第四十話 夕暮れに響く笑い声
アルの家は、村の中央から少し奥まった場所にあった。
木造の二階建てで、梁は太く、外壁は落ち着いた茶色に塗られている。どこか格式を感じさせる造りだが、玄関先には季節の花が飾られていて、柔らかな温もりも漂っていた。
「……すごいね、アルの家」
ノエルが目を丸くしながら、石畳を踏みしめる。
扉を開けると、木の香りと、煮込み料理の香ばしい匂いが一気に広がった。
エプロン姿の女性――アルシラ。彼女は穏やかな笑みを浮かべながら、一同を迎え入れた。
「ようこそいらっしゃい!どうぞ、くつろいでね」
「お邪魔します!」と声をそろえるカリナとノエルとルイス。
靴を脱ぎ、板の間に上がると、磨き込まれた床が足に心地よい。居間へ案内されると、そこには長い木の食卓が用意されていた。白いクロスの上に、大きな陶器の皿や木の器が並び、すでにパンと野菜スープの香りが漂っている。
そして、食卓の端には小さな籠。
その中で、柔らかな毛布に包まれた赤ん坊が、すやすやと眠っていた。
「……あ」
ノエルが小さく声をあげる。
「この子が……」
「レントだよ」アルが少し照れたように答える。
赤ん坊は小さな寝息を立てながら、ほんの一瞬、目を開いた。大きな黒い瞳が光を映し、まだ夢の中にいるようにまた閉じる。
ルイスは慌てて頭をかきながら言った。
「おぉ、すげえな。赤ちゃんって、ちっちゃ」
「当たり前でしょ」とノエルが笑う。
アルの母はそんな三人を見て、にっこりと頷いた。
「さ、みんな座って。ご飯が冷めてしまうわ」
木造の家のぬくもりと、赤ん坊の寝息。
静かな夕刻のひとときが、今まさに始まろうとしていた。
長い食卓の上には、湯気を立てる料理がずらりと並べられていた。
香ばしく焼かれた丸パン、豆と野菜がたっぷり入ったスープ、柔らかく煮込まれた鶏肉のシチュー。横には彩り豊かなサラダと、甘酸っぱい果物を煮詰めたコンポートまで置かれている。
「わあ……!」
カリナが思わず声を上げる。
「すごい、こんなに……!」
「いただきます!」とカリナが先走って声を出すと、皆が笑った。
じゃいただきまーす!と言いたいところだがなんで全員分の食事が用意されているんだ?カリナ達がくるって分かってたことだよな。今日決まったことだから母さんは知らないはずなのに。
その時ルイスが、パンをちぎってスープに浸し口に運んだ。
「うまっ……! なんだこれ、やさしい味!」
「ふふ、よかったわ」アルの母はにこやかに頷く。
カリナは静かに、でも手は止めずにずっともぐもぐと食べていた。
ノエルはコンポートを口にして、思わずほほえんだ。
「甘い……でもさっぱりしてる。アルのお母さん、料理上手なんだね」
「うちの自慢なんだよ」アルが少し誇らしげに言う。
そう皆が来ると予想できちゃうくらいにね……
そんな賑やかな食卓の横で、籠の中の赤ん坊・レントが「ふえっ」と小さな声をあげた。
皆が一斉にそちらを見ると、レントは目を半分だけ開けて、むにゃむにゃと口を動かしている。
「お腹すいたのかしら」
アルシラが席を立ち、籠をのぞきこむ。
するとレントは小さな手をぱたぱたと動かし、母の指をぎゅっと握った。
「かわいい!」
ノエルが思わず身を乗り出す。
ルイスも、普段は豪快な口調のくせに、声を潜めて言った。
「かわいいな……」
アルは少し照れながらも、どこか誇らしげに胸を張る。
「レントはね、まだ三か月なんだ。泣くとすぐ赤くなるんだよ」
案の定、赤ん坊は小さな顔をくしゃりとさせて「おぎゃあ」と泣き声を上げた。
ノエルとルイスは慌てふためき、アルの母は落ち着いた手つきであやし始める。
