネを使う。
斬撃――叩き込む。
〝グアッギャアアアッ!!!〝
肉が裂けない。
だが――
エネルギーが、乱れる。
「効いてる……!」
さらに一歩。
跳躍。
大上段。
振り下ろす――!
〝グギャアアアッ!!!〝
轟音。
魔獣の体が――
点滅。
赤、青、紫。
不安定に、崩れる。
そして――
霧のように。
バラけた。
消滅。
「はぁっ……!」
着地。
息を吐く。
「ふぃ〜……なんとか片付けたな」
(さすがに……強かったね)
ライムも、少し疲れ気味。
その横で――
「わらわがやれば、一瞬じゃったのにのう」
ヒマリ、不満げ。
ケイタ、肩をすくめる。
「まあまあ……また危ない時に頼むよ」
「それより――」
周囲を見る。
「ルカ?下の階層はどっちだ?」
ルカが、静かに目を細める。
「……こっち」
指を差す。
「エネルギーの流れがある」
霧の奥。
一点へ。
流れている。
ヒマリが、ぽつり。
「うむ……その方角じゃな」
一拍。
「下層への入り口があるのは」
空気が、わずかに重くなる。
ケイタは、ブレードを構え直した。
「……行くか」
縫合宮の、さらに奥へ――。




