第四十三話 夢幻
深夜0時を回っていた。
夜が深くなり、街の灯がほのかに揺れる頃、アルは自室で眠りにつこうとしていた。
「いつシリウスくるんだろうな」もう俺は眠くてしょうがない。
そして、眠りに落ちたのか奇妙な光景が差し込む。
空が無限に広がり、星々が旋回する異空間。風が顔を撫で、耳に囁くような低音が響く。
ここにいるだけでも不思議なのにもっと不可解な違和感があった。その違和感は隣にシリウスが立っていた事だった。
「……シリウス?」
俺は剣を握りしめ、シリウスに「ここまでありがとな」と告げ、歩き出していた。
そして、空の向こうから不穏な気配が近づく。
巨大な影、翼を広げた敵がゆらめきながらこちらに迫る。漆黒のシルエットに、赤い眼光が瞬いた。
「ロード様……!」
背後から声が響く。シリウスだ。白い礼服をシュッと整え星々の光を反射する剣先が鋭く光る。
アルの心はざわついた。
(これ……夢? 現実? なぜ体が自由に動かせない……)
敵は瞬く間に高度を変え、空中で翻るように襲いかかる。
シリウスは一歩も動かず、冷静に敵の動きを分析する。
「……くそ!力が体に追いついていない……」
シリウスの言葉は途切れる。冷静に分析をしていたようで、内心は焦っているようだった。
空気が裂ける音が響き、敵の翼をかすめた。
俺は魔力の閃光が手元で瞬き、剣の刃が光を帯びる。
構造だ。俺の技。
華麗な動きで敵を追い詰めるが、敵の力は想像を超えていた。
「くっ……!」俺は息を詰める。
見てるだけ?なのに体が疲れる。夢?だよなこれ?
また同じ声で呟く。「まだ……力が足りないのか」
敵の攻撃は連続で、追尾する闇の光、風圧、突進。見た事ない魔法だ。
シリウスも加勢し、一撃一撃で守りつつ、俺を庇い、さらに敵の弱点を探る。
「シリウス!来るな、お前は生き延びろ」
だが、突然の隙をつかれ、シリウスは宙に弾き飛ばされる。
「シリウスッ!!」俺は全力で追い、魔力と剣を合わせて援護するが、敵の力に押される。
(これ……本当にやばいじゃないか…..!)
俺は空中で意識が揺れる。周囲の景色は夜空と雲、光の奔流で混沌としている。
夢なのか現実なのか、わからなくなる中で、俺は囁いた。
「俺は大丈夫だ。またやり直せばいい。今度は十二神将と共に戦おうな」
「ロード様、逃げるべきです!他の世界だって幾つかあります!逃げましょう!」
「俺はやらなければならないんだ。それにお前だってどうする?」
「そ、それは……」
「この世界にお前や十二神将を置いてけぼりにするのは俺は嫌だ」
「私以外の十二神将は100年も見ていません……」
「なら俺はお前を置いていけない。そして何より、シリウスお前が危険だからな」
その瞬間、シリウスが立ち上がり、背後から強烈な光の刃を放つ。それは主に答えようとする覚悟だった。
敵はその光に弾かれ、宙に舞うが、なおも反撃をしてくる。
俺は剣を握りしめ、突進する。光と影が交錯し、空間が歪む。
だが、次の瞬間――目の前が白く染まり、アルは布団の中で目を覚ます。
「……はぁ……夢……」
汗まみれで息を切らし、隣の机に置いた剣に手をかける。
(でも……あの感覚、夢じゃなかった気もする……)
そして、椅子に座って今日見た夢?のようなものを日記にまとめていた。
そして数時間が経った頃。シリウスがやってきた。
「では、坊ちゃま。ここで貴方様の分身を作ります」
「分身……手荒い真似はやめろよな?」
シリウスは魔法陣を床に描き、静かに説明する。
「はい!まず貴方の身体と魂の情報を魔法陣に転写します。集中してください」
「本当に手荒い真似はやめろよ?で、転写……って、どうやるんだ?」
シリウスは静かに手を掲げ、指先から柔らかい光を放った。光はゆっくりとアルの身体を包み込み、体温と心拍に呼応する。
「目を閉じ、呼吸を整えて下さい」
アルは半信半疑で目を閉じ、深く息を吸った。
「……う、うわ、なんだこれ……!」
光が身体を抜け、意識の奥底まで届く感覚。アルの身体がまるで自分を外から見ているような奇妙な感覚に包まれた。
魔法陣の光が徐々に増し、床にアルのシルエットが浮かび上がる。
「これが……俺?」
シリウスは頷き、さらに光を集中させる。光の中でシルエットが膨らみ、ゆっくりと形を変えていく。
「ご覧ください、坊ちゃま。形状は完全に一致しています。まぁですが性格や記憶は最低限の補助のみですがね」
「記憶も?じゃあ今日あった夢幻の事覚えてたりするのかな?」
アルは半分笑いながらも、光景に目を見張る。光が収まり、そこにはアルと全く同じ姿をした分身が立っていた。
「……こ、これ俺……?」
コピーは首をかしげ、声を出す。
「……俺? 俺か?」
アルは驚き、手を叩く。
「おお! 本当に俺が二人になった!」
シリウスは静かに礼をし、魔法陣の残り火を消す。
「これで、坊ちゃまの学校生活は問題なく、私も同行できます」
「それで?俺のお前は今日あった夢?のような記憶覚えているか?」
「覚えてない、なんだそれ?」
「覚えてないのか、そうだ!その夢にシリウス、お前もいたぞ!」
「はい?」と首を傾げた。
「そこは、沢山の星が広がってて、まるで新しい世界みたいな感じだったなぁ。あんな怖いやつがいなければ行ってみたいな」
シリウスは笑いながら答える。
「フフフ、是非行ってみたいものですね。今度一緒に行きましょう」
翌朝、アルはまだ夢の余韻に囚われていた。
その時、母親がリビングで朝食の準備をしている声が聞こえる。
「……あれ、シリウス?!」
アルが目を見張ると、シリウスが丁寧に礼をして立っていた。今日の夜帰ったんじゃなかったのか?
「坊ちゃまのお母様、初めまして。私はシリウスと申します」
母は一歩後退して目を丸くする。
「……執事……? 本物なのね……」
「はい、昨日の学園からお仕えさせていただいております」
アルは顔を覆った。
シリウスは無言でお辞儀。
その姿は、言葉に出せないほど色んなものを兼ね備えていた。
アルは深く息を吐いた。
(……今日も安全だな……はは、は、はぁ)
庭の風が優しく吹き抜ける。アルは小さく笑い、アルシラとプロキオは苦笑いして、そしてシリウスは満面の笑みで共に食卓に着いた。
騒がしい一日の終わりに、確かに安心が訪れた瞬間だった。
どうも葛西です!
今回も伏線?かな込めておきました。
分かってしまうかもしれませんがそこはね?
ではまた次回は9月6日かな?に投稿すると思いますので是非お楽しみに〜!
そしてそして応援してくださる皆様本当に嬉しいです!
しっかり感謝を伝えるべきだと思いましたのでここでも言っとおきます。本当にありがとうございます!!




