第四怪 シャイニングボーイと除霊師(その1)
除霊師。
取り憑かれた人から霊的な存在または悪霊を祓うのを得意とする幽霊関連に強いエキスパート。ざっくり言えば日本版ゴーストバスターズみたいなものだ。彼らの仕事は体調不良や不運に見舞われ心を病んだ人の相談を受けその原因を探すことだ。
彼らみたいな霊を除霊してくれる人は少なく大半は悪質な霊感商法で人を騙す者が多く実際に除霊してくれる本物のヒーローに出くわすのは極めて低いのだ。
誰しもが全てにおいて良い人とは限らないこの世知辛いこの世の中で除霊師や霊媒師などいった霊術に関する者が名乗ったところで誰も信じてはもらえないという事はけっこうある。霊感商法が主流となるこの世の中で自分たちが詐欺師ではないという事を知ってもらう為に彼らは本物の霊能者たちが集う組織を創ったのだ。
今回のお話は、瑠璃たちが出会うのはかつてのサエグサの知り合いで風変わりで個性強めで奇抜な悪霊退治をする除霊師が活躍(?)するそんなお話である。
薄暗い外から雨音が聞こえてくる今日の昼時。
最後の梅雨が来てもうすぐ6月から新しい月に切り替わろうとしていた。
激しくも強くもなく落ち着いた雨で蒸し暑くもあった。
手土産として実家の団子屋から草団子を差し入れて業務部屋の机で食に狩られたサエグサさんはいい勢いでパクパクと食べていた。
「で。今度は何用で来たんだ?」
咀嚼している口で用件を伝えているみたいに俺からこの現世交番所に来た理由を訊き出そうとしていた。
「サエグサさんってお祓いできたりしますか?」
その質問にサエグサさんは即答した。
「いや。できない」
安易な答え方だが俺は納得した。
「もしかして。霊に取り憑かれたのか?そうは見えないけどな」
「いや。俺じゃなくて」
「ん?じゃあ。スズメさんか?また霊に憑かれて病んでいるのか?」
「違います。スズメさんは別に取り憑かれていません」
「じゃあ。なんだ?」
自分が霊に取り憑かれたのもスズメさんでもない別の理由がある。
それは俺が霊感に目覚め霊を意識するようになってからのことだ。
俺は一年前の冬頃から地域に住む男子中学生たちが参加しているバスケクラブ活動のコーチをやっている。
毎週水曜日の午後5時から午後7時まで自治会館で行っている。
なぜ俺がコーチになったのか。それは昨年の秋、学校の部活動にて行われたバスケ試合で俺がバスケコートで必死に相手チームと攻防戦を繰り広げていた事で試合を観戦しに来ていた自治体の人たちが俺に目をつけ冬から新たな高校生コーチとして任命されたのだ。
水曜日はバスケ部がお休みなので次の試合がてらに自治会館へ行って一人で練習しその後は中学生の子たちの指導をしている。
中学生の子たちはなかなか可愛いもんで弟が中学生になったらあんな風になるんだろうなと想像することもある。
彼らは俺の指導はとてもいいと口を揃えて言うもんだから本当に可愛い奴らめ!と小学生の弟と同等で褒めたくなる。
みんなは地域大会に向けての練習で一生懸命頑張っているから俺も秋からの試合に向けて部活練習頑張ろうと気合が入ってくるのだ。
そしてここ最近、自治会館で奇妙な事が起きたりしている。
地域バスケチームの一人の男子から聞いた話ではトイレの鏡に人影らしいものを見たとかもう一人は片付けの時、倉庫にしまってある物が勝手に落ちたり動いたりしたとか。
最初は気のせいだとかしか言えなかった。それは俺がまだ霊がはっきりと見えていなかったからだ。でも、サエグサさんと出会い霊感に目覚めてからは体育館内、いや自治会館内にやたら霊がウヨウヨしているのを見かけるようになった。
前にサエグサさんから教えてもらったとおりに霊が見えても気づかない振りをして普段通りの振る舞いをしていたが、あちらこちらに霊が自由に出入りしたりしているのでさすがに気になっていた。
自治会館は子供だけじゃなく大人も使っているので物音がしたりどこか声が聞こえた気がしたり何だか知らないけど妙な気配を感じたりと霊による現象に影響を受けている人が時々いたりした。
会館の管理人さんもこのままじゃ気持ち悪いからお祓いでもしてもらおうかと昨日、実家の団子屋でぼやいていた。
「お祓いってせいぜいいくらかかるんだろうね?」
管理人さんは今時珍しいガラケーを片手に持ちながら爺ちゃんに訊いていた。
「さあな。お祓いなんてした事がないから詳しくは」
管理人さんと爺ちゃんは昔からの友達でよく飲んだりしている。
俺はお客さんが使ったテーブルを布巾で拭きながら二人の会話を横から盗み聞きしていた。
「あまり高額だと困るしな~。ていうか、できれば出費がかからない手頃な金額で収まる所がいいんだが・・・。こういのって事務所に連絡した方がいいのかね?」
「本物のお祓いは高いらしいからな。自治会のみんなにお祓いの資金をかき集めてもらうのはどうだ?」
「んなこと言ったって。『幽霊がいて困っていてお祓いするのにお金が必要なんです。なので、皆さん。お祓いの資金を集める為にご協力ください』なんて言っても誰も信じちゃくれなさそうだし。はてさて困った」
「霊媒師って本物はいるそうだが大体は霊感商法で詐欺だったという事があるからな。テレビで観たんだけどよ。最近なんか──」
霊が見えない人にとっては〝ただの気のせい〟か〝目の錯覚だ〟とか言われるけど、実際に見える人が今彼らの近くにいる。
しかし、霊が見えるなんて話したら何かの冗談だと聞き入れてくれなさそうだし逆に変な奴だと思われるかもしれないから簡単には他人に自分が霊感を持っていて幽霊が見えるなんて話せない。変な目で見られるのだけはさすがに俺も絶対に嫌。
だが、このまま見て見ぬふりをして過ごしても俺が気になってしまう。中学生の子たちが練習試合をしていた時も体育館内に霊たちが彼らを見ていて喋っていたし試合中にコートに入ってふざけあったりしていたし鬱陶しくて仕方がなかった。
俺は昨日、管理人さんと爺ちゃんがお祓いの件について話を聞いたのでもしかしたらサエグサさんならお祓いができる本物の霊媒師の知り合いがいるかもしれないと思い今日、現世交番所に来たのだ。




