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第三十九話 親友との放課後

夕暮れの道を、三人の足音が重なる。

「……にしても、ちょっと緊張するなぁ」

ルイスが首の後ろをかきながら笑った。

「アルの家ってさ、なんか敷居が高そうじゃん?」

「そうかも?」

分からない、父さんは中級貴族だったらしいが、今の俺の家が普通なのかも分からないんだよな。でも周りの家と比べたら少し大きいかもしれない。

「私は、楽しみだな。アルが普段どんな暮らしをしてるのか、ちょっと覗けるって思うとね」とノエルが言う。

「そ、そうね!」と照れくさそうにカリナも頷く。

俺は三人の前を歩きながら、沈んでいく夕日の色を見上げていた。橙に染まる空は、どこか懐かしい。あの色を見ると、どうしても地球にいた頃の過去を思い出してしまう。けれど今は――。


「……お前ら、少し静かに歩けよ。近所に迷惑かけるわけには行かないからな」

そう口にすると、ノエルとカリナは目を合わせて「はいはい」と笑う。

「でもさ、レン――じゃなくてアルの子供……レントどんな子なんだろうね」

「赤ちゃんだから、可愛いに決まってるじゃない。」

カリナがどこか憧れ混じりに呟く。

ルイスは腕を組んで大げさにうなった。

「俺、赤ちゃんを触ったことないんだよな。泣かれたらどうしよう。」

「おいおい、触っていいなんて誰が言ったんだ?窓から見るだけだ。分かったか?」んー?と俺は少しからかうつもりで、ルイスを睨みつける。

「ごめんごめん、忘れてたわけじゃないさ、ただこの流れならいけるかも?って思ってさ」ほんとごめんと両手に手を合わせて謝っていた。

ルイスの小さな冗談に、俺も思わず口元を緩める。



 しばらく歩いたのち、視界の先に一軒の家が見えてきた。

 木造の造りは村の家々とそう変わらないはずなのに、どこか凛とした佇まいを感じさせる。柱は太く、玄関の木戸は丁寧に磨かれており、周囲の花壇には手入れの行き届いた花が咲き誇っていた。

「……立派な家だな」

 思わず皆が声を漏らす。

 ルイスが口をすぼめて笛でも吹くように「ひゅー」と囁いた。

「こりゃまた、大きい家だな。アル、お前んち……金持ちじゃね?」

 からかう調子に、アルの肩がぴくりと揺れる。

「べ、別に……普通だよ。昔からの家?ってだけだと思う」あんま、金持ちアピールとかしたくない。金持ちアピールなんて嫌なやつになろうとしにいくようなもんだ。てかやっぱりまぁまぁ良い家だったんだな。でもこの家、日本の普通の一軒家と変わらないんだけどな。

 ノエルがふふっと笑う。

「普通じゃないよ、アル。ちゃんと大事にされてるの、すぐ分かる。お花も綺麗だし……きっと、この家にも思い出がたくさんあるんだね」

 アルは照れ隠しのように視線を逸らした。

「……まぁ、そうかもな」

 俺はその背中を見つめながら、心の中で小さく息を吸う。


 ――家。守るべき日常。俺の帰る場所。そして家族が住む場所。

俺が守るんだ。俺のせいで今の家族を失うことは何があっても許されない。


「ねぇアル、もしかしてあの子?」と指を差す。

 窓辺。薄いカーテンの隙間から、小さな影がこちらを覗いていた。

 ……レントだ。

 まだ幼さの残る輪郭、大きな瞳。窓枠に手をかけて身を乗り出すように、好奇心いっぱいに外を眺めている。

 その姿は、陽の光に透けるように輝いて見えた。

「あぁ、そうだよ。驚かせないでな」

「おー! あれがレントくんか!」

 ルイスが目を輝かせる。

「可愛いな。なあ、手振ってやれよアル!」

「い、いや……俺は別に帰って会えるし」

「あ、そうだった。ずるいな」

「ずるいわね」

「いいな」とそれぞれが羨ましそうに声に出した。

 アルは言葉を濁しつつも、視線を逸らせないでいた。


 ノエルが小さく笑いながら窓に手を振った。

「レントくん、気づいたみたい。……わあ、笑ってる!」

 小さな手が、窓越しにぶんぶんと振られた。

 その無邪気さに、俺の胸が熱くなる。

「……いい場所だな、アル」

 アルはわずかに目を伏せ、そして小さく頷いた。

「……うん。俺にとっての大切な場所」


気づけば、アルの母親が戸口から姿を現した。落ち着いた笑みを浮かべながら、こちらに歩み寄ってくる。

「まあ……アル、おかえり。今日はお友達も一緒なのね」

 その声音には、家そのもののような温もりがあった。

 アルは照れたように後頭部を掻く。

「……ただの寄り道だよ。みんな、俺の……友達」

 母親はにっこりと頷き、俺たちに向かって軽く会釈をした。

「ありがとう。アルと一緒にいてくれて」

ルイスが「い、いゃ〜。俺もアルと一緒にいて楽しいので、そして何より親友ですからね」

そうね、うんうんとカリナとノエルも続く。

 何でもない一言なのに、胸の奥に深く響く。

親友と言ってくれた、俺は友達と言ったのに。それだけで嬉しかった。


 ーーああ俺が守りたいものは、きっとこういう何気ない言葉や時間なんだ。

「もし良かったらご飯でも食べていかない?ちょうどご飯も炊けてるから」

「え、いいの!」

「ほんとに食べさせてもらえるの?」

「やっぱり、持つべきものは友だな!」

三人の明るさに、俺は嬉しかった。


嬉しい。ただそれだけしか出てこないがその一言はとても俺にとって意味があって、俺の人間性も少し変わっていた。それは俺からすれば良い方でもあり、他のものからすればそれはなってほしくない方へと。


一陣の風が、頬をかすめた。

遠くで子供の笑い声が聞こえる。

その声は、不思議と俺の心に温かいものを落としていった。


どうも葛西です!

今回は暖かみがあるような話になったかと思います。

自分で書いていてなんですが、アルの友達。いや親友たちはみんな良い人ですよね笑


こんな良い人と巡り会えるのは中々ないと思います。皆さんも、もしそんな人と出逢えたらとってもレアという言い方はあれですけど、大切にね。

もし辛いことがあっても、どうとでもなる!頑張れ!


脱線しちゃいましたね笑。

まだまだこの作品を書いていく所存でございます。

暖かみのある作品。そして感情的リアルに描いていくのを目標に頑張っていきます!

応援よろしくお願いします!







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