「大丈夫、大丈夫。お母さんがちゃんとミルクをあげるからね」
その柔らかな声に安心したのか、赤ん坊の泣き声はすぐにおさまり、再び静かな寝息へと変わっていった。
ほっと胸をなでおろす二人を見て、アルは笑いをこらえきれずに言った。
「二人とも、そんなに緊張しなくてもいいよ。赤ちゃんは泣くのがお仕事らしいから」まぁそれで母さんは忙しいんだろうけどな。
「いや、でも……びっくりした」ルイスが呟く。
「でもこういうの見ると、なんか……あったかい感じする」
食卓の上では、カリナが「おかわり!」と大きな声で言い、みんなで「はや!」と笑いあっていた。
窓の外はゆっくりとどんどん茜色に染まりはじめ、家の中の灯りに温かな影を落としていき、そしてゆっくりと夜を迎えようとしていた。
皆の笑い声に包まれていたアルの家も、次第に落ち着いた空気に変わっていく。
「そろそろ、帰らないと……」
ノエルが小さくつぶやいた。名残惜しそうにテーブルの縁を撫でながら、ちらりとレントの方を振り返る。
赤ん坊のレントは、母の腕の中で小さな手をぱたぱたと振っていた。何を言いたいのかは分からない。ただ、笑みと泣き顔のあいだを行き来するその仕草が、まるで「また来てね」と伝えているように思えた。
「今日はありがとうね!アル」とノエルが言う。
ノエルが深く頭を下げると、アルは笑った。
「気にしないで!むしろ楽しかったよ。笑い声が家に響くのは、なんとも心地いいね」
ルイスが「アル、また遊びに来てもいいか?」
俺は母さんを見た。そしたら笑顔で頷いてくれた。
「もちろんだよ。俺はいつでも歓迎する。」
玄関を出ると、夏の夕暮れが町を淡く包み込んでいた。木造の家の軒先には、風鈴がひとつ揺れていて、澄んだ音色が余韻を伸ばす。
「……なんか、あったかい家だったね」
ノエルがぽつりと呟く。
「そうだな。アルの家暖かったな。」
「まって!カリナは?」
「あれ、ほんとだ。いない……もう先に帰ったんじゃない?」
ーーその頃俺は家で今日は色々あったなーと振り返る。
母さんは窓から「あそこにいる男の子がアルとペアを組んでた子でしょ?」と俺に聞く。
「ん?そうだよ。あの課題というか、舞台のおかげで仲良くなれたんだ」
「ヘェ〜、仲良くね。それにあの子に加えて後二人女の子がいるなんてアルも隅におけないわね」とふふと笑った。
「母さん、冗談はやめてよー〜」と内心は汚い心でいっぱいでした。
俺はただ顔を赤くしていた。恥ずかしさのあまり、そっと部屋に戻った。
そして、だ。ベッドに入ろうとした時、そこにはカリナがいた。
ーー????ーー
俺は駆け出す。沈みゆく夕日を背に受けながら、俺の心に小さな決意を抱きながら飛び込もうと幸せに浸ろうとした瞬間。
普通にカリナが足で俺の腹を蹴った。
「なんでこっちにくるのよ」
さぁこの先どうなる??
どうも葛西です!
どうでしたでしょうか?
食事のシーンやレントとのシーンなど家の中でなんのアクションを起こすのか悩んだ部分もありました。
その結果一つはレントが泣く。
そして最後もう一つはカリナがアルの部屋にいて、びっくり展開。ここは次回の話を読んでみて下さい!
そんな色々と詰め込みました!
後重要になるかは先の展開次第ですが、アルのお母さん。アルシラがカリナやルイスなど来ることが分かっていましたね!
なんで分かっていたのかもこれから先描いていこうと思います。
この先の展開を気になった方や今回の話だけをチラッとみた人など是非過去のお話を読んでみて下さい!
そして先の展開が気になった視聴者様これから先のお話を読んでくれると作者としてとても嬉しいです!




