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※クリス視点
―――10階層の………魔王ジークがいうところの中ボス。僕達は守護者と呼んでいる存在は僕とミラが討伐することとなった。
今は守護者が出現する大広間の目の前にミラと並んで立っている。
「2人とも、頑張れー!」
「夕飯までには帰ってくるんだぞ~」
「それは応援じゃなくない?」
セラが応援してくれている。彼女の前で無様な姿を見せるわけにはいかない。あの魔王の訓練を乗り越えた僕は確かに強くなった。前回挑んだ時は5人でそれなりに時間をかけたが、今回は短期決着を目指そう。
「クリス、勝手なことはしないでよ?」
「大丈夫。流石に僕も連携を学んだから。
前回と同じ守護者だろうから、僕が前に出てひきつける」
心配性のミラを宥めて方針を固める。守護者は2本の大きな角を生やした大男のような魔物。その手に持つ大斧で押してくるパワータイプだが、それ以外に気をつける点は特にない。
「じゃあ、行くよ」
「うん」
僕達が大広間に足を踏み入れると魔法陣が展開され、守護者が出現。雄たけびと共に大斧を片手に突進してくる。
「まずは足を止めるわ!」
ミラは杖を構えると詠唱することなく魔法を発動。無数の火の玉が守護者に向けて放たれる。
『グッ………オオオオオ!!』
ミラの魔法の出力は前回より遥かに上がっており、守護者は防御態勢を取ってそれを凌ぎ、足を止めた。無詠唱なのに前回より火力が出ているなんて、凄いじゃないか。
「前に出る!」
すかさず前に出て気を引き、こちらを向いたらすぐに側面に回りこむ。守護者がこちらに気を取られている間にミラは次の魔法を準備。僕は守護者の攻撃を掻い潜りつつ、剣に魔力を込めて足を斬りつける。
『グォォ!!』
手ごたえはあった。傷は深くはないもののその場に踏ん張ることができずに態勢を崩す。その隙にミラが魔法の準備を終えた。
「下がって!聖なる光、我が敵を撃て!浄化の極光!」
ミラが準備と詠唱によって強化した光魔法が守護者に降り注ぐ。浄化の極光は光魔法の中でもランクBという上位に位置する強力な魔法だ(因みにランクはE~S。規格外のものはEXだ)。
これを喰らった守護者は悲鳴をあげながらその身を貫かれる。これで終わりだろう。
『グァァァァ!!』
ズタズタになった身体、最早力尽きたといった体でその場に倒れ込む守護者。
「よし、勝った―――」
『グォォォォォォォ!!!』
「なっ!?」
守護者は最後の悪あがきと言わんばかりに立ち上がり―――ミラへ迫る。慌てて守護者を追うが止められない。間に合わない。不味い、ミラが―――
「やれやれ」
ため息と共に巨大な黒剣が飛来。そのまま守護者を貫き、その活動を完全に停止させた。
「いいとこいってたが最後が惜しかったな」
そういっていつの間にか大広間に現れた魔王ジークは黒い影のようなもので守護者を包み、消し去った。
「ふむ………なるほどねぇ。
じゃ、突破できたし次にいくか」
………彼の助けがなくても勝つことはできた。それは間違いない。しかし、彼の助けがなれけばミラが負傷していた。最悪………いや、とにかく今のは不味かった。油断、していた。油断するなと言われたばかりなのに。
「あの、ジーク………ごめんなさい」
「気にするな。上手くやっていたよ、お前は」
申し訳なさそうに謝罪するミラの頭を撫でる魔王ジーク。………ミラは何処か嬉しそうで、胸の内で黒いものがくすぶっているのを感じた。